Acer AspireRevo開発者インタビュー
AspireRevo |
会期:6月2日~6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
Taipei International Convention Center
ネットブックの「Aspire one」で一躍日本でも存在感を高めることとなったAcerは、デスクトップでもNVIDIAのIONプラットフォームを他社に先駆けて採用し、日本でも6月下旬より発売される。今回、AspireRevoの開発責任者であるScott Chien氏にインタビューする機会を得たので、その模様をお伝えする。
Scott Chien氏は、Acerだけでなく、Gateway、eMachines、Packard Bellを含む同社のデスクトップ製品全てを統括している責任者 |
【Q】まず最初に、なぜNVIDIAのIONプラットフォームを採用するに至ったのか、その経緯を教えてください。
【A】AspireRevoは最初からNVIDIA IONを前提に開発したわけではありません。我々は、デスクトップPCというもののデザインが今後どんどん変化していくだろうと考えています。我々は数年前に容積3Lの小型PCを出しました。しかし、その次のモデルでは8.5Lに大型化しました。なぜかというと、3Dグラフィックの性能をもたせたかったからで、そのためには拡張カードが入る大きさにしなければならなかったからです。
この次のPCを開発しようとした時、我々は机の下ではなく、机の上、つまりまさにデスクトップに置くことができ、リビングルームであれ、ベッドルームであれ、家のどの場所にでも設置できる1Lサイズのものを作ろうと考えました。
ここで我々が必須と考えた事項は、1Lという小ささ、3DグラフィックおよびHD動画を含む一定レベルの性能、そして価格が十分に安いことという3点でした。そして、プロトタイプを作成している間に、NVIDIAと話す機会があり、IONがこの3点を満たすという結論に至り、採用を決めたわけです。
【Q】ということは、AspireRevoというブランドは必ずしもIONを意味するわけではないのですね。
【A】はい。RevoはRevolutionから取ったものですが、「Aspire one」がネットブックを意味するのと同じように、AspireRevoの定義は1Lクラスの小型マシンということになります。
【Q】AspireRevoのような小さなPCを作る上での課題は何だったのでしょうか。
【A】一般的に小さなPCを作る上では2つの課題があります。それは廃熱と騒音です。廃熱の性能を上げるには大きくて低回転なファンか、小さくて高速回転なファンを使いますが、当然小さなPCには大きなファンは搭載できません。しかし、小さくて高速なファンを使うと、今度は騒音が大きくなります。このバランスを取るのに苦労しました。
【Q】AspireRevoはファンを搭載しているのでしょうか。
【A】はい搭載しています。ただし、発熱は小さいので低回転のファンで済ませることができました。
【Q】この筐体は最大何WまでのTDPに対応できるのでしょう。
【A】最大で65Wまで対応できます。AspireRevoでは、メモリやHDDなど全て含めて最大TDPは45Wとなっています。
【Q】AspireRevoを開発するとき、ビデオカードの拡張用にPCI Express x16スロットを持たせるというアイディアはあったのでしょうか。
【A】先にお話ししましたように、AspireRevoは1Lというサイズを前提にしていましたので、その考えはありませんでした。また、IONはカジュアルゲームやエンターテイメントなどをこなすのに十分な性能を持っています。
【Q】メモリスロットはいくつあるのでしょう。
【A】SO-DIMMスロットが2つあります。
【Q】Mini PCI Expressスロットは何の用途のためにあるのでしょう。
【A】このPCは地域に応じて、異なる用途を打ち出しています。ですので、一部の地域ではTVチューナモジュールを、別の地域では無線LANモジュールなどを搭載して出荷しています。
【Q】IONの能力をフル活用するには、CUDAに対応したアプリケーションをバンドルさせる必要があると思います。
【A】その通りです。その点については現在もNVIDIAと協議を続けています。
【Q】AspireRevoではなぜ光学ドライブを搭載しなかったのでしょう。
【A】それもサイズを優先させた結果です。必要であれば別途USBのドライブを接続していただければと思います。
【Q】AspireRevoの価格は他社の単体マザーボードと比較すると安く思えますが、NVIDIAから特別な価格を提示されているのでしょうか。
【A】それについては、NVIDIAからは良いサポートを受けているとだけお答えしておきます。
法人向けでIntel 945GSEを搭載するVERITON |
【Q】COMPUTEX会場のAcerブースには、AspireRevoと同じ筐体で色違いのIntel 945GSE Express搭載機が展示されていました。これはどういう違いがあるのでしょう。
【A】そちらは企業向けの製品です。企業ではIntelチップセットを望む声が少なくないので、こういうラインナップも用意しているのです。
【Q】IONとIntel 945GSEではコストはどちらが安いのでしょう。
【A】Intel 945GSEの方が安いですが、さほど大きな違いはありません。
【Q】今後ION搭載のノートブック/ネットブックを出す予定はあるのでしょうか。
【A】私はデスクトップの担当ですので、その点はお答えできません。
【Q】ION搭載の液晶一体型はどうでしょう。
【A】現時点ではその計画はありません。ただ、将来的には可能性はあると思います。
【Q】Chienさんはデスクトップを統括されてるので、デスクトップ全般についてもお伺いします。現在、特に日本ではノートのシェアが伸び、デスクトップの売れ行きは下がる一方です。デスクトップPCの将来はどうなるとお考えですか。
【A】確かに現在のトレンドとして、ノートブックはデスクトップに置き換わりつつあります。昔は、拡張性、性能、安さを求めるとデスクトップに行き着きましたが、今ではそうではないからです。しかし、モビリティが不要なユーザーにとっては、まだまだデスクトップは必要とされる場面があると信じています。その1つは大画面です。映像の迫力を求めるなら画面も大きくすべきでしょう。また、今後普及が予想されるタッチスクリーンについても大きな画面の方が操作しやすいという利点があります。また、ハイエンドのグラフィック性能を求めるなら、今後もデスクトップ用のビデオカードが必要となるでしょう。
【Q】最後に日本のユーザーにコメントをお願いします。
【A】我々は、AspireRevoがそうであるように、他の企業や製品を追いかけるのではなく、常に新ジャンルのパイオニアであろうと努力しています。今後も、新しいコンセプトの商品を出していきたいと考えていますので、期待していてください。
【Q】ありがとうございました。
(2009年 6月 8日)
[Reported by 若杉 紀彦]