イベントレポート

両面スマートフォンの「YotaPhone」再び

~Yota Devicesが次世代製品を発表

Next Generation YotaPhone
会場:スペイン バルセロナ Fira Gran Via

会期:2月25日~28日(現地時間)

 2013年に開催されたMobile World Congressでちょっとした話題を振りまいた両面スマートフォンの「YotaPhone」が、再び新製品を携えてMobile World Congressにやってきた。次世代製品は2014年第4四半期の出荷を目指す。

 YotaPhoneは、背面パネルに電子ペーパーを採用することで、必要に応じてページ表示を切り替える。表示するコンテンツによっては、液晶パネルに表示するよりもバッテリへの負担が軽くなったり、電子ペーパーの特性を活かしてさまざまなメモやToDoを常時表示にしておけるなど、合理的なアイディアに基づいた製品。第1報は2013年のMWCレポートで紹介した

 これで製品化に結びつかなかったのならば、ペーパーウェアという皮肉の効いたオチが待っていたのだが、上記のレポートで紹介したとおり同社には企業としての実績も開発力もあって、2013年12月4日には無事にYotaPhoneのローンチへとこぎつけた。なんと、筆者のもとにもモスクワでのローンチイベントとプレスカンファレンスの案内が来たほど。残念ながら実際に足を運ぶことは叶わなかったが、イベントの様子はインターネットでストリーミング中継が行なわれた。製品は2014年の第1四半期末までに出荷地域を20まで拡大し、ロシアをはじめとする欧州各地域、中東などの市場へと順次出荷される。

YotaPhone。ぱっと見た目には一般的なスマートフォンだが……
背面パネルには電子ペーパーが搭載されている
YotaDevicesのブースには出荷のはじまったYotaPhoneのパッケージが展示

 そのYota Devicesが、次世代YotaPhoneをMobile World Congerss 2014の同社ブースで公開した。製品の正式名称は公開されておらず、Next Generation YotaPhone(次世代YotaPhone)として紹介されている。もちろん製品コンセプトである背面パネルに電子ペーパーを搭載するという点はまったく変わらない。パネルサイズはスマートフォンのトレンドにあわせて大きくなったほか、ニーズに合わせた高機能化が施されている。最大の変更点は、現行モデルでは額縁部分に限定されていた背面のタッチ操作がスクリーン全体で行なえるようになったことだろう。これにより操作はより直感的になった。

 スペック面では、前面が4.3型のIPS液晶から5型のAMOLEDに拡大されフルHD(1,920×1,080ドット)化される。背面の電子ペーパーも、4.3型から4.7型に変わる。電子パーパーの解像度は640×360ドットから960×540ドットとなり高精細化されている。

 ネットワーク機能は対応バンドが増えるほか、LTE Cat4に対応。無線LAN機能にもIEEE 802.11acが加わった。NFCや非接触充電といった技術トレンドにも対応。バッテリ容量も1,800mAhから2,550mAhへと大容量化した。利用するSIMサイズはnano SIM。

Next Generation(次世代)YotaPhone。フロントスクリーンは5型のAMOLEDになった。OSはAndroid 4.4(KitKat)を採用
現行製品は下の額縁部分にタッチ操作を限定していたのに対して、次世代では電子ペーパー側でも全画面でのタッチ操作が可能に
通知機能をオンにしておけば、電子書籍を読んでいる電子ペーパー面でも通知が行なわれる
数種類の設定の中から選べる壁紙。株式や為替レートを自動更新するものもある。この壁紙アプリのほかにも専用アプリが数多く用意されており、さまざまな利用シーンが提案されている
側面には、電源スイッチとボリューム。本体厚は現行モデルよりも薄くなる見通し
底面にはスピーカーとマイク、Micro USBのインターフェイス

 Yota Deviceによる現行モデルと次世代製品のスペックの違いは下記のとおり。

OS
Android Jelly Bean 4.2.2Android 4.4 KitKat
CPU
Dual Core 1.7 GHz KraitQualcomm Snapdragon 800 8974 2.2Ghz Quad Core
本体サイズ
133.6 x 67 x 9.99mm144 x 69.5mm x 8.9mm
本体重量
146 g140g (目標値)
本体色
黒、白黒、白
カメラ機能
背面: 1,300万画素 AF/LEDフラッシュ/前面:100万画素背面: 800万画素AF/LEDフラッシュ: 前面: 200万画素
前画面
4.3型IPS LCD 1,280×720ドット/342ppi/タッチ5型 AMOLED 1,920×1,080ドット/442 ppi/タッチ
電子ペーパー
4.3型 EPD 640×360ドット/16グレースケール/170 ppi タッチ操作領域限定4.7 EPD 960×540ドット/16グレースケール/235 ppi 全画面タッチ対応
モバイルネットワーク
GSM 900/1,800/1,900 MHz HSDPA 900/1,800MHz MIMO/2,100MHz MIMO/Dual Carrier HSDPA LTE CAT3 3/7/20 MIMOGSM 850/900/1,800/1,900MHzHSDPA 850/900/1,800MHz MIMO/1,900/2,100MHz MIMO/Dual Carrier HSDPA; LTE CAT4 3MIMO/7MIMO/20MIMO
メモリ、ストレージ
2GBメモリ/32GB eMMC2GBメモリ/32GB eMMC
無線LAN、そのほかの接続
IEEE 802.11 a/b/g/n/Bluetooth 4.0/USB 2.0 GPS w/A-GPS+GlonassIEEE 802.11 a/b/g/n/ac/Bluetooth 4.0/USB 2.0 GPS w/A-GPS Glonass
NFC
ビデオ
1080p 30fps: H.263/H.264 AVC/MPEG-4/WebM1080p 30fps: H.263/H.264 AVC/MPEG-4/WebM
バッテリ容量
1,800mAh2,550mAh/ワイヤレス充電対応

 ブースには、あくまで試作品としながらも稼働モデルが10台弱用意され、スタッフの手によって常時デモンストレーションが行なわれていた。2013年もそうだったが、こうして稼働モデルが実際に見られるのがいいところだ。搭載されているOSはAndroid 4.4(KitKat)。これに、いくつかの専用アプリケーションをインストールして背面パネルの設定や書き換えなどをスムーズに行なえるようにしている。

YotaDeviceのブース。何度か足を運んだが、常に盛況だったブースの1つ

 形状は現行モデルよりも丸身が強くなったせいか、画面大型化の数値ほどにはサイズの大型感はない。もちろんスマートフォン全体の大型化という流れがあるので、違和感が少ないということもある。電子ペーパーの使い途はいろいろあるが、電子書籍リーダーとしての側面を考えればこの程度の大型化はむしろ歓迎する流れと考える。

 現行モデルの場合は、利用するモバイルネットワークなど機能的な面からも国内での展開は明らかに望みがなかった。もちろん、思い切ったこのアイディアを2013年時点でそのまま信じることも難しかっただろう。しかし、現行モデルが実際に発売されたことでペーパーウェアとはならない実績を積んだ。次に期待するのはやはり国内モデルの登場ということになるだろう。

LTEルーターの「Ruby」。ステータスの表示に電子ペーパーを採用する。Wi-Fiのホットスポット機能は、パスワード保護のあるPrivateモードと、友人などにも開放するパスワードのない接続をスイッチ操作で変更可能。最大10台のクライアントから利用可能。USB 2.0のコネクタをヒンジ部分に搭載しており、PCなどにはデータスティックとして直接接続できる。SIMスロットはこのヒンジ部分の奥にある

(矢作 晃)