イベントレポート
ひじょうに困難なフラッシュメモリからのデータ復旧
2018年8月20日 12:52
フラッシュメモリの応用分野に、ドローン(無人マルチコプター)やデジタルカメラなどのデータ格納がある。具体的には、ドローンのカメラやデジタルカメラ(デジカメ)などで撮影した画像を、フラッシュメモリのストレージに保存する。使い方としては、結婚式や卒業式などのイベントを撮影したり、業務用映像の素材となる風景を撮影したり、防犯や犯罪証拠などの目的で監視画像を撮影したり、といったシーンが考えられる。
こういった貴重な画像データが、何らかの理由で失われることがある。たとえばフラッシュストレージをホストマシンが認識できなくなったり、読み出せなくなったりする。そういった不測の事態に対応し、データをフラッシュストレージから取り出すのが「データ復旧サービス」である。
フラッシュメモリ業界における最大のイベント「Flash Memory Summit(FMS)」(会場は米国カリフォルニア州サンタクララのサンタクララコンベンションセンター、会期は8月7日~9日の3日間)ではここ数年、「データ復旧サービス」に関する講演セッションが設けられてきた。今年(2018年)の同セッションでは、データ復旧サービス企業の米DriveSaversが、ドローンとデジカメで不具合が生じたフラッシュストレージから、データを取り出す作業の実例を報告していた。
標準的なドローンは2種類のフラッシュストレージを搭載
DriveSaversは始めに、ドローンのフラッシュストレージからデータを復旧する事例を述べた。ドローンでは、標準的なドローンのフラッシュストレージと、とくにドローン大手DJIが2018年1月に発表した折りたたみ式のドローン「Mavic Air」のフラッシュストレージを、分けて説明していた。
DriveSaversの講演によると、標準的なドローンのフラッシュストレージは、2種類ある。1つは、リムーバブルストレージのSDカードである。SDカードには、ドローンのカメラが撮影した画像を保存する。よく使われるのは超小型のmicroSDカードである。画像データの復旧依頼に対しては、取り出したSDカードのデータ読み出し作業となる。ドローン本体を触ることはない。
もう1つのフラッシュストレージは、eMMCである。本体内部のボードに搭載されている。こちらは、通常は取り外せない。eMMCには、ドローンの飛行に関するメタデータをおもに保存する。
ドローン「Mavic Air」のデータ復旧には本体の分解が必要
折りたたみ式のドローン「Mavic Air」は標準的なドローンと違い、撮影画像の格納にeMMCカードを使う。eMMCカードはドローン本体のボードに搭載されている。したがって画像データの復旧依頼に対しては、ドローンの本体を分解してボードを露出させ、ボードを取り出し、ボードに接着してあるeMMCカードを取り外す必要がある。取り外したeMMCカードに対して読み出しを試みる。講演では、復旧できた画像データの一部を示していた。
デジタルカメラの撮影データ復旧はやさしくない
DriveSaversは続いて、デジタルカメラの撮影データを復旧した事例を紹介した。デジタルカメラでは、撮影した画像データはSDカードあるいはCF(コンパクトフラッシュ)カードに格納されていることが多い。紹介事例は、SDカードをホストマシンが認識しなくなったので、復旧を依頼されたというものだった。
復旧対象のSDカードは、米LexarのSDXCカードで、記憶容量は128GBとかなり大きい。分解すると2枚のフラッシュメモリチップが内蔵されていた。チップの記憶容量は64GB(512Gbit)とみられる。コントローラについては良く分からなかったとう。
SDXCカードを分解して取り出したフラッシュメモリのデータ読み出しを試みたところ、いくつかの大容量動画ファイルが格納されていた。しかも作業中に、動画ファイルが壊れた。壊れたデータの復元には、3日間を要したとする。
講演で強調されていたのは、フラッシュストレージからのデータ復旧は「ひじょうに難しい」ということだ。それでも、人生の重要なイベントや重大事件の証拠などを撮影したデータが復旧できれば、とてもありがたいし、有意義なことだ。フラッシュストレージのデータ復旧サービスは今後、さらに重要性を増していくだろう。