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PC生産ストップの危機回避か?米イラン合意でナフサ調達に安堵広がるが、別の懸念も

 約3カ月に及んだホルムズ海峡閉鎖により、ナフサの調達遅延や、調達価格高騰の動きが、PC業界でも懸念されていたが、6月15日午前(日本時間)に、トランプ大統領が発表した米国とイランによる戦争終結に関する覚書の合意により、国内PCメーカーはひとまず安堵感を示すものの、引き続き注視する姿勢を崩していない。

 実際、PC本体にも、ナフサは数多く使用されており、筐体に使用されるプラスチック材料や、ケーブルの被覆、コネクタのほか、テープや塗料、接着剤、粘着剤などの構造材、さらには梱包材料や緩衝材、印刷物にもナフサの調達遅延が影響している。

 これらの部材の1つが足りなくなっても、出荷に支障が起きるため、現場では、「目詰まり」の可能性も視野に入れながら、依然として慎重に動向を見極めているところだ。

国内PCメーカーの現状、当面の生産・出荷に「大きな支障なし」

富士通クライアントコンピューティング(FCCL)

 島根富士通(島根県出雲市)で、PCの国内生産を行なっている富士通クライアントコンピューティング(FCCL)では、「具体的な影響の範囲や程度についてはコメントしていない」としながらも、「ナフサは、石油化学製品を基盤とする材料であることから、PCの生産にも広く関連する領域であり、PC業界全体の課題の1つであると認識している」とコメント。

 また、「足元では、全体として状況は落ち着きつつあるとの認識もあるが、引き続き市場動向を注視しながら、安定した製品供給に向けて適切に対応していく」と述べた。

VAIO

 長野県安曇野市の本社工場で、VAIOシリーズを生産しているVAIOは、「ナフサは、PC本体の樹脂のほか、梱包材、塗料、接着剤などに使用されており、一部で影響が出ている。だが、別商流での確保や代替品の検討により、現時点では、生産や出荷への大きな支障はない」とする。だが、「引き続き、状況を注視しながら、影響の最小化に努めていく」との考えを示した。

パナソニックコネクト

 兵庫県神戸市の神戸工場で、レッツノートなどの生産を行なっているパナソニックコネクトは、「ナフサは、多くのものに使用されているが、現時点で、すぐに生産や出荷に影響があるわけではない。代替手段の確保にも取り組んでいる。材料調達価格が上昇する懸念もあるが、お客様にご迷惑をおかけしない形にするための努力を続けている」と語る。

経産省「7月に代替調達10割へ」、残る流通の目詰まり対策に全力

 2026年6月15日に、一般財団法人家電製品協会(AEHA)が開催した家電産業交流会で挨拶した経済産業省商務情報政策局情報産業課の南部友成課長は、「ナフサは、中東以外からの代替調達が85%の水準に達した。ナフサ由来の化学製品を含む石油製品についても、前年実績を超えた供給が可能となっており、日本全体として必要な量を確保できている」と発言。

経済産業省商務情報政策局情報産業課の南部友成課長

 その一方で、「流通段階では、一部物資の目詰まりが発生しているのが実態だ。供給見通しに対する不足や、実績以上の発注などにより、現場では物資不足が見られている。政府としては目詰まり対策をきめ細かく進めることで、買いだめなどを解消し、市場の混乱の回避に全力で取り組んでいる。もし、なんらかの目詰まりが発生したら、経産省に一報してほしい。全力で対応する」。

 「原油については、ホルムズ海峡を経由しない調達に取り組んでおり、先週は、米アラスカから輸入原油が到着した。さらに、中南米、アジア太平洋、中央アジア、アフリカに加えて、カナダからの輸入も決定している。7月にはメキシコからも原油が届くことになる」。

 「6月については、約8割の代替調達が確保でき、7月は前年比で10割の調達に目途を付けている。米国からは前年比で10倍以上の調達を進めているところだ。これまでは、日本の原油輸入の9割が、ホルムズ海峡を通過していたが、7月は全量をホルムズ海峡ルート以外から調達できる見通しである」という。

 そのうえで、「日本は、関係各国とのエネルギー外交を積極的に進め、日本経済への影響を最小限にすべく全力で取り組んできた。石油業界の努力の賜物である」と評価した。

 なお、米国とイランによる戦争終結に関する覚書の合意については、「事態の収束に向けた大きな一歩として歓迎している。覚書が着実に実施され、ホルムズ海峡における自由で安全な航行が確保されるとともに、イランの核問題について、最終的な合意が1日でも早く実現することを期待している」と語った。

JEITA「ナフサは来年上期まで大丈夫」、IT産業最大の課題は“円安”

 一方、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の新会長に就任した新野隆氏(NEC会長)は、「ナフサについては、政府の代替調達や備蓄放出により、2027年上期までは大丈夫だとの見通しがある。だが、現場では流通段階での目詰まりが懸念されている。JEITAでは、各企業の施策を共有しながら、問題の最小化に貢献したい」と述べる一方、「個社ごとに状況は異なるが、デジタル・IT産業において大きな問題は円安である」と指摘。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)会長の新野隆氏(NEC会長)

 日銀の政策金利の利上げ見通しについては、「日本全体が金利のある状況の中で、成長していくことが大事である。日本経済が発展していけるように、バランスが取れた金融政策を取ってもらいたい」とコメントした。