イベントレポート

PUBGとフォートナイトがキラーアプリになりうる「Cortex-A76」と「Mali-G76」

Nandan Nayampally氏

 Armは4日(台北時間)に記者会見を開き、同社VP and GM, Client Line of BusinessのNandan Nayampally氏が、先日発表した新CPUコアIP「Cortex-A76」とGPUコアIP「Mali-G76」を改めてアピールした。

 同社は2017年に“トータルコンピュート”を謳い、CPUのみならずGPUの性能も引き上げていくことを宣言。これに伴って新たに「DynamIQ」プラットフォームを発表。より大規模なマルチコア構成を容易とし、スケーラビリティを引き上げた。その上で、Mali-G72 GPUも投入し、高解像度ゲームやVRにも対応可能とした。

 その一方でセキュリティについてもふれ、Armは数年前からTrustZone技術によりセキュリティ性を高めているという。SpectreおよびMeltdownのような新しいサイドチャネル攻撃に対しては、RTLおよびハードウェアの変更によって対処していくとした。

2017年に投入したDynamIQプラットフォームや、Cortex-A75、Mali-G72など
セキュリティに重視したアーキテクチャ

 今回投入するCortex-A76およびMali-G76では、AI向け機械学習機能をさらに強化し、Cortex-A76(7nmプロセス)ではCortex-A75(10nmプロセス)比で4倍、Mali-G76ではMali-G72比で2.7倍に引き上げた(同じプロセス)。これにより、AIアプリケーションや物体認識なおを、より多くのメインストリームに届けられるという。

 Cortex-A76は、7nmプロセスを使用すれば3GHz超のクロックを実現でき、性能密度を30%、電力効率を30%改善。16nmで製造されるCortex-A73と比較して、2倍の性能向上を実現できる。いまx86プロセッサの性能向上は停滞しているが、Armの性能向上はムーアの法則を超えたものだとアピールした。

 Mali-G76についても、同じプロセスルールのMali-G72と比較して性能密度を30%、電力効率を30%改善できるとした。

 同時に発表された「Mali-V76」ビデオプロセッサでは、8K60pの動画を再生可能で、高解像度のVR/ARアプリケーションに応用できるとした。

 Cortex-A76、Mali-G76、Mali-V76は、プレミアムなスマートフォンやラップトップの性能を押し上げるとし、搭載製品は2019年に登場する見込み。Androidのみならず、Windowsを搭載した高性能モバイルノート製品も実現でき、いま市場にあるx86のノートPCと比較して長いバッテリ駆動時間やスタンバイ時間を実現できることをアピールした。

Cortex-A76とMali-G76の発表
イノベーションは成長をもたらす
Armプロセッサの累計出荷数は2017年で213億に達した
2026年まで成長が継続する
5GやAR/VR、AI、ハイエンドゲーミングなどが需要をけん引する
Cortex-A76の性能
Cortex-A73と比較して2倍性能が向上し、ラップトップクラスの性能を実現
Mali-G76の性能
Mali-G76のアーキテクチャ
8K60pの再生を可能にするMali-V76
アーキテクチャの例

PUBGとフォートナイトは今後のキラーアプリ

 ただ、いくらCortex-A76やMali-G76が機械学習向けだと言っても、コンシューマにそのメリットが下りてくるのはまだ少し先の話である。Nayampally氏は説明のなかで、もっともわかりやすい「ゲーミング」を話題に挙げた。

 同氏によれば、ゲーミングはいま中国や日本で大きな需要があるとし、こと2017年半ばに登場したバトルロイアル形式のTPSゲーム「PUBG」と「フォートナイト」により、ゲーム人口は爆発的に増えた。

 また、ZTEやXiaomi、Razerといった大手メーカーも、ゲーミングに特化したスマートフォンを投入している。モバイルのゲーミングは、2021年までに1,000億ドル規模の市場になる可能性を秘めている。ここに対してもArmは高性能CPUとGPUをアプローチしていく見込みだ。

 折しも、Armの記者会見のあとに同じホテルの隣の部屋で開かれたNVIDIAの記者発表会でも、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「PUBGおよびフォートナイト効果で、この8カ月でゲーミングユーザーは1億人増えた」(GeForceユーザーのアクティブ数の推移より集計)と明らかにしている。いまや半導体メーカーにとって、PUBGとフォートナイトは、高性能プロセッサのキラーアプリになったことがわかる。

モバイルゲーミング市場の拡大
MaliのGPUを採用するSamsungもMaliの性能向上を歓迎する
これからのニーズに応えるCortex-A76とMali-G76
コンソールゲーム機並みの性能の実現など