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パナのPC事業、サプライチェーン改革で納期回答90%改善。レッツノート30周年支える
2026年7月21日 06:21
パナソニック コネクトグループは、レットノートおよびタフブックによるパソコン事業でのサプライチェーン改革の取り組みについて説明した。同社の子会社であるBlue Yonderを活用することで、プロセスの複雑化などが原因となり、パソコン事業の成長の足かせとなっていたサプライチェーンを改革。納期回答の短縮、在庫の適正化、業務効率化などに大きな成果をもたらしている。同社モバイルソリューションズ事業部におけるサプライチェーン改革の取り組みを聞いた。
パナソニック コネクトグループ モバイルソリューションズ事業部は、国内ウルトラポータブルPC市場でトップシェアを誇る「レッツノート」、堅牢ノートPC市場において、24年連続でグローバルシェアナンバーワンを獲得している「タフブック」、国内シェアでトップとなっている「決裁システム端末」などの事業を担当している。
パナソニック コネクトグループ モバイルソリューションズ事業部デジタル戦略部シニアマネージャーの阿部香織氏は、「ミッションクリティカルを支えるハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供しているのが、モバイルソリューションズ事業部である。お客様からは、それぞれの業界の特性にあわせた製品構成に対する柔軟性が求められているほか、短納期であり、要望にあった日程で確実に納品することが求められている」と前置きし、「従来は、需要予測の多くを、営業からの情報に依存していた。また、季節性や製品ライフサイクルの影響は限定的である一方で、さまざまな部品やオプションの組み合わせが可能であるという特徴を持つ。それが、サプライチェーンの複雑化を招き、意思決定の遅れに直結していた」と振り返る。
サプライチェーンの複雑化による意思決定の遅れ
発注から納品までのリードタイムが長く、納期回答の信頼性が低いこと、需要変動により、需給のミスマッチが頻繁に発生し、過剰在庫が発生したり、欠品が発生したりといった状況が繰り返されていたこと、生産計画などに関する重要な意思決定が、システムの外で構築されている表計算ソフトや、人の経験に頼っていたことで、作業が繁雑化しているといった課題があった。
「迅速で信頼性の高い意思決定と、納期回答の自動化を可能にする仕組みへの移行が必要だった。需要計画から納期回答までをつなぐ、グローバルなエンドトゥエンドの計画プロセスを構築することを目指した」とする。
これらの課題を解決するために、モバイルソリューションズ事業部では、2018年度から、新たなシステム構築に向けて検討を開始し、2020年度から米国の販売会社でBlue Yonderを先行導入。2025年度には、日本および欧州でも、Blue Yonderの導入を完了した。また、2024年度には、モバイルソリューションズ事業部にデジタル戦略部を設置。パソコン事業や決裁端末事業を対象としたDXも同時に推進してきた。
Blue Yonderは、1985年にJDA Softwareとして設立した企業で、2020年にBlue Yonderに社名を変更。2021年にパナソニックコネクトが子会社化している。サプライチェーンマネジメントソリューションの企業としてグローバルに展開。パナソニックグループが、成長戦略の1つに位置づけるソリューション領域の中核事業である。これを自らが導入して、事業改革につなげた事例だといえる。
米国での先行導入で直面した「混乱期」
2018年度からスタートした第1フェーズでは、米国の販売会社において、納期の自動化に着手。第一歩として、需給のマッチング率を高めるために、品番数の適正化を実施。販売量に対する変動性を分析したところ、米国で販売しているタフブックの全品番の14%だけで、売上高の85%を占めていることが分かったという。そこで、品番数を88%削減することを決定したという。
また、4つの生産拠点と、5つの地域に分散していた地域コンフィグレーションセンターの体制を見直し、工場を神戸および台湾の2カ所に集約するとともに、コンフィグレーション作業もこれらの生産拠点で実施。在庫削減や輸送コストの削減、リードタイムの短縮を実現し、総在庫金額を下げながら、需要変動に対応するための安全在庫を適正量で確保。顧客への対応やサービスレベルを維持することを目指した。
ここでは、輸送リードタイムは9日間から2日間へと短縮し、地域コンフィグレーションセンターの在庫は47%削減する見通しを立てた。
だが、フェーズ1の導入においては、「混乱期」があったことを明かす。
「マネジメント変革、業務プロセス変革、システム導入という順番で推進していくことを考えていたが、結果として、変革が後回しになってしまった。高度なシステムの導入によって一定の効果はあったが、個別業務の最適化が優先され、全体最適化には至らなかった」と反省する。
そして、「計画担当者は、計画を作成することよりも、データの修正に多くの時間を費やしており、システム導入後も手作業が継続していた。システムが生成したデータを人が信頼していなかったり、システムのロジックが理解されていなかったりしたため、全体への影響を理解しないまま、データが人手によって上書きされ、それによって、多くの課題が隠され、業務プロセスの改革が先送りになってしまった」とも語る。
「混乱期」を生み出した原因は、システムの課題ではなく、マネジメント変革が不十分であったことに気がついたという。
導入初期の課題として、「システムに対する理解不足」「業務プロセス改革よりも、システム導入を優先したこと」に加えて、ゴールが見えない状況が生まれ、現場では当事者意識が欠如し、「従業員のモチベーションが低下する」という事態も招いていた。
「システムだけでは、事業は変わらないということを自ら体験した」と振り返り、「いままでの文化を変え、開発、製造、販売のすべてにおいて、改革することで、初めてシステムの効果が発揮できる」と、失敗からの学びを示す。
データへの信頼がシステムの価値を決めること、プロセスはシステムより先に変える必要があること、ツールを変えることが優先ではなく、意識、行動、文化をマネジメント主導で変えることが重要だと学んだという。
2020年度からの混乱期は、新たなシステム導入において成果があがらないという混乱だけでなく、コロナ禍でのサプライチェーンの混乱も重なった。
「システム改善」ではなく「事業運営の再構築」へ
モバイルソリューションズ事業部では、2023年度から、ゼロベースでのシステム再構築に乗り出し、事業運営そのものの見直しも開始した。同社では、これをフェーズ2と位置づけた。
フェーズ2では、「システム改善」ではなく「事業運営の再構築」を重視。経営層自らが、主体的にマネジメント改革を推進し、ラウンドテーブルやワークショップ、タウンホールミーティングを通じて改革の必要性を社内にアピール。社員の当事者意識を醸成するため、全部門において、理想のTo-Beプロセスを再定義するとともに、運用ルールを策定したという。
新たな運用ルールでは、「決めたことは守る」「システムが示す数値を信じよう」「数値の変更は議論して決めよう」とし、データ起点の事業運営を徹底した。
同時に、レッツノートやタフブックの製品設計そのものを見直すことにも着手した。
たとえば、レッツノートの最新モデルである12.4型の「CF-SC7」、13.3型の「CF-NC7」、14.0型の「CF-FC7」は、画面サイズに関係する部品や筐体部品を除いて、ハードウェアやソフトウェアの「互換性」を確保。基板ユニットやバッテリなどの主要部品はすべて共通化している。これも、事業運営の再構築の1つであり、新たなシステムの成果を最大化するという点で効果をあげている。
「ユニークな仕様による差別化と競争優位性を維持しながら、製品全体での共通設計や部品の共通化を図り、オペレーション効率を高めた。共通設計とともに、明確なシステム運用ルールを用いたことで、社員の考え方も変わった。部品調達に対する姿勢は、在庫を減らすという考え方から、共通化した部品を、需給変動を想定した戦略在庫として確保するという発想に変わってきた」とする。
従来の仕組みでは、供給や需要予測に課題が発生した際に、事業部/工場、販売会社、IT部門のどこに責任があるのかが曖昧であったが、フェーズ2以降は、それぞれが同じデータを見て、協働することができるようになったという。
「かつては、サプライチェーンが事業成長の足かせになっていた。だが、Blue Yonderの導入によって、事業成長を支える拡張性が高い基盤へと変化することができた」とする。
納期回答の速度が90%改善
フェーズ2における具体的な成果として、納期回答の速度が90%改善し、納期回答リードタイムは約1.5倍の改善効果を生み、「迅速かつ信頼性の高い納期回答により、顧客への納期確約をより迅速に実現できた」としたほか、在庫の適正化では、需給のマッチング精度の改善により、総在庫を14%削減しながら、戦略在庫比率を7%増加することに成功。さらに、業務効率を2.4倍改善し、「システム主導の受注回答により、手作業による調整を代替し、意思決定サイクルを短縮している」という。
「需給変動に対して、計画担当者と営業チームの社員が、応急処置的な対応に追われていたが、それがなくなり、お客様を向いた仕事ができるようになったり、より付加価値が高い業務にシフトしたりできるようになった」とする。
そして、「リーダーがコミットし、プロセスが最適化され、システムへの信頼が生まれたときに、初めて変革が実現できる」とも語る。
モバイルソリューションズ事業部では、今後も、継続的なオペレーション改革を進めていく一方、システムの進化では、Blue Yonderが、2025年5月に発表したコグニティブソリューションへの移行を図ることで、AIエージェントの活用などを進める考えだ。
さらなるAI活用と事業成長を見据えて
レッツノートとタフブックは、いずれも、2026年に、発売から30周年の節目を迎えている。だが、パソコンの主要部品の供給不足や価格高騰、ナフサなどの材料調達の不透明感があるとともに、国内パソコン市場の需要減速、グローバルでの事業拡大など、レッツノートおよびタフブックを取り巻く事業環境は激しい変化の中にある。
阿部シニアマネージャーは、「Blue Yonderソリューションは、モバイルソリューションズ事業部の事業成長に、大きく貢献することになる」と力強く語る。
レッツノートおよびタフブックの事業を下支えするサプライチェーンマネジメントシステムは、Blue Yonderソリューションの進化とともに、これからも強化されることになる。



























