イベントレポート

Dell、ゲーミングPCをゲーム配信サーバーにする「Concept Nyx」

Alienwareのロゴが装着されたイメージ写真(写真提供:Dell)

 Dellは、1月3日(現地時間、日本時間1月4日)から米国ラスベガスで開催されているCESに合わせて報道発表を行ない、新しいPCゲーミングの利用シーンコンセプト「Concept Nyx」を発表した。

 Concept Nyxは言ってみれば、クラウドゲーミング(クラウドにあるサーバーでレンダリングして、動画の形でクライアントに配信されるゲームシステムのこと)のパーソナル・エッジ・サーバー版と言って良いコンセプトで、家庭内にあるゲーミングPCに内蔵されているGPUでレンダリングされたゲームの画面を、Wi-Fiなどのローカルネットワークに接続されているほかのデバイス(ノートPC、スマートフォン、専用端末など)に配信する仕組みだ。

AlienwareでゲーミングPC市場を拡大しているDell、CESに合わせて新しいゲーミングPCコンセプト「Concept Nyx」を発表

Concept Nyxで、二人のユーザーが同時にプレイしているイメージ(写真提供:Dell)

 Dellと言えば元々はビジネス向けのPCメーカーというイメージが強いが、2006年にとがったゲーミングPCを作っていた小規模PCメーカーだった「Alienware」を買収して以降、ゲーミングPCにも非常に力を入れており、現在はハイエンド向けのゲーミングPCとしてAlienwareと普及価格帯向けのDell Gのという2つのブランドを利用したゲーミングPCを提供している。

2020年のCESで公開されたConcept UFO

 そうしたDellだが、一昨年のCES 2020では「Concept UFO」という8型のディスプレイを搭載したWindowsベースのゲーミングPCのコンセプトモデルを公開するなど、新しいゲーミングPCの形に関しても積極的に発信しているメーカーでもある。

 Dellは今回のCESに合わせて新しいゲーミングPCのコンセプトとなる「Concept Nyx」を発表した。ゲーミングPC単体のコンセプトというよりは、ゲーミングPCの新しい使い方のコンセプトと言い換えた方が正しいかもしれない。というのも、Concept Nyxを簡単に言ってしまえば、デスクトップPCをゲーミングのサーバーにして内蔵されているdGPUでゲームをレンダリングし、家庭内にあるdGPUを搭載していないデバイス(ノートPC、タブレット、スマートフォン、専用端末)などに対してストリーミングデータとして配信を行なう仕組みになっているからだ。

 こうした仕組みは、Dellが初めて考えたというわけではない。過去にはNVIDIAが同社の専用端末「Shield」向けに同じようなコンセプトの仕組みを提供していたし、ソニーは自社のスマートフォンであるXperiaを、PlayStationのゲームをストリームプレイできるツール「PSリモートプレイ」を提供するなどしており、同種の仕組みはなかったわけではない。

ローカルのゲーミングPCがサーバーになることでクラウドゲーミングの弱点であるレイテンシなどの弱点がなくなる

Concept Nyxでは家庭内に置かれるゲーミングPCから配信する仕組みになる(写真提供:Dell)

 近年ではそうした仕組みに変わって、クラウドゲーミングと呼ばれる、サービスが一般的になりつつある。クラウドゲーミングはクラウドのサーバーにレンダリング用のGPUとゲームデータを置いておき、クラウドサーバー上でゲームデータをレンダリング(描画)し、ストリーミングデータとしてクライアントに対して配信する仕組みになっている。クライアントに対して配信するデータは、動画にすぎないので、それこそYouTubeが再生できるような性能をもっていれば、クライアントのスペックを問わず、つまりdGPUのないノートPCや、タブレットやスマートフォンなどどのようなデバイスでも、高度な3Dグラフィックスを持つゲームをプレイするすることができる。NVIDIAが提供している「GeForce NOW」はその先駆けと言ってよいし、Microsoftが始めた「Xbox Cloud Gaming」などはそうしたクラウドゲーミングの最たる例と言っていいだろう。

 今回Dellが発表したConcept Nyxは、本来はクラウドにあるそのサーバーを、家庭に置いておくゲーミングPCに置き換えたものだと考えればわかりやすいだろう。クラウドゲーミングの場合には、クラウドにあるサーバー上でレンダリングされたデータが動画としてクライアントに配信される。このため、クラウドサーバーとの距離が遠い場合には、レイテンシ(遅延)が発生したりすることがままある。それに対して、Concept Nyxではサーバーはローカルに置かれているので、そうした遅延とは無縁だというのがDellの説明だ。

dGPUを搭載しているノートPCなどでPCゲーミングをプレイすることができる(写真提供:Dell)

 ただし、Concept Nyxは家庭外のクライアントに配信するという機能は現時点では想定されていないようだ。Dellはあくまで家庭内のデバイスに配信と説明しており、そこはクラウドゲーミングとの違いになる。ただ、現時点ではどんなPCゲーミングのタイトルがプレイできるのか、例えばSteamで配信されたタイトルはリモートでプレイできるのかなどに関して具体的な説明はない。

コントローラデバイス(写真提供:Dell)

 DellによればConcept Nyxでは、自室でゲーミングをしているユーザーが、リビングに移動してもそのままPCゲームのプレイを中断したところから再生したり、最大で4ユーザーに対して配信できるため、例えば子ども部屋から子どもがノートPCやスマートフォンでプレイし、親はリビングのRVにつないだ専用端末からアクセスして同時にPCゲームをプレイする、そんな使い方を想定しているということだった。

 なお、今回発表されたConcept Nyxはあくまで「コンセプト」に過ぎず、実際にそうした製品が今すぐリリースされるというわけではない。Dellによれば、顧客などの反応などを見ながら、将来の製品開発に役立てていきたいと説明している。