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イグアス、パーソナル3Dプリンタ「Cube」を販売開始

~重さ4.3kgのコンパクトでポップなデザイン、本体色も5色用意

6月14日 開催

 株式会社イグアスは14日、3DプリンタショールームCUBE(東京都渋谷区)において、パーソナル3Dプリンタ「Cube」の内覧会を開催した。

イグアス代表取締役社長の矢花達也氏

 CUBEは、2012年10月に開設され、延べ1,500名が訪れているという。2012年あたりから、Makerbotの「Replicator」やホットプロシードの「Blade-1」など、十数万~数十万円で購入できるパーソナル3Dプリンタが続々登場し、話題を呼んでいるが、今回、イグアスが販売を開始するCubeも主に個人をターゲットにしたパーソナル3Dプリンタである。同製品は、米3D Systemsが開発した製品であり、米国ではすでに販売が開始されている。イグアスは、4月にCubeの取り扱い開始を発表しているが、この度、受注の準備が整ったということで報道関係へのお披露目が行なわれた。

 最初に、イグアス代表取締役社長の矢花達也氏が、3Dプリンタ市場の動向についてプレゼンを行なった。それによると、業務で使われる中型機以上の3Dプリンタの市場規模は、年間1,800~2,000台程度であり、3D SystemsとStratasysの大手2社でそのほとんどを占めている。今回、販売を開始するCubeは業務用とは別のカテゴリの製品なので、台数ベースでの市場規模は数倍になるとの見解を示した。Cubeの今期の販売目標は700台程度。

ABSとPLAに対応し、マテリアルは各16色を用意

 続いて、イグアス3Dシステム部長の上野一弘氏が、Cubeの製品概要やビジネス展開について語った。

 Cubeは、3D Systemsの3Dプリンタラインナップの中では、もっともローエンドに位置する製品であり、同社が「PJP」(Plastic Jet Printing)と呼ぶ方式を採用している。PJPは、糸状のプラスチック(フィラメント)を熱で融解し、積み重ねていく方式で、FDMとも呼ばれる。低価格なパーソナル3Dプリンタのほとんどが、この方式を採用しているが、Cubeはコンパクトで軽く、デザインも洗練されていることが魅力だ。

 本体サイズは、260×260×340mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.3kg。上野氏によれば、大手3Dプリンタメーカーが製造している3Dプリンタとしては、現時点で世界最小という。本体色が豊富に揃っていることも特徴だ。ホワイト、グリーン、マゼンタ、シルバー、ブルーの5色が用意されているので、自分の好きな色を選べる。価格は168,000円。

 最大造形サイズは140×140×140mm(幅×奥行き×高さ)で、積層ピッチは0.2mm、プリントヘッド温度は最大280℃、サポート除去方法はブレークアウェイ方式(サポート材と構造材が同じ材質で、手で取り外すタイプ)。利用できるマテリアル(材料)は、ABSまたはPLAで、マテリアルはカートリッジ方式になっているので、取り換えが簡単。マテリアルの色は、ABS、PLAともに16色ずつあり、蛍光ブルーといった珍しい色も用意されている。1カートリッジあたりの価格は6,300円と比較的安い。1カートリッジのマテリアルの重量は未計測だが、iPhone用カバーなら15個くらい作れるという。

 造形データファイルの転送は、USBメモリまたはWi-Fi経由で行なうことが可能であり、PCとケーブルなどで接続する必要はない。STLファイルから造形ファイルへの変換は、専用ソフトウェア「Cube Software」を利用する。Cube Softwareは、WindowsとMacに対応しており、現在は英語版だが、マニュアルは日本語化されたものが付属する。

 操作はタッチパネル液晶で行なう。導入時のトレーニングは不要で、誰でもすぐに使い始めることができるとのことだ。動作音もかなり小さく、家庭で使っていても気にならないレベルだ。

イグアス3Dシステム部長の上野一弘氏
3D Systemsの3Dプリンタラインナップ。用途や価格に応じて7つの技術が使われている
7つの技術の詳細。今回発表されたパーソナル3Dプリンタ「Cube」は、PJPと呼ばれる技術を採用。PJPは、プラスチックの細いフィラメントを熱で溶かして積層していく技術で、FDMとも呼ばれる
Cubeの主な特徴と仕様。インターフェイスは、USBメモリまたはWi-Fiを利用する。積層ピッチは0.2mmで、造形サイズは最大140×140×140mmである
Cubeのターゲット市場。基本的にはコンシューマをターゲットにするが、SOHOやデザイン分野、学校・教育機関なども視野に入れている
ホワイト、グリーン、マゼンタ、シルバー、ブルーの5色が用意されている
専用ソフト「Cube Software」によって、STLファイルをCube用造形データファイルに変換する。Cube Softwareは、今のところ英語版のみだが、マニュアルは日本語化されたものが付属する
造形データファイルを入れたUSBメモリをUSBポートに差し込み、タッチパネル液晶を利用して、操作する
タッチパネル液晶にファイル名などの情報が表示される
Cubeでの造形の様子。モデリングベースはガラス製で、剥離しやすいようにノリを塗ってその上に造形を行なう
こちらは緑色の樹脂で造形しているところ
Cubeでの造形サンプル
こちらもCubeの造形サンプル
塔の中にはらせん階段がある。この塔は40分程度で造形が完了するとのこと
漢字を造形したところ。ピンクの字の下の網目はサポート材代わりの部分で、造形後カッターなどを使って取り除く
【動画】造形中の様子。左にある丸い部分が、マテリアルのカートリッジである。動作音はかなり静かで、家庭に置いても気にならないレベルだ
【動画】造形がかなり進んだところ。小さなフィギュアを造形している

 Cubeは、6月下旬から予約を開始し、出荷もほぼ同時期に可能になる予定。主なターゲットは、コンシューマだが、SOHOやデザイン事務所のほか、学校/教育機関や一般企業も視野に入れている。当初の販路は、コンシューマやSOHO、デザイン事務所向けがFabcafe店頭およびCube専用サイト(現在作成中)、学校/教育機関や一般企業向けが、ケイズデザインラボをはじめとするパートーナーとのことだが、ゆくゆくは家電量販店などでも、コンシューマ向けに販売していきたいとのことだ。

 また、Cube専用サイトを構築し、FAQを含むサポート情報やコミュニティサイト機能を提供するほか、Cubeを実際に試してみたいという人向けにCube時間貸しサービスを有償で行なうことを検討している。

 さらに、Cubeの上級機である「Cube X」も、Cubeと同時期に予約を開始し、7月~8月にかけてショールームに実機を展示する予定。Cube Xの価格は40万~50万円程度で、Cubeよりも造形サイズが大きく、積層ピッチを0.5/0.25/0.1mmから選択できる。また、シングルヘッドモデル以外にダブルヘッドモデルやトリプルヘッドモデルも用意されており、ダブルヘッドでは2色、トリプルヘッドでは3色のマテリアルを同時に使った造形が可能だ。

 なお、3DプリンタショールームのCUBEには、今回発表されたCubeはもちろんのこと、業務用3Dプリンタや全身のスキャンが可能な大型3Dスキャナなどが設置されており、実際に動作している様子などを見ることが可能だ。

2012年10月に、イグアス、ケイズデザインラボ、FabCafeの3社が、3DプリンタショールームCUBEを開設した
CUBEの様子。なお、ショールームの名前もCUBEだが、3Dプリンタの名前の「Cube」とは関係がなく、たまたま一致したとのこと
CUBEには、3D Systemsの業務向け3Dプリンタ「Projet 3500」や「Projet 1500」、「V-Flash」、breuckmannの3Dスキャナ「bodySCAN3D」や「smartSCAN3D-HE」などが設置されている
Cubeのビジネス展開。Cube専用サイトを構築し、オンラインでの購入のほか、サポート情報やコミュニティサイト機能を提供する
今後、ものづくり体験サービスとして、Cubeの時間貸しサービスを行なう予定
CUBEに設置されている、MJM方式を採用したプロフェッショナル3Dプリンタ「Projet 3500」
こちらはパーソナル3Dプリンタの上級機「V-Flash」。感光性樹脂を利用するFTI方式を採用する
武藤工業のパーソナル3Dプリンタ「3D TOUCH」。シングルヘッド仕様からトリプルヘッド仕様までラインナップが揃っている
全身を6秒間でスキャンが可能な3Dスキャナ「bodySCAN3D」も設置されている

(石井 英男)