【CeBIT 2011レポート】【ASUSTeK編】
Intelの次期チップセット「Intel Z68/H61」搭載マザーを展示
~「明日発表だから今はいえない」CPUのネットブックも

ASUSTeKブース

会期:3月1日~3月5日(現地時間)

会場:ドイツ連邦共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ



 ASUSTeKはCeBIT開幕前日となるドイツ時間2月28日、報道関係者に対して同社ブースのプレビューイベントを開催。同社ブースは一区画では足らず、通路を挟んで1.5区画を使うという広大なもの。そこで今春以降に同社が売り込んでいく新製品の展示が行なわれている。

●Intel Z68やIntel H61を搭載するマザーボード

 IntelのSandy Bridgeに対応したチップセットであるIntel 6シリーズは、これまでビデオカード接続環境向けチップセットのIntel P67と、CPU内蔵グラフィックス使用環境向けチップセットのIntel H67の2製品がリリースされている。ご存じのとおり、これらは1月末にリコールが発表され、現時点で入手できない状態が続いている。

Intel P67/H67製品には修正版チップでのリリースを示す「Rev B3」ポップが掲げられた

 このCeBITは、いわばIntel P67/H67の仕切り直しといった雰囲気も漂っており、ASUSTeKブースのIntel P67/H67製品には、修正版チップである「Revision B3」であることをアピールするポップが掲げられている。

 そんな中、Intelの次の一手となるチップセットを搭載したマザーボードも展示されている。1つは「Intel Z68」を搭載するマザーボードだ。Intel Z68はPCI Express x16インタフェースをPCI Express x8×2のコンフィグレーションで使用することが可能で、かつCPU内蔵のIntel HD Graphicsも使用可能という、Intel P67とIntel H67の特徴を兼ね備えるチップセットになるという。

 さらに、Sandy BridgeではCPU内蔵PLLが、1つのクロックソースからCPUクロックやメモリクロック、PCI Expressクロックを決めるため、BCLKを変更するオーバークロックに弱いという一面を持っていた。Intel Z68では外部PLLを使用可能とすることで、CPU・メモリ・PCI Expressのクロックの個別設定が行なえるよう設計することができるという。

 ブース担当者によると本製品の価格帯は「Intel P67と同じか、少し高くなると思う」とする。この程度の価格で登場することになれば、特に自作市場においてはIntel P67/H67から取って代わって主流の製品となる可能性が高い。製品の登場は「4月~5月ごろ」としている。製品自体は4月には出荷可能な状態になり、あとはIntelの発表日次第になるとの見込みを示している。

Intel Z68を搭載する「P8Z68-V EVO」I/Oリアパネル部にはDVI/HDMI/D-Sub15ピンといったディスプレイ出力端子を装備。Bluetoothモジュールも搭載しているPCI Express x16スロットは3スロット装備。中央のスロットはx8専用レーンとなっている。PCIを2基備えるのも特徴となっている

 一方、ローエンド向けには、すでに製品情報も公開されているIntel H61が用意されている。Intel H61は"H"のモデル名からも分かるとおりディスプレイ出力インタフェースのFlexible Display Interfaceを持つチップセットで、Intel H67の下位モデルとなる。主なポイントはSATA 6Gbpsポートをサポートしていないことと、メモリが1チャネルにつきDIMM 1枚に制限される点。ここでIntel H67と差別化されている。

 ただし、ASUSTeKが展示したIntel H61搭載マザーボードのうち、ATX版とmicroATX版には、コントローラを実装することでSATA 6Gbpsポートが2基提供されている。こちらはIntel Z68よりも早期に投入される予定としている。

Intel H61を搭載する「P8H61 PRO」。この製品はIntel H61でも外部グラフィックスを使うことを前提に、ASUSTeK独自のTweak機能を盛り込んだものとしているP8H61 PROのI/Oリアパネル部。ディスプレイ出力端子を持っていないIntel H67同様にレーンを分ける設計ができないため、PCI Express x16が1基となっている
同じくIntel H61を搭載するmicroATXマザー「P8H61-M PRO」P8H61-M PROのI/Oリアパネル部。D-Sub15ピン、DVI、HDMIを備えるこちらはPCI Express x16スロットを2基持つが、下側の黒いスロットはチップセットから伸ばしたPCI Express x4になる
こちらはMini-ITXのIntel H61搭載マザー「P8H61-I」P8H61-IのI/Oリアパネル部

製品として提供される段ボール製のMini-ITXケース

 Mini-ITXに関連した話題としては、紙(段ボール)でできたPCケースの展示を行なっている。この手のものはコンセプト展示であることが多いが、これは実際に製品として出荷を計画しているもの。近々、正式な発表を行なうという。

 もっとも製品として出荷するといっても、どのような形態で販売するかは未定とのこと。例えば単体で発売する可能性もあれば、マザーボードとバンドルして提供する、マザーボードのパッケージとして提供する、などの計画が検討されているという。

 このほかのマザーボードでは、ゲーマー向けブランドのR.O.G.ブランドの新製品として、「Rampage III Black Edition」の展示を行なった。Intel X58+ICH10Rを搭載するRampage III Extremeをベースに、黒中心の色合いにデザインを変更。

 さらにIEEE 802.11n、Bluetooth 3.0モジュール、USB 3.0ヘッダピンの搭載といった、現在のトレンドへ適応を行なっているほか、ヘッドフォンアンプとKiller E2100(Killer NIC)をワンボードに収めた「Thunderbolt」をバンドルする。Thunderboltについては2010年11月に存在を予告していたものだ。

 なお、過去のR.O.G.シリーズにおいてサウンド機能を別カードで提供する場合は、マザーボード本体には実装されていない製品もあった。しかし本製品は、サウンド機能とLAN機能をマザーボードに実装しており、より豊かなゲーム体験を味わいたい人はThunderboltを装着して使う、というスタイルを可能にしたとしている。

 すでに製品化は完了しており出荷も間もなくという。日本では3月末には発売したいとしている。

Rampage III Extremeをベースに機能強化を行なった「Rampage III Black Edition」Rampage III Black EditionのI/Oリアパネル部IEEE 802.11n無線LANとBluetooth 3.0モジュールを搭載
ICH10RのSATA 3Gbps×6と追加のSATA 6Gbps×2を持つのはRampage III Extremeと同様。Black EditionではUSB 3.0ヘッダピンが追加されているKiller NICとヘッドフォンアンプを1枚のカードに収めた「Thunderbolt」をバンドルして販売される

●MATRIXシリーズのGTX580版をデモ

 ビデオカードの新製品では、オーバークロッカー向けビデオカードのMATRIXシリーズにラインナップされるGeForce GTX 580搭載モデルのデモが行なわれた。MATRIXシリーズは各種クロックや電圧、メモリタイミングなど、非常に細かなチューニング行なえる製品シリーズだ。具体的な価格などは未定ながら、今月末にも発売したいとしている。

 このほか、シングルビデオカードで6ディスプレイを出力可能なRadeon HD 6970搭載製品や、同社のオリジナルクーラーである「DirectCU II」を採用したGeForce GTX 580搭載製品などが展示されていた。

MATRIXシリーズのGeForce GTX 580搭載版となる「MATRIX GTX580 P/2DIS/1536MD5」ファンを最高速度回転へ引き上げるスイッチと、電圧のアップ/ダウンを行なうスイッチを備える電源端子は8ピン×2の構成
ブラケット部にはSafe Modeスイッチも装備。OC設定によって動作しなくなった場合の復旧用に用意されている1枚のRadeon HD 6970搭載ボードから6画面出力を行なう、「EAH6970 DCII/2DI4S/2GDS」のデモブラケット部をDVI×2と標準サイズのDisplay Port×4の構成とすることで、6画面出力を可能にしている
Direct CUIIクーラーを搭載するGeForce GTX 580搭載製品「ENGTX580 DCII/2DIS/1536MD5」。コアクロック782MHz、メモリ4,008MHzで出荷される「ENGTX580 DCII/2DIS/1536MD5のリアパネル部

●裸眼3D対応のゲーミングノート

 PC製品では、裸眼立体視表示に対応したR.O.G.シリーズのゲーミングノートPCが参考展示された。「G53 SW 3D」は「NAKED EYE 3D」とASUSTeKが呼ぶ裸眼立体視表示技術を組み込んだノートPC。裸眼3D表示にあたっては、まず自分の顔をWebカメラに読み込ませ、自動的にキャリブレーションを行なったうえで、最適な視差が得られるようにしている。

 製品のスペックは1,366×768ドット表示の15.6型液晶ディスプレイに、Core i5-2630QM、Intel HM65、GeForce GTX 460Mを用いたものとなっているが、NAKED EYE 3Dの提供は第2四半期を予定しており、この製品を裸眼立体視対応ノートとしてそのまま市場に出荷するかは未定という。

ASUSTeKが提供予定の裸眼立体視表示テクノロジ「NAKED EYE 3D」を組み込んだ、「G53 SW 3D」Webカメラで自分の目や鼻の位置を認識し、ディスプレイまでの距離などを判定。最適な映像を表示できるようにしている

●Eee PCの新製品は一部仕様を非公開に

 ノートPCベンダーとしてのASUSTeKの地位を築くのに大きく貢献したネットブックシリーズ「Eee PC」も新製品をいくつか展示している。ただし、その仕様は一部が非公開の状態での展示となった。これは2月28日の時点で未発表のCPUを搭載する予定であることから、このCPU名を隠しているのだという。

 ブーススタッフは「CeBIT期間中には剥がす予定」としており、3月1日に行なわれるIntelのカンファレンスにおいて、このジャンルに関した新たな発表があることが予想される。そのレポートは後日お届けするとして、ここでは展示されたEee PCの新製品を写真で紹介しておきたい。

CPU名の一部が隠されたEee PCの製品紹介パネル10.1型ディスプレイの「1018P」。アルミ素材を活かしたスリムデザインのモデル10.1型ディスプレイでSeashellデザインを採用する「1015PX」
こちらはMaking Wavesデザインの「1015PW」IONプラットフォームを採用する「1015PN」。Optimus Technologyをサポートする1018Pと1015PWはUSB 3.0もサポートしている

(2011年 3月 1日)

[Reported by 多和田 新也]