ASUSTeK、Sandy Bridge対応マザーを披露

ASUSTeK Motherboard Business Unit、プロダクトマネージャーのMark Chen氏



 ASUSTeK Computerは都内において報道関係者向けにテクニカルセミナーを開き、来年(2011年)の発売が予定されているIntelのSandy Bridgeに対応したマザーボードを披露した。このセミナーでは、台湾のASUSTeK本社から来日したプロダクトマーケティング部プロダクトマネージャーのMark Chen氏が、Sandy Bridge対応マザーボードに搭載された同社機能の説明も行なった。

●Sandy Bridge対応マザーとASUSTeK製品のウリ

 今回紹介されたSandy Bridge対応マザーはIntel P67、Intel H67を搭載するとされる計7モデル。うち実機が展示されたのが6モデルとなる。さらに、6モデルのうち一機は、高信頼性をうりとするTUF(SABERTOOTH)シリーズにラインナップされるモデルとなる。

 まずは、スタンダードモデルとなる5製品を紹介しておく。スタンダードモデルには、Intel P67とIntel H67を搭載した製品が投入される。Intel P67を搭載する製品は、最上位モデルの「P8P67 Deluxe」、下位モデルとなる「P8P67」、microATXモデルの「P8P67-M EVO」が揃う。Intel P67は既存のIntel P55同様、ディスプレイ出力端子を備えていない。

 Intel H67はmicroATXモデルの「P8H67-M EVO」、Mini-ITXモデルの「P8H67-I Deluxe」がラインナップされる。Intel Hxxシリーズということでディスプレイ出力端子を備えており、前者がミニD-Sub15ピン、DVI-D、HDMI、DisplayPortを装備。後者はミニD-Sub15ピン、DVI-D、HDMIを備えている。

 ちなみに今回披露されたラインナップにはIntel H65を搭載するモデルが存在しない。この点についてChen氏は、チャネル市場に向けて製品化はするが、DIY市場に出荷するかはニーズを見て判断したいとしている。また、Intel H67に比べて少し遅れたリリースになるだろうと述べている。

Intel P67を搭載する「P8P67 Deluxe」。スタンダードモデルの最上位製品ということでヒートシンクにも特徴があるP8P67 DeluxeのI/Oリアパネル部。詳しくは後述するがUSB 3.0ポートとBluetoothの搭載がポイントとなるP8P67 DeluxeにはPCI Express x16スロットに使われていると見られるPLX TechnologyのPCI Expressスイッチを搭載している
Intel P67を搭載する「P8P67」。Deluxeモデルに比べるとヒートシンクもシンプルで、PCI Expressスイッチも搭載していないP8P67のI/Oリアパネル部。やはりUSB 3.0とBluetoothを搭載。USB 2.0ポートやeSATA、LANの数がDeluxeモデルと異なっているIntel P67を搭載する「P8P67-M EVO」。microATXながらPCI Express x16を2スロット備えている
I/Oリアパネル部。配置は異なるが、インターフェイスの種類と数はP8P67に近いIntel H67を搭載する「P8H67-M EVO」。こちらもPCI Express x16を2スロット備えているP8H67-M EVOのI/Oリアパネル。ディスプレイ出力は、DisplayPortも備える
Intel H67を搭載するMini-ITXマザー「P8H67-I Deluxe」。SO-DIMMを2スロット備えるほか、Mini PCI Expressスロットには無線LANカードが装着されているP8H67-I DeluxeのI/Oリアパネル。無線LANのアンテナ端子、Bluetoothの搭載が特徴となっている

 これらの製品には、ASUSTeKが新たに導入した技術が盛り込まれる。いくつかピックアップして紹介しておきたい。

 1つめは「Digi+ VRM」で、文字通り、VRMをデジタル制御としたものだ。従来のEPUでも電圧変換効率を上げるべく、フェーズ数の切り替えなどを行なっているが、VRMはアナログ回路であるため、2/4/8/12/16といった固定段数での切り替えに留まっていた。もちろん、この段数を増やすことは理論上は可能だが、回路規模が大きくなるため、一定の固定段数による切り替えが現実的な解になっていたという。

 このVRMをデジタル制御とすることで、1段刻みでのフェーズ数切り替えや、より細かいステップでの電圧切り替えなどを実現する。また、スプレッドスペクトラムも動的に制御することで電磁波による悪影響を抑制したり、VRMの温度を細かく監視して特定のチョークに熱が集中することがないよう制御するなど、さまざまな効果が示されている。

 BIOSはEFI化される。これはIntelのマザーボードデザインガイドラインに基づくものとなる。ASUSTeKが採用したBIOS画面は、Advanced Mode、EZ(イージー) Modeの2つに分かれる。前者は従来のBIOS画面をエミュレートしたようなデザインで細かい設定を行なえるものだ。

 後者は簡易設定画面ともいうべきもので、クロックや電圧などのシステム情報、パフォーマンスプロファイルの切り替え、ブートプライオリティの切り替えが行なえるグラフィカルな画面となっている。EZ Modeで採用された画面は、ユーザーがよく使う機能を1画面に集約したものであるとChen氏は説明している。

 EZ Mode、Advanced Modeともにマウス操作に対応するほか、EFI Shellの起動も可能となっている。

従来モデルで提供されるDIPは、電力効率を向上させるEPU、オーバークロック機能のTPUから成るが、EPUにDigi+ VRMを追加することでDIP2に進化するDigi+ VRMでは従来よりも細かな電圧調整が可能になる。これによりオーバークロックに対する特性が良化するとするVRMの電源フェーズ数を1フェーズ刻みで変更できるようになることで、全電流域で効率のよい電源変換が行なえる
VRM部の温度を監視し、負荷を分散させることで、特定のチョークに熱が集中しないよう制御することもできるEFI BIOSのEZ Mode。上部にシステム情報が表示されるほか、パフォーマンスプロファイルの切り替え、ブートプライオリティの切り替えができる
Advanced Modeは画面が多少グラフィカルになっているが、基本的には従来のBIOSで提供されていた機能が継承されている。こちらもマウス操作が可能ExitメニューからEZ Mode-Advanced Modeの切り替えやEFI Shellの起動が可能。ちなみに画面解像度は、ディスプレイを自動判定して最適な解像度で表示されるとのこと

 「BT GO」と呼ばれる新機能は、リアパネル部に搭載されたBluetoothにより、PCやスマートフォンのと連携を実現するものだ。一般的なファイル同期のほか、スマートフォンからのオーバークロック、スマートフォンの3G回線を利用したインターネット接続(いわゆるテザリング)、スマートフォンをメディアプレーヤーのリモコンとして利用する機能などが提供される。

 UBS 3.0については従来モデルから実装されているが、今回紹介された製品の一部にはフロントパネル用ヘッダピンが追加される。さらに、3.5インチベイに装着可能なボックスもP8P67 Deluxeに付属する。

 I/Oリアパネル部に2基、フロントパネル用に2基のUSB 3.0インタフェースが提供されることになるが、そのためにマザーボード上にはルネサスエレクトロニクスのUSB 3.0コントローラを2つ実装している。これらは、Intel 5シリーズ搭載製品とは異なり、スイッチチップなどを使わずに、PCI Express 2.0 x1に直接接続されるという。

 USB 3.0用のヘッダピンについては、これまで仕様が定まっていなかったことから、独自のヘッダピンを採用する例もあれば、Intelが提供するスペックのドラフト版をベースに搭載した例があった。Chen氏は、Intelのガイドラインはドラフトから最終仕様になっており、それに準拠したヘッダピンを実装したと述べた。最終仕様がIntelから提示されたことで、今後はこの形状のヘッダピンの採用例が増える可能性が高いと見られる。

BT GOはBluetoothモジュールをI/Oリアパネルに搭載し、スマートフォンやPCと連携したさまざまな機能が提供されるIOリアパネルに実装されたBluetoothモジュールUSB 3.0は一部モデルでフロントパネル用ヘッダピンを提供。そのためにUSB 3.0コントローラも2つ搭載する
Intelが提唱する最終仕様に準拠させているというUSB 3.0用ヘッダピン。脇にはフロント用のUSB 3.0コントローラも見えるP8P67 Deluxeに付属するUSB 3.0ボックス。3.5インチベイに搭載可能

●Intel P67搭載のSABERTOOTHや、R.O.G.シリーズも予告

 このほか、セミナーにおいては、開発中のIntel P67を搭載するTUFシリーズの製品「SABERTOOTH P67」も披露。TUFシリーズは、軍用基準のコンデンサを用いるなど、信頼性に特化して開発することを特徴とする製品で、すでにIntel X58搭載製品、Intel P55搭載製品が発売されている。

 SABERTOOTH P67では、これまでの2製品に比べて、外観から大きく手を加えている。マザーボードの表面全体をプラスチック製のカバー(TUF Tactical Vestと呼ばれる)で覆う構造となった。

 その効用はスライドを見ると分かりやすいが、TUF Tactical Vestの内側に空気の整流板を装備。マザーボード表面のエアフローを最適化することが目的の1つ。この効果を高めるために、TUF Tactical Vestにファンを取り付けることも可能だ。さらに、ビデオカードが発する熱からマザーボードの基板を保護し、最適化したエアフローを維持する効果もある。これにより、一般的なマザーボードより3~5℃の温度低下が見られるという。

 またSABERTOOTH P67は、通常のマザーボードでは5~6個程度となる温度センサーを9個搭載。この温度センサーからの情報を基にファン速度などを統合的に制御できる管理ツールも提供される。

信頼性に特化するTUFシリーズのIntel P67搭載製品「SABERTOOTH P67」SABERTOOTH P67のI/Oリアパネル部表面にTUF Tactical Vestを搭載するのが特徴的なSABERTOOTH P67だが、裏面にはとくにカバーなどを装備していない
TUF Tactical Vestの内部構造とエアフローの仕組み。CPUクーラーが生んだ風の一部をチップセットヒートシンクへ送ったうえで排気するTUF Tactical Vest専用のファンも提供される
マザーボード上のエアフローに影響がでないよう、ビデオカードが発する熱を防ぐ効果もあるボード上には9個の温度センサーを搭載。温度センサーを基にファン制御などを行なう統合ツールも提供される

 さらに実機の披露はなかったが、ハイエンドユーザー向けモデルであるR.O.G.シリーズのIntel P67搭載製品「Maximus IV Extreme」の発売を予告した。デジタルVRMやEFI BIOSといった先述製品の新機能を受け継ぐほか、R.O.G.シリーズならではの機能が搭載される。中には、Maximus IV Extremeで初採用される機能もある。

 さらに、Intel P67の次のモデルで実現したいという、開発中の機能も紹介。オンラインゲーム利用時のネットワーク遅延を低減させたLANコントローラと、オンラインゲームユーザーが多用するヘッドフォン用アンプを1枚のカードに統合した「ROG ThunderBolt」が、将来的に提供される見込みだ。

R.O.G.シリーズのIntel P67搭載製品「Maximus IV Extreme」も予告DIMMスロットやPCI Expressスロットごとに、メモリやビデオカードの装着を認識する「GPU.DIMM Post」iPhoneからBluetooth接続してオーバークロック設定などを行なう「ROG iDirect」
PCからUSB接続でオーバークロック設定を行なう「RC TwerkIt」は、「GPU TweraIt」によって、CPUだけでなくGPUの設定も行なえるようになるRC TweakItとGPU TweakItのブロックダイヤグラム。iROGチップを介して制御を行なう
EFI BIOSの恩恵ともいえる「ROG BIOS Print」は、BIOS画面上で[F12]キーを押すことで、スクリーンショットを取得できるMaximus IV Extremeではなく、それ以降の製品に向けて開発中の「ROG ThunderBolt」。ゲーマー向けLANコントローラとヘッドフォンアンプを1枚のカードに統合する

(2010年 11月 15日)

[Reported by 多和田 新也]