イベントレポート

【Digital Experience/ShowStoppers編】

~“Gorilla Glass”でおなじみのCorningからThunderbolt/USB 3.0対応の光ケーブルが登場

開催日:2012年1月7日、8日(現地時間)

会場:MGM Grand Hotel、Wynn Hotel

 International CESの開催にあわせて、コンベンションセンター近隣のホテルでは数々の関連イベントが併催されている。代表的なものが「Digital Experience」と「ShowStoppers」だ。前者はCESの開幕前夜、後者はCES開幕日にそれぞれ開催されるのが恒例で、今回も7日、8日にそれぞれ盛大に催された。

 これらのイベントの特徴は、CESの一般会期とは異なり来場者を世界中から訪れている報道関係者に絞っている点が挙げられる。CES会場における一般向けの展示では、バイヤーやエンドユーザーがブースに訪れるため、商談スペースを設置したり、エンドユーザーにも分かりやすい演出が必要となる。しかし、こうした併催イベントは出展社側がメディア向けに紹介したい製品を絞り込んで、マンツーマンで積極的なアピールをする場として機能している。中にはCESには出展せず、これら併催イベントだけに出展する企業や、スタートアップ企業も多い。本稿ではこの2つのイベントで紹介されていた新製品をいくつか紹介する。

Thunderbolt、USB 3.0対応の光ファイバーケーブルが登場

 スマートフォン、タブレットを中心に採用されている強化ガラスと言えば「Gorilla Glass」がすっかり製品の代名詞となった。一般的には、アルミノケイ酸ガラスと呼ばれる特殊ガラスの1つで、高強度/高剛性が特徴。同様の強化ガラスを開発、提供しているメーカーはほかにもあるが、知名度ではGorilla Glassが飛び抜けている。

 そのGorilla Glassを提供するCorningは、International CESにあわせて第3世代にあたる「Corning Gorilla Glass 3」を発表した。2013年半ばから、このGorilla Glass 3を採用したスマートフォンなどのデバイスが順次登場する見通しとなっている。

すっかりお馴染みのThunderboltのデモ光景だが、接続には30m、50mの光ケーブルが用いられている

 Gorilla Glass 3は素材としてメーカー向けに部材として提供される製品だが、他方でCorning社はコンシューマー向けに光ファイバーケーブルも発表した。「Corning Optical Cables」として紹介されたケーブルは、ThunderboltとUSB 3.0にそれぞれ対応する二種類の製品。Thunderbolt対応の光ファイバーケーブルとしては、2012年末から出荷を開始している住友電工の製品に次ぐ2番目の製品となる。

 光ケーブル化する最大のメリットは機器間の総延長が伸ばせること。銅配線では3mとされているが、今回発表されたCorning社の製品で最長のThunderboltケーブルは100mが用意されている。銅配線とは異なりホストPC側から電力を供給することはできないので、セルフパワーで利用可能な機器に限られるものの、“周辺機器”の常識から考えれば果てしない距離に設置が可能だ。USB 3.0対応製品は最大延長が30mまで。やはり電力供給はできないので、セルフパワーの周辺機器が対象となる。

 もう2つ、光ファイバーケーブルの特徴として折り曲げに弱いという点があるが、同社は独自の技術でこれを改善し、一般的な光ケーブルでは折れてしまうような状況でも、データ伝送が可能であると紹介されている。

 Thunderbolt、USB 3.0対応製品ともに、今四半期(2013年3月)末までに出荷を予定する。Thunderboltは長さの違いで数種類、USB 3.0は一般的なAタイプとBタイプを持つ製品と、Bコネクタのオス/メスが両端にある延長ケーブルの2種類が複数の長さで提供される見通し。市場想定価格は現時点では未定とのこと。

Corning社から発売されるThunderbolt、USB 3.0の光ファイバーケーブル
Thunderbolt用光ケーブルのコネクタ部分。光ファイバーを用いることで、銅配線よりも細いケーブルになっている
USB 3.0対応の光ファイバーケーブル。こちらは一般的な、Aタイプ、Bタイプのコネクタをもつケーブル
USB 3.0対応の光ファイバーケーブル。これはBタイプのオスメスを両端に持つUSB延長ケーブル
中間にリピーターを要し、太くなってしまう銅配線のUSB 3.0ケーブル(左)に比べて、細く軽いケーブルであることのメリットを紹介している
光ファイバーケーブルの弱点でもある折り曲げに対しても強いことを紹介するデモンストレーション

 Thunderbolt関連では、ストレージメーカーのLaCieが5つのドライブベイを搭載するThunderbolt対応のRAIDストレージ「LaCie 5big Thunderbolt RAID」を出展した。RAID 0で運用した場合、最大20TBの容量を実現する。2TB×5台構成の10TBモデルが1,199ドル(税別)、4TB×5台構成の20TBモデルが2,199ドル(同)。

 PCでもThunderboltポートをもった製品はいくつか出荷されているが、LaCieではMacProを除く事実上の全製品にThunderboltを搭載するMacにターゲットを絞り、Mac対応の周辺機器として発売する。

 併せて同社は、フィリップ・スタルク氏がデザインしたUSB 3.0対応ストレージと、5台のドライブを搭載可能なNAS「LaCie 5big NAS Pro」も出展。IntelのデュアルコアAtomプロセッサを搭載している。

「LaCie 5big Thunderbolt RAID」。写真は背面で、5つのドライブベイと2つのThunderboltポートが確認できる
Intel製のデュアルコアAtomプロセッサを搭載するNASシステム「LaCie 5big NAS Pro」。正面デザインは、「LaCie 5big Thunderbolt RAID」と同じ
最近は、故スティーブ・ジョブズCEOが家族に遺したとも言われるクルーザーの設計にも携わったと言われるフィリップ・スタルク氏デザインによるUSB 3.0対応ストレージ。デザインと放熱を兼ねる特徴的なフィンに加え、本体部分も単なる直方体ではない

センサー内蔵のスプーン、フォークも登場。デジタルヘルスケア製品群

 HAPILABSが出展したのは、モーションセンサー内蔵のフォーク「HAPIfolk」。フォークを握った手の動きを検知することで、口に食べ物を運ぶペースの速さや食事時間などを測定する。こうしたデータを可視化することで、早食いや大食いなど、肥満につながる食事方法を抑制するという。デモ機はフォークだけでなくスプーンもあった。

 初期製品だけあって、ちょっとお洒落とは言えないデザインではあるものの、BluetoothによってスマートフォンやPCと接続。収集されたデータを可視化し、適切なアドバイスを表示する。フォーク・スプーンはUSB 接続で充電を行なう。

大人が使うものとしては、デザインにまだまだ改善の余地はありそうだが、世界で初めて登場するという触れ込みの「HAPIfolk」。スプーンタイプもあるが、残念ながら箸タイプのものはまだない

 「HAPIfolk」に限らずデジタルヘルスケア製品は、利用したからといってそれが直接体調を良くしたり、ダイエットにつながるものではない。さまざまなデータを可視化するこで、体調管理やダイエットなどの方向性を定め、モチベーションを維持するのが狙いだ。

米家電量販大手Bestbuyなどの店頭では、すでにクリップタイプの活動量計が販売されている「fitbit」。2013年前半に発売を予定しているというリストバンドタイプの製品を紹介。Wi-Fi体重計と連動して、データを統合管理できる
モーションセンサーだけでなく、皮膚に接触する部分に電気的な接点を持つタイプは体温、心拍数などもあわせて測定できる。腕時計タイプの「BASIS」。「Bodymedia」の製品も同種の製品にあたる
リストバンドタイプの「LarkLife」
本誌でも何度か紹介している「iHealth」の製品群

そのほかのスマートフォン関連機器

 2012年のCESレポートでも紹介しているiPhone向けのクリップタイプレンズ「olloClip」。iPhoneのカメラレンズ部分に挟み込むことで、マクロ、ワイド、魚眼コンバータとして利用できる。2013年は薄くなったiPhone 5に対応したモデルを発表。3月末までに出荷を予定している。挟み込む仕組みのため、ほかのカバーと併用できないという問題はあったが、レンズのカバーが可動する専用のカバーも用意された。このカバーには三脚などに取り付けるためのネジ穴も用意されている。

iPhone5に対応する「olloClip」。専用カバーを開発して、各種カバーと併用できないという利用上の不便さを改良した。iPod nano(第5世代)向けの製品も参考出展
そのほかの展示物
世界で初めてアプリケーション対応のバッテリとして紹介されている「Tethercell」。単3形電池の形状に、Bluetooth接続機能などを内蔵した。単4形電池を取り付けることで電気的には1.5Vの乾電池として利用できる。Bluetooth接続によって、スマートフォンなどから、この電池を取り付けた機器の電源をオン/オフできるほか、タイマー制御なども行なえる。電池寿命のモニターも可能
広告モデルにすることで、モバイルインターネットのランニングコストをゼロにするという触れ込みの「FreedomPOP」。大手キャリアの回線を借り受けるMVNOで、ポケットルーターや、USBスティック、iPod(第4世代)用のジャケットなどを99ドル程度で販売する。一定量のデータ通信までは広告表示モデルにすることで通信料金は無料とのこと。2013年内のサービス開始を目指している
iOSとMac/PC間でファイルを転送するPhotofast社の「i-FlashDrive HD」にLightningコネクタ対応の製品が加わった。従来の30ピンにLightning-30ピンアダプタを同梱するというかなりの力業的製品
iPhoneのキー入力をBlackBerry風にするというケース付きキーパッド。入力はBluetoothなどの無線接続ではなく、キーパッド裏面にある静電容量の接点を利用して行なわれる。使用しないときは回転させて、背面側に収納
指紋認証機器大手、Validityによるテクノロジーデモ。パスワード認証やパターン認証が主流のスマートフォンやタブレットの個人認証に指紋認証の導入を進めたいとしている。デモ機下部には指紋スキャナーが搭載され、指先をスライドして個人の認証が行なえる仕組み。パスワードやパターン以上にセキュアだとしている
一見すると救命胴衣のようだが、実はスピーカーを内蔵。スマートフォンアプリと連携して、さまざまなシチュエーションに応じて音楽を楽しめるとのこと。スマートフォンとはBluetoothで接続する
簡易型のランタン「Luci」。空気で膨らませるバルーン内にLEDライトを設置。通常は畳んでしまっておき、利用するときには、バルブから空気を吹き込む。充電は底面にある太陽電池パネルを使って行なう

(矢作 晃)