Samsungは現地時間2月14日からスペインのバルセロナで開催されているMobile World Congressの開幕に先立つ2月13日(現地時間)に、記者会見を開催し、スマートフォンの最新モデルとなる「GALAXY S II」と、タブレット端末「GALAXY Tab 10.1」を発表した。
日本ではNTTドコモから発売されヒット商品となっている現行のGALAXY Tabは、7型液晶を搭載しているが、今回発表されたGALAXY Tab 10.1は、その名前の通り10.1型WXGA(1,280×800ドット)を搭載し、プロセッサはデュアルコア、内蔵バッテリは6,860mAhという強力なスペックを持つ。タブレット向けのAndroid OSの本命とみられているAndroid 3.0(開発コードネーム:Honeycomb)搭載デバイスの1つとして、人気を集めることになりそうだ。
●1千万台のベストセラーになったGALAXY Sの後継機がデビューSamsungの「GALAXY S」は、日本ではNTTドコモから「SC-02B」の型番で販売されているスマートフォンで、そのほか地域でも各キャリアから販売されており、全世界的に大きなヒットになっている。Samsung モバイル通信ビジネス担当プレジデント J. K. Shin氏(以下:シン氏)は「昨年(2010年)、スマートフォンは60%を超える大きな市場成長を見せた。そうした中で、我々は全世界で1千万台のGALAXY Sを販売し、多くのユーザーを獲得した。そうした勢いを継続するための製品がこれだ」と、GALAXY S IIを手に持って公開した。
【お詫びと訂正】初出時にGALAXY Sの累積出荷台数を1億台としておりましたが、1千万台の間違いです。お詫びして訂正させて頂きます。
シン氏は「2011年のスマートフォンでは3つの要素が非常に重要になる。それが液晶パネル、処理能力、そしてコンテンツだ」と述べ、その3つの要素に関しての説明を行なった。
まず現行のGALAXY Sでは、同社が「SUPER AMOLED」と呼ぶ、明るくてコントラスト比が高く、応答性の速い4型の有機ELディスプレイを採用されているが、GALAXY S IIでは「SUPER AMOLED PLUS」という改良版を採用し、明るさや応答性などがさらに改善されているという。さらに画面の大きさが4型WVGAから4.3型WVGA(より厳密に言えば4.27型)へと大きくなり、視認性が向上した。
GALAXY SではシングルコアのSamsung製プロセッサが採用されていたが、GALAXY S IIではデュアルコアプロセッサに変更されている。シン氏は「新しいデュアルコアプロセッサは、従来製品に比べて3Dグラフィックスが5倍高速になっているなど、大きなパフォーマンスアップを果たしている」と述べ、高い処理能力を有していることをアピールした。
また、シン氏は新しいユーザーインターフェイスもGALAXY S IIの特徴の1つとし、ゲームタイトルをダウンロードできる「Game Hub」、音楽データを探すことができる「Music Hub」、電子書籍にアクセスできる「Reader Hub」などの仕掛けを用意し、よりユーザーが簡単にコンテンツにアクセスできるようにしたと紹介した。
世界中のGALAXY Sユーザーからのメッセージが流された。日本の女性ユーザーも | 最後は全員が楽器に持ち替えて、フィナーレへ。 | Samsung モバイル通信ビジネス担当プレジデント J. K. Shin氏、手に持つのがGALAXY S II |
2010年はスマートフォンは60%以上の急成長 | GALAXY Sは1千万台の出荷を達成 | GALAXY Sの特徴は液晶パネル、処理能力、コンテンツの3つ |
●新しい4.3型のSUPER AMOLED PLUS液晶とデュアルコアプロセッサを採用
引き続き、Samsungの欧州子会社であるテレコミュニケーション ポートフォーリオマネージメント統括 トーマス・リッチャー氏と、テレコミュニケーション アカウント統括 アンドリュー・コフリン氏が交互に登場し、スペックの詳しい説明や理想のユーザー像の例を示しながら、GALAXY S IIを紹介した。
Samsungより発表されたGALAXY S IIのスペックは以下のようになる。
【表1】GALAXY S IIのスペックプロセッサ | Samsung製デュアルコアプロセッサ/1GHz | |
メモリ | RAM | 1GB |
内蔵ストレージ | 16/32GB | |
microSD | 有り | |
ディスプレイ | 4.27型WVGA(480×800ドット) | |
ネットワーク | 3G | HSPA+(850/900/1,900/2,100Hz) |
GSM | EDGE(850/900/1,800/1,900Hz) | |
無線LAN | IEEE 802.11a/b/g/n | |
Bluetooth | Bluetooth 3.0+HS | |
NFC | オプション対応 | |
カメラ | リア | 800万画素(フラッシュ内蔵) |
フロント | 200万画素 | |
バッテリ | 1,650mAh | |
OS | Android 2.3 | |
サイズ | 66.1×125.3×8.49mm | |
重量 | 116g |
先述のように、GALAXY S IIの最大の特徴は従来は4型だった液晶のサイズが4.3型に大型化され、ディスプレイも改善が加えられたSUPER AMOLED PLUSへと変更されたことだ。
リッチャー氏によれば、SUPER AMOLED PLUSではIPS液晶に比べて18%のシャープネスの改善があり、応答速度も0.01msと、IPS液晶の25msと比べて圧倒的に速くなっているという。さらに液晶素子の並べ方にも改善を加えており、色再現性や文字表示のクオリティなども従来製品に比べて改善されていると説明した。
処理能力という点ではデュアルコアに対応したことが大きな改善点となっており、GPUもクアッドコアになり、従来製品にくらべて描画性能が5倍になっているという。HSPA+と呼ばれるHSDPAの高速版の規格に対応しており、下りが最高で21Mbpsの帯域幅を実現する。なお、Samsungが報道関係者に配布した資料によれば、地域によってはデュアルコアではない場合があるとのことだった。また、メモリはRAMが1GB、内蔵ストレージが16または32GBで、最大で32GBまで対応するmicroSDHCスロットが1つ用意されている。
バッテリは従来製品の1,500mAhよりも容量が増え1,650mAhになっているが、薄さは8.49mm(最薄部)と従来製品(約9.9mm、同)さらに薄くなり、重量も116g(従来製品は118g)と軽くなっている。
OSは、Android 2.3(Gingerbread)で、Samsung独自のUI拡張も行なわれており、前述のとおりゲーム、音楽、電子書籍などのダウンロードに直接アクセスできるアプリケーション(SamsungではHubと呼んでいる)がプレインストールされており、それらを利用してコンテンツを購入したりなどが可能になる。
また、エンタープライズ向けの機能が拡張されているのも1つの特徴で、Microsoft ExchangeのクライアントとなるActiveSyncのAndroid版が標準でプレインストールされており、Excahngeと自動で同期することが可能になっている。また、端末内のデータを暗号化するハードウェアを内蔵しており、処理能力に影響を与えることなくデータを暗号化することができる。このほかにも、CISCOのVPNやより強力なリモートワイプ機能などが標準で搭載されており、企業のモバイルクライアントとしても利用することが可能だとアピールした。
●発表会はこのまま終わりと思いきや……GALAXY Tab 10.1も合わせて発表される
GALAXY S IIの発表が終わり、司会を担当していたSamsungの広報担当者が壇上に登場し、緞帳も閉まり始めたのでこれで終わりかと思い、多くの聴衆が席を立ち始めたところで、煙と共に再びリッチャー氏とコフリン氏の2人が再度登場して、もう1つの新製品を紹介し始めた。
それが、GALAXY Tab 10.1だ。現行のGALAXY Tabは7型の液晶を搭載しているが、GALAXY Tab 10.1は液晶のサイズが10.1型に拡張されており、ちょうどAppleのiPadとサイズ的には匹敵するものになったと言ってよい。ただし、iPadは解像度がXGA(1,024×768ドット)でアスペクト比が4:3の液晶を採用しているのに対して、GALAXY Tab 10.1はWXGA(1,280×800ドット)でアスペクト比が16:9になっているのが大きな違いと言える。電子書籍などではアスペクト比が4:3になっているものが多く、そのフィット感としてはiPadの方が上だと言えるが、逆に動画を見るときにはGALAXY Tab 10.1の方がフィット感は上ということになる。
プロセッサは1GHzのデュアルコアプロセッサが採用されており、16GBないしは32GBの内部ストレージを備えている。無線はHSPA+(21Mbps)に対応した3G(850/900/1,900/2,100)+GSM、IEEE 802.11nに対応したWi-Fi、Bluetooth 2.1+EDRに対応しており、800万画素のリアカメラと200万画素のフロントカメラを備えている。再生できる動画フォーマットはMPEG-4/H.263/H.264になっており、最大で1080p/30fpsの動画まで対応できる処理能力を備えている。なお、OSはタブレット向けに最適化されたAndroidとなるAndroid 3.0を搭載しており、もちろんAndroidマーケットに公式対応している。
気になるバッテリ容量は6,860mAhと、iPadの6,500mAhに比べて若干大きいのに、重さは599gと逆に軽くなっており、この点はiPadに比べた優位点ということになるだろう。なお、サイズは170.4×246.2×10.9mm(幅×奥行き×高さ)と、厚さは従来製品のGALAXY Tabの12.1mmに比べて薄くなっているほか、iPadの189.7×242.8×13.4mm(同)と比べても縦方向は若干長いものの、底面積では若干下回っており、よりコンパクトにまとまっている。
【表2】SamsungのGALAXY Tab 10.1のスペックプロセッサ | デュアルコアプロセッサ/1GHz | |
メモリ | RAM | 未公表 |
内蔵ストレージ | 16/32GB | |
microSDHD | 未公表 | |
ディスプレイ | 10.1型WXGA(1,280×800ドット) | |
ネットワーク | 3G | HSPA+(850/900/1,900/2,100Hz) |
GSM | EDGE(850/900/1,800/1,900Hz) | |
無線LAN | IEEE802.11a/b/g/n | |
Bluetooth | Bluetooth 2.1+EDR | |
NFC | 未公表 | |
カメラ | リア | 800万画素(フラッシュ内蔵) |
フロント | 200万画素 | |
バッテリ | 6,860mAh | |
OS | Android 3.0 | |
サイズ | 170.4×246.2×10.9mm | |
重量 | 599g |
なお、GALAXY S II、GALAXY Tab 10.1ともに現時点では出荷日などのアナウンスはされておらず、日本で販売されるかどうかに関しても未定であるとのことだ。しかし、どちらの製品も、現行製品がNTTドコモの売れ筋製品となっていることもあり、その後継である両製品が販売されないということも考えにくい。日本市場に投入されることも十分予想されるだけに、今後の動向に要注目だ。
(2011年 2月 15日)
[Reported by 笠原 一輝]