マイクロソフト、若年ニート女性向けのPC教室を公開

6月30日に実施された「パソコン+しごと準備講座 実践編 オンラインサービスを使ってみよう」

6月30日 実施



若年ニート女性向け講座が開かれている横浜市男女共同参画センター

 マイクロソフト株式会社は6月30日、横浜市と共同で行なっている、「若年ニート女性の就労支援」のためのPC勉強会を公開した。

 若年ニート女性の就労支援活動は、2009年4月からスタートした「IT活用による女性の就労支援3カ年計画」の一環として行なわれているもの。従来から行なわれてきたDV(ドメスティックバイオレンス)被害女性やシングルマザー向けのPC活用講座に加え、農業女性の起業支援と共に2009年4月からの新規支援活動として実施されている。

財団法人 横浜市男女共同参画推進協会 事業企画課 小園弥生氏

 今回、全国に先駆けて若年ニート女性向けの講座開設を行なった財団法人横浜市男女共同参画推進協会の小園弥生氏は、講座を開設した背景を次の様に説明する。

 「働くことを前提としている男性に比べ、引きこもりになっている女性は『家事手伝い』とカウントされてしまうため、これまで実態が隠されてきた経緯がある。しかし、実際には男性同様、大学を卒業したものの就職氷河期に直面し、就職が出来ずに派遣やアルバイトによる労働を繰り返した結果、スキルが全く身についていない人も多く、さらになんらかの問題を抱えているため仕事に就くことができない女性も大勢存在する。その実態を示す調査データも一切なかったため、昨年(2008年)の10月に調査を実施。その結果、ニート女性向け支援の必要性が明らかになった」。

 横浜市男女共同参画推進協会では、2008年10月に若年女性ニートの実態を「若年女性無業者の自立支援に向けた生活状況調査」として調査レポートをまとめた。その結果、全く働いた経験がない人は少なかったものの、正社員になる機会に恵まれず派遣業務やアルバイトによる就労を繰り返している人や、精神的や肉体的な問題を抱えている結果、働くことができない人の存在が明らかになった。

 マイクロソフトでは、企業市民活動の一環として、それまでITを利用する機会が少なかった人を支援する「コミュニティITスキルプログラム」を実施し、2006年からは「女性UPプログラム全国版」を展開。ソフトウェアの提供や講師の派遣といった支援を行なっている。この活動の中で若年ニート女性の存在を知って、今年から支援活動を開始した。

マイクロソフト 法務・政策企画統括本部 政策企画本部 社会貢献部 社会貢献コーディネーター 田仲愛氏

 「これまでにもDVに悩む女性の支援や、シングルマザー支援など女性向けの支援活動は行なってきた。しかし、日本の若年層の方はすでにITスキルを持っているため、支援の必要はないと考えていた。だが、実際には仕事でPCを使った経験がなく、携帯電話ではメールは頻繁にやり取りしているものの、PCではメールを打ったことがないという人が存在していることが明らかになった。こうした女性向けの支援も重要な活動だと認識するようになった」(マイクロソフト 法務・政策企画統括本部 政策企画本部 社会貢献部 社会貢献コーディネーター・田仲愛氏)。

 横浜市が行なっている講座は、「ガールズ編 パソコン+しごと準備講座」の名称で、15歳から35歳までのシングル女性を対象としている。チラシをハローワークや若者サポートステーションなどで約300枚配布し、新聞や横浜市の広報誌で告知したところ、32人から応募があり、現在は20人が参加している。

 講座の内容は仕事で役立つ実務というよりは、「しごと準備講座」とタイトルにあることからもわかるように、Word、Excelといった基本的なソフトの操作方法、ビジネス用メールの使い方といったPCの基礎知識の勉強がメインとなる。

 「就労する場合、PCは筆記道具と同様に使えることが前提となっている。基本的なPCの使い方を覚えることで、自分には出来ることがあると自信を取り戻し、就職活動の際に必要な履歴書をPCで作るといったことができるようになることを目指している」(財団法人横浜市男女共同参画推進協会・小園氏)。

マイクロソフトのスタッフが講師となったオンラインサービスの使い方講座では、Windows Liveを活用したオンラインアルバム、ブログなどの利用方法が紹介された

 PCの基本的な操作方法のガイド以外にも、要望が多かったメイク講座、履歴書の書き方、心を安定させるための呼吸法の講座なども開かれている。

 6月30日には、マイクロソフトの社員によるWindows Liveの使い方講座が開かれた。これは個人の生活でもPCを利用することで、よりPCの習熟度を高くしていくことが狙いとなっている。

 ほとんどの参加者は自宅にPCは持っていないものの、携帯電話でmixiのようなSNSサービスを利用している人が多く、講座終了後もブログの利用法などを質問する参加者が後を絶たなかった。

 マイクロソフトでは横浜市で実施した成果をもとに、今後は他の地域でも同様の若年ニート女性向け講座の開設を計画している。

 「我々の女性のためのUPプログラムの最大の特徴は、支援活動スキルをきちんと残していくことで、我々の支援がなくなった後でも、各地域で自主的に活動が行なわれていくサスティーナブルさ。若年ニート女性向け支援活動も、来年度からは実施地域を拡大していきたい」(マイクロソフト・田仲氏)としている。

(2009年 6月 30日)

[Reported by 三浦 優子]