イベントレポート
電子ペーパー採用の両面表示スマートフォン「YotaPhone」登場
(2013/2/28 12:03)
ロシアに拠点を置くYota Devicesは、Androidスマートフォンの背面部分に電子ペーパー(E Ink)を配置した個性的なスマートフォン「YotaPhone」をMobile World Congress 2013で公開した。2013年後半の出荷を目指す。販売価格等は未発表。
スマートフォンの背面にあたるバックパネル部分に160dpiの電子ペーパーを配置。必要に応じて表示を切り替える。表示するコンテンツによっては、液晶パネルに表示するよりもバッテリへの負担が軽くなったり、さまざまなメモやToDoを常時表示にしておけるなど、一見はいわゆる「ネタ系」と呼ばれるデバイスと考えがちだが、実際に端末と操作体系を見て説明を受けると、なるほどとうなずける点は驚くほど多い。
インターフェイスも非常によく考えられていて、基本的には液晶パネルで表示したイメージをそのまま背面の電子ペーパーへと送り込む。そのためいわゆる正面にあたる液晶パネル側と背面にあたる電子ペーパー側は同じサイズの4.3型を搭載している(ただし、それぞれのパネルの特性からdpiは異なる)。
液晶パネルの表示を電子ペーパー側に送り込むジェスチャーは、2本指のマルチタッチで上部から下部へとスワイプする。この操作については動画をみてもらった方がわかりやすい。デモではGoogel Mapsで表示させた地図を、そのまま背面へと送り込んでいる。
電子ペーパーもただ表示するだけではなく、電子ペーパー面での操作が可能だ。例えば電子書籍など複数ページにまたがるコンテンツではページめくりができる。これは端末の下部にあたる額縁部分にタッチ操作が可能な領域を用意することで実現している。
背面への表示が可能なのは、着信リスト、SMS、電子メール、気象状況、位置情報、時間など。これらは液晶パネル側を操作することなく自動更新される。そのほか、常時表示にさせておけるのは、電子書籍、カレンダー、ToDoリスト、SNSの通知、RSSフィードなど。加えて電子ペーパー面に写真や画像を表示させることで、スマートフォンの個性化にも繋がると紹介している。
Yota Deviceの資料によれば、同社は2009年の創業以来、約300万台のモデムやWi-Fiルーターを販売。そのうち100万台は2012年単年の販売台数で、同年のLTEに対応する機器としては世界シェアの6%を占めているとのこと。そして2013年後半に新たな製品ジャンルとして投入するのが、スマートフォン「YotaPhone」ということになる。
YotaPhoneの製品化にあたってのパーツサプライヤーには、プロセッサにQualcomm、電子ペーパーにはE Ink、液晶パネルにはジャパンディスプレイ、さらにGorilla GlassのCornig、EPSONセミコンダクターによるチップなど世界の有力企業が並んでいる。
ブースにはやはり2013年後半に発売を予定しているというLTE対応のWi-Fiルーター「Krypton」のモックアップも展示されていた。YotaPhoneと同様にこちらも表示部分に電子ペーパーを採用しており、ステータス表示など、液晶やELを使った場合よりもバッテリー効率が良いと説明されている。販売先は欧州を中心としたキャリアとなるが、ブーススタッフの説明によれば、日本ではソフトバンクモバイルが興味を示しているとのこと。通信方式などはキャリアの要求にあわせて対応が可能だとしている。
YotaPhoneのスペックだが、プロセッサはQualcommのSnapdragon MSM8960 1.5GHz(デュアルコア)。OSは現時点で最新のAndroid OS、Jelly Beanこと4.2を採用する。正面にあたる液晶パネルは4.3型で1,280×720ドット(340ppi相当)の解像度。背面の電子ペーパーも4.3型で、こちらは160dpiとのこと。ストレージは32GBあるいは64GB。RAM領域は2GB。背面カメラは1,200万画素、前面もHD対応のカメラが搭載されている。前述のとおり液晶パネル面のほか、電子ペーパー面でジェスチャー操作をするためのタッチ操作可能な領域が、額縁部分に配置されている。
本体サイズは幅が67mm、高さが131mm。厚みは上下で違いがあり、最薄部が7.3mm、最厚部が9.9mm。重量は140g。バッテリ容量は2,100mAh。通信方式は同社のセールスポイントでもあるLTE(Bands 3,7,20 MIMO)に加え、もちろん2G/3G/HSPA+など、キャリアに応じて対応可能としている。スペック欄に詳細はないものの、Wi-Fi、Bluetooth、NFCも搭載するという。
外装にも工夫があり、SIMスロット部分が電源キーを兼ねるほか、同期および充電用のコネクタ部分は磁力による接続となる模様だ。両面スマートフォンというユニークな特徴が最初に目をひくものの、スマートフォンとしてもかなりのハイスペックモデルと考えられる製品である。
日本市場への参入は未定としているものの、前述したようにLTE対応Wi-Fiルーターの実績などから興味を示しているキャリアもありそうな気配だ。今後の行方を見守りたい。