マイクロソフト、ITを活用した若者の就労支援プログラムの提供を開始

マイクロソフトがグローバルで提供するコミュニティITスキルプログラム

12月4日 発表



 マイクロソフト株式会社は、無業状態にある若者の就労を支援するために、2010年1月から「ITを活用した若者就労支援プログラム」を開始する。

 日本における雇用状況は経済環境悪化により深刻化し、特に無業の状態にある15歳~39歳の若者は、総務省の平成20年度労働力調査で84万人と算出されている。厚生労働省は、若者の職業的自立を支援する事業として「地域若者サポートステーション」を展開。地域のNPO法人など若者支援機関が運営を担当し、無業の状態にある若者とその保護者に対し、専門的な相談、各種プログラム、職場体験、地域ネッワークを活用した支援など、多様な就労支援メニューを提供している。

 今回、マイクロソフトが地域若者サポートステーションを受託するNPOと連携し、2010年1月から2011年12月末までの2年間、就労に役立つITスキルと、ITスキル習得によって若者たちの自信を醸成することで、就労に導く。

 連携するサポートステーションは、初年度は首都圏5箇所、次年度は全国20箇所に拡大し、2年間で6,000人の若者がプログラムを受講する見通しだ。

 「マイクロソフトでは、グローバルで『コミュニティITスキルプログラム』を展開。日本でも2003年から14個の個別プログラムを提供しており、18,000人が参加している。その中で若者の就労が大きな問題となっていることを実感し、ITを活用した若者就労支援プログラムを提供することになった」(マイクロソフト 法務・政策企画統括本部長 伊藤ゆみ子執行役)。

マイクロソフト 執行役 法務・政策企画統括本部長 伊藤ゆみ子 氏今回のプログラム実施体制

 若者はPCをはじめとしたITツールの利用には長けているとの印象もあるが、ニートなど無業の若者の中にはPCを触ったことがない人も多いという。

 今回、マイクロソフトに協力している、地域若者サポートステーションを受託するNPO法人 育て上げネットの工藤啓理事長によれば、「我々がステーション運営を行なっている立川での実例では、登録者1,000人のうちPCに触ったことがない若者が20%、触ったことはあるがメールとホームページしか使ったことがない若者が50%を占めた。合計7割の若者が専門的なITスキルはもちろん、就職の最低条件となるWord、Excelを利用した経験がない。今回のITスキル講習を受け、即就職できるということにはならないかもしれないが、ITスキルがない若者は選択肢が狭まり、このままだと彼らの仕事はITとは離れた仕事に就くしかない。そういう若者の可能性を広げたい」と実態を説明する。

サポートステーションを運営するNPO法人 育て上げネット 工藤啓理事長今回提供するITを活用したプログラムの概要
今回提供するプログラムの具体的な内容今回のプログラムの目標

 そこで今回のプログラムは、マイクロソフトがソフトや運営資金を提供し、プログラムマネジメント、アドバイスなどを実施しながら、地域若者サポートステーションを受託するNPOのスタッフをITスキル講習の講師として養成する。マイクロソフトから講師を派遣しないのは、継続的にサポートステーションのスタッフがITスキル講習を行うノウハウを蓄積していくためだ。

 最初の1年は、たちかわ若者サポートステーション、みたか地域若者サポートステーション、あだち若者サポートステーション、よこはま若者サポートステーション、かわぐち若者サポートステーションの5箇所で実施。次年度の全国展開では、参加するサポートステーションを公募する。各地域若者サポートステーションで就労支援とITスキル講習を組み合わせて実施。さらに、ポータルサイトを開設し、コンテンツを広く一般に公開していくことも計画している。

 提供するITスキルは、講習1:Word/Excel/PowerPointを活用した文章作成、講習2:Accessを活用したデータ管理、講習3:Webサイト構築を予定している。さらに、就労支援として、キャリアカウンセリング講座、コミュニケーション講座を提供し、個別相談やテーマ別ワークショップ、職場体験などの就労支援の提供も計画している。

 プログラムを実施する2年間に、支援対象の「地域若者サポートステーション」25箇所でITスキル講習の受講者の30%が受講後6カ月の時点で、就労もしくは職業訓練校等に移行することを目標とする。プログラム受講人数としては、2年間でITスキル講習受講者6,000人、ポータルサイトを通じたコンテンツを75,000人が利用することを想定している。

 マイクロソフトの樋口泰行社長は今回のプログラム提供の意義を次のように説明する。

 「経済環境の厳しさが続き、経済が底を打ったといっても円高も厳しく、株価も戻ってこないということで明るい話があまりない状況が続いている。若者が生き生きと働き、将来の日本を支える気概を持っていくことができなければ、国として良い状態とはいえない。現在の日本の問題として若者の就労問題があり、やる気はあるが就労機会に恵まれない、スキルを身につける機会に恵まれない方がたくさんいると聞いている。昔なら“自分で這い上がってこい”というのだろうが、それだけでは解決できない事情もある。我々も得意分野であるIT技術を活用することで、社会にお返しできる機会と考え、若者の就労支援のお手伝いを行なっていきたい」。

マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行 氏マイクロソフトコーポレーション コーポレーションバイスプレジデント グローバルコーポレートアフェアーズ担当 パメラ・パスマン氏勢揃いした今回の発表会の参加メンバー

 今回の発表にあたり、米Microsoftで活動を管轄するコーポレートバイスプレジデントのパメラ・パスマン氏が来日し、同社がCSRに取り組む背景を説明した。

 「昨日(12月3日)、日本経団連において当社がグローバルに進めるCSR活動についてお話しする機会を得た。さらに夜は、米国の商工会議所にあたるACCJ発行の最新エコノミーに関するホワイトペーパーをベースとした勉強会に参加することができた。その際、わかったのは、現在の経済状況がさまざまな側面で日本企業に影響を与え、それが国民の皆さんにも影響を与えていること。ただ、これは日本だけの状況ではなく、米国、ヨーロッパなど世界中で同じ状況が起こっている。マイクロソフトのミッションは、人々、企業、組織にフルな潜在性を発揮するためのお手伝いをすること。革新的なソフト、サービスなどを提供することで会社として成長してきた。我々のソフトをはじめとした技術は、地域社会が大きな力を発揮するためのパワーとなる。本日発表するのは、日本のための就労支援プログラムを、パートナーとともに日本政府の政策ときちんと歩調を合わせ、このプログラムを進め、目標として21世紀の仕事場に求められる最新ITスキルを若者の皆さんに身につけていただきたい」。

(2009年 12月 4日)

[Reported by 三浦 優子]