ニュース
フィジカルAIで広がるロボット応用。そしてAI導入の障壁を解消する「NemoClaw」とは
2026年7月21日 17:10
NVIDIAは7月15日、東京都内でNemoClawをテーマとしたプライベートイベント「Build-a-Claw-Tokyo」を開催した。イベントでは、NemoClawを活用している事例について多数展示されたほか、基調講演が行なわれ、AI技術の現在地およびNVIDIAが提供しているソリューションについて解説が行なわれた。
基調講演の冒頭では、エヌビディア生成AIシニアデベロッパーリレーションズマネージャーの田仲顕至氏がAIの現在地とトレンドについて紹介。2022年にChatGPTが登場したのだが、2025年にはDeepSeekのリーズニング技術の登場し、ツールユースが可能になり、2026年にはそれらをさらに進化させるAIエージェントへと進化したことを振り返った。
ChatGPTのようなチャットボットも現在のAIエージェントも、裏では同じLLMが動作している。しかし大きな違いは駆動時間だ。チャットでは入力から1発出力を得るだけだったが、AIエージェントではハーネスによって入力と出力をつなげ、両輪で回り続けることで、長時間働き続けることができるのだ。
そしてこのエージェント、もちろんすでにCodexやClaude Codeのような既製品があるのだが、OpenClawはオープンソースのため、「手元で作れるのが最大の魅力」だと説明。そしてそれをさらに手軽に、かつセキュアに実行させるのがNVIDIAのNemoClawであると紹介。コマンド1つでエージェントだけでなく、必要なスキルやオープンなローカルモデルをインストールでき、話題の「/goal」といったコマンドも利用できるとアピールした。
一方、そのバックグラウンドで動作するモデルとしてNemotron 3シリーズがあるのだが、中でも最上位のUltraはエージェント用の550Bモデルとしてはフロンティア級の性能を持ち、賢いだけでなく、NVIDIAのGPUと親和性が高く経済性がよいといった特徴を持つ。特にエージェント用途においては、賢さだけでなく効率性も重視する必要があるのだが、Nemotron 3 Ultraは1時間あたり出力できるトークン量が中華系のモデルの5倍に達するため、タスクをより高速に完遂できることを紹介した。
また、プロンプトの追従性を高くすると、プロンプトインジェクションによるジェイルブレイク(脱獄)の危険性が高まるわけだが、これに対応するためNemoClawではOpenShellというランタイムも同時にインストールされる。OpenShellでエージェントをまず囲って、ホワイトリスト形式で動きを制御することで確実な挙動を実現し、企業のガバナンスに適合できる。
さらに、クラウドモデルと同時に動かすこともできるため、たとえばClaude Codeの賢さを使ってプランを立ててからローカルでそのプランに従って実行するといった使い方が可能である点もメリットだと語った。
フィジカルAIが日本で効く
続いて、同社ロボティクスデベロッパーリレーションズシニアマネージャーー/博士(工学)の荒井謙氏が登壇し、AIエージェントによってフィジカルAIが実現する可能性について語った。
言うまでもないが、日本はロボット技術もっとも進んだ国であり、自動化が得意分野でもあった。しかしその動きは固定であり、これまではプログラミングをする必要がありハードルが高く、応用範囲も狭かった。
これがフィジカルAIにより、「ジェネラリスト」と「スペシャリスト」を両立できる。つまり高精度を維持しつつ、さまざまな局面に柔軟に対応できる。自動運転、インフラ、ヘルスケアといった幅広い分野に応用可能になる。
その中でも欠かせないのが、ロボットに動きを学習させるための環境のシミュレーションだ。Webで広く使えるデータは大量にあり、コストは安いが、そのまま実運用に適用できるかどうか疑問符がつく。一方リアル環境のデータは少量でコストも高い。
そのためリアルなシミュレーション環境が代替手段となるわけだが、これに対しNVIDIAはフィジカルAIの構築、テスト、検証のためのオープンソースオーケストレーションフレームワークの「OSMO」を用意し、開発者が容易に開発できる環境を整えていることをアピールした。
さらに、シミュレーション用プラットフォームである「Omniverse」、ロボットのシミュレーションと合成データ生成を行なう「Isaac Sim」、そしてロボット学習およびポリシー学習のためのオープンソースフレームワーク「Isaac Lab」といった、仮想空間での一貫した学習・検証パイプラインを構築。これにより、コストの高い現実世界でのデータに依存せず、リアルな仮想環境でのシミュレーションが可能になる。
また、ロボットの脳や動作の制御を担うAIモデル群も充実させた。フィジカルAIのための世界モデル開発プラットフォームである「Cosmos」は、単一のモデルで推論、データ生成、予測、ロボット動作のポリシー決定といった複数の役割を果たす。
さらに、ヒューマノイドロボット基盤モデルの「Isaac GR00T N」や、テキストからロボットのモーションを生成できる「Kimodo」、1億フレーム以上の人間動作データから学習された全身制御型汎用基盤モデルの「SONIC」も提供している。
これらに加え、ライブカメラとビジョンAIを組み合わせて動画分析AIエージェントを構築する「NVIDIA AI Blueprint for Video Search and Summarization(VSS)」プラットフォームや、工場のシステム連携からAIモデルの構築・運用までを網羅する「NVIDIA Factory Operations Blueprint(FOX)」までを提供しており、工場のAI自動化も支援できる。
このように、NVIDIAはフィジカルAIのシミュレーション環境や基盤モデル、そして開発を迅速化するツール群まで、ロボティクス実用化に必要なあらゆる要素技術を垂直統合して提供しており、開発者が容易かつ迅速にフィジカルAIを構築できる体制を強力に支援しているとアピールした。
日本企業でAIエージェントの導入が進まないワケとその対策
講演会の最後はフィックスターズの佐藤瑶氏が、企業のAIエージェント導入におけるハードルとその解決策について講演。企業がAIエージェントを導入するにあたって、多くが「デモ」で終わってしまっているという切実な課題を挙げ、そのキーワードとなるのが「信頼性」であるとした。
というのも、同氏は実際に社内のAIエージェントをテストする際に、何気に「~のAPIキーはどこにある?」と尋ねたところ、「.envファイルの100行目に〇〇……と書いてあるが、セキュリティ上全文はお見せできない」といった趣旨の回答が得られたという。この1を聞いて10を答える「賢さ」が、そのまま業務に展開した際にリスクになりかねないと危機感を覚えたという。
そのため、「定義されたルールや手順に沿って確実にタスクを実行するワークフローAIが進化したのがAIエージェントだ」と考えるのではなく、必要に応じて使い分け、統合させることが重要だと説明。
ワークフローAIは画一的な基準で効率よく処理できるのだが、最終的な判断は人に依存してしまう属人性があるほか、暗黙知――つまり非言語化情報の活用が困難である。一方AIエージェントはユーザーの意図を理解し、必要なタスクへ分解することで属人性の壁を超え、以前のセッションから得た知見を次に活かしたり、ユーザーの修正行動や振る舞いから暗黙のルールを抽出してナレッジとして可視化することで暗黙知の壁を超えられる。
そこで、柔軟な作業が行なえるAIエージェントにまずユーザーの意図を理解させてタスクを処理させてから、特に不可逆性や対外性のある操作などの承認や修正のみ人間が行ない、そのあとにワークフローAIで処理させるというように、役割分担によって確実性と柔軟性を両立させるのが最適解であるとした。
また、初めてAIを導入するといった理由で、自社でAI導入によるリスク評価ができない企業に向け、同社はGRCSと共同開発した統合リスクマネジメント(ERM)プラットフォーム「GRCS ONE」を用意していると紹介。また、NVIDIAのNemoClawについても触れ、「想定外を想定した設計」を採用しているのが特徴であり、OpenShellでAIエージェントを隔離させ、任せる範囲を限定してシステムを設計することが可能だと語った。






































































