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Intel、14nmのSoC版Broadwell/Denvertonを
省電力サーバー市場に投入
(2013/7/23 13:20)
Intelは7月22日(現地時間)、米国カリフォルニア州サンフランシスコにおいて記者会見を開催し、サーバー向け戦略を説明した。サーバー向けのロードマップを更新し、大きな成長が期待できる低消費電力サーバープロセッサ市場向けに、2014年に14nmプロセスルールで製造されるSoC版Broadwell(ブロードウェル)およびAtom SoCとなるDenverton(デンバートン)を投入することを明らかにした。
また、同時にこれまで開発コードネーム「Avoton」(アヴァトン)および「Rangeley」(レンジレイ)の開発コードネームで知られてきたサーバー向けAtom SoCの詳細を明らかにした。Avoton/Rangeleyは「Atomプロセッサ C2000シリーズ」という製品名になり、SilvermontコアのCPUを最大で8コア、2チャネルの64bit DDR3メモリコントローラなどを備えており、今年後半に正式に発表される予定だ。
スマートフォンが売れればデータセンター用のプロセッサも売れる
Intel 上席副社長兼データセンター・コネクテッドシステム事業本部 事業本部長のダイアン・ブライアント氏は「現在ITは変革期の真っ只中にある。1990年代までのはコンピュータが中心で、生産性を上げることに焦点が当てられていた。2000年代に入ると、ネットワーク中心となり、コストを下げることに焦点が当てられていた。2010年代には人間が中心となり、クラウドやモバイルデバイスを活用して便利なサービスをユーザーに提供することに焦点が当てられるようになった」と説明。
「つまり、現在はモバイルデバイス、そしてそれにサービスを提供するクラウドサービス、そのクラウドサービスを支えるデータセンター、それらがスパイラルになってITの成長を支えている」とし、それぞれが相互に影響し合うことでITの成長を生んでいると語った。
現在ユーザーが目にするIT機器と言えば、スマートフォン、タブレット、Ultrabookのようなモバイル機器だろう。昔であれば、IT機器にインストールされているアプリケーションは、スタンドアロンで動作するモノであって、ネットワークに接続していなくても利用できるモノばかりだった。しかし、現在では多くのアプリケーションが何らかのクラウドサービスを利用するという形に変わってきている。
このため、ユーザーがクライアント機器を購入すればするほど、クラウドへのアクセスは増大することになり、必然的にクラウドへの負荷が高くなり、その結果としてクラウドサービスを提供する事業者は、クラウドサービスを実行しているデータセンターのリソースを増強する必要が出てくる。平たく言えば、ユーザーがスマートフォンやタブレットを買えば買うだけ、その裏でデータセンター向けのプロセッサが売れている、そういう仕組みになっているということだ。
「米国のディズニーランドで導入されているMyMagic+というサービスでは、腕にパーソナライズされたバンドを巻いてもらうことで、それを利用して支払いをしたり、位置情報を利用して顧客の集中度合いを見て、行列のコントロールなどを行なうことができる。中国のBocomが導入しているSmart Trafficの仕組みでは、交通を集中管理して車の動きを誘導することで、渋滞や事故を減らすことが可能になっている。このように、人々の暮らしを豊かにするサービスが続々と生まれている。しかしながら、そうした中でも、エンタープライズにおいてはビッグデータ活用できているところは6%に留まっているし、クラウドへの移行も9%しか進んでいない。また米国の製造業がHPCを使っている割合も9%と、まだまだクラウドへの全面的な移行は始まったばかりだ」とし、クラウドを活用したさまざまなサービスが今後も登場することが予想され、さらには大規模な企業における利用率もまだまだ低いので、データセンタービジネスは今後も大きな成長が望める市場だとした。
その上でブライアント氏は「今後データセンターはさらに進化して、効率やユーザーのニーズの変化に対応したりと、より柔軟な運用が必要になる。それには例えばネットワーク構成を柔軟に変えることができたり、サーバーの平均利用率が50%程度に留まっているのをもっと上げたりということが必要になる」と述べ、そうした課題に応えることができるデータセンターの仕組みが今後は必要になり、データセンターの仕組みを根本から問い直す時期に来ていると指摘した。
2014年に14nmプロセスルールで製造されるDenvertonとBroadwell SoCを投入へ
ブライアント氏はIntelのデータセンター市場における現状を、TOP500と呼ばれるスーパーコンピューターの性能ランキングの市場シェアで具体的に説明した。「1997年にIntelがx86プロセッサでサーバー市場に参入した時にはわずか3%でしかなかったが、今は88%のシェアを持っている。この間に性能は1,500倍になり、電力は4分の1になり、性能あたりのコスト削減率は100分の1に達している」と述べ、Intelがデータセンター市場において大きな存在であることをアピールした。
ブライアント氏によれば、Intelが今後データセンターの仕組みを変えていく上でポイントになると考えている領域は3つあるという。それがネットワーク機器、ストレージ、サーバーの3つだという。
ネットワーク機器に関しては、現在のルーター、ゲートウェイ、ファイアウォールといった固定の機能しか持たないアプライアンス的なネットワーク機器から、SDN(Software Defined Network)と呼ばれるソフトウェアによって定義を変える新しい形のネットワーク機器への移行が進むとした。「ユーザーのニーズの変化に動的に対処していくには、固定機能のハードウェアがボトルネックとなる。そこで、スイッチや基地局といった機能をSDNにすることで、それらに柔軟に対応できるようになる」と述べ、今後は機器ベンダーと協力して、汎用プロセッサの上にソフトウェアを利用してネットワークを構成することで、変更にも柔軟に対処できるようにすると述べた。Intel社内での実証実験では、これまで数週間のレベルで時間がかかっていたデータセンターのネットワーク構成の変更が、SDNに変更することでわずか数分で済むようになったという。
そして、ストレージに関しても、主に現在専用IC+HDDから構成されているストレージに、汎用プロセッサ+SSDを普及させていくことで、ストレージの効率を上げたり、アプリケーションからの要求に容易に応えることが可能になると説明した。ブライアント氏によれば従来のHDDベースで構成されたストレージを、Xeon+SSDという環境に切り替えることで、従来は4時間以上かかっていたビッグデータの解析が7分で済むようになったという。
また、サーバーそのものに関しては、ラックの効率改善と、新しいサーバー向けプロセッサについて説明した。ブライアント氏は「現在のサーバー向けマイクロプロセッサは、用途に応じて製品が投入されるようになっている。Intelは大規模向けのXeonから、低消費電力向けのAtom SoCまで多彩なラインナップを用意している」と述べ、特に今回は成長市場とされている低消費電力向けのサーバー向けプロセッサのラインナップの拡充についての説明をな行なった。
Intelはすでに開発コードネームHaswellで知られるXeon E3を6月に投入している。そして今年(2013年)の後半には、サーバー向けSoC「Atom S1200」の後継として、22nmプロセスルールで製造されるAvotonおよびRangeleyを投入する。これらは既報の通りである。
今回、新たに14nmプロセスルールで製造されるAtom SoCとなるDenverton、そしてBroadwellのSoC版を、サーバー向けにも投入することを明らかにした。
Broadwellは、Haswellの後継としてIntelが開発しているCoreマイクロアーキテクチャ系のCPUで、14nmに微細化されることが特徴。BroadwellはHaswellと同じく2チップ版とSoC版が用意されているが、Haswell世代では2チップ版のみであったのに対して、Broadwell世代ではSoC版もサーバー市場向けに提供するとのことだ。
Intelとしては、このように低消費電力向けのラインナップを拡充することで、サーバー市場へと進出しようと虎視眈々と狙っているARMプロセッサ陣営を牽制する狙いがあると考えることができるだろう。
Avoton/Rangeleyは8コアCPU、PCIe x16、GbE×4、2チャネルDDR3をサポート
ブライアント氏に次いで登壇したIntel 副社長兼データセンター・コネクテッドシステム事業本部クラウドプラットフォーム事業部 事業部長 ジェーソン・ワックスマン氏がサーバーの効率化の改善や、Avoton/Rangeleyの詳細に関する説明を行なった。
Avoton/RangeleyのCPUコアは、5月に概要を発表した22nm世代プロセッサコア「Silvermont」を採用、製品により違いはあるが、Intel 64に対応し、最大で8コアまで対応できる設計になっている。
さらに、PCI Express Gen2 x16、最大4つのGigabit Ethernet、最大4つのUSB 2.0ポート、最大2ポートのSATA 6Gbps、最大4つのSATA 3GbpsといったI/Oも統合されているという。メモリはDDR3/DDR3L-1600に対応し、64bitバス幅で2チャネルのメモリ構成が可能で、最大64GBまでに対応。こうした改良により、現行製品に比べて7倍近い性能向上が見込めるとワックスマン氏は説明した。
なお、AvotonとRangeleyの違いはネットワーク機器向けどうかで、ネットワーク機器向けと位置づけられているRangeleyには暗号化のアクセラレータが搭載されているとのことだった。すでにAvoton/Rangeleyに関しては50を超えるデザインウインを獲得しており、OEMメーカーの採用に関しても順調に進んでいるとアピールした。
また、同社が以前より取り組みを進めているIntel RSA(Rack Scale Architecture)に基づいた、新しいラックマウントのデザインを紹介した。Intel RSAとはサーバーのラックをより効率が良いモノにして行く取り組みで、Intelだけでなく業界の企業と協力して行なわれている。
第1段階としては、ラック全体で電源や冷却機構を持ち、ラックそのものに管理機構を持たせることで、電源、冷却機構、管理機能をぞれぞれのサーバーが持つことで発生するロスを削減する。
そして第2段階として、ラックサーバー間を光ファイバーで接続し、さらに効率を上げる。その後さらに進んだ段階としてはシリコンフォトニクスの技術などを利用して、サーバープロセッサにI/Oを直結することでさらに効率を改善することなどが検討されている。
今回ワックスマン氏は、Intelと協力してクラウドサーバーの開発を行なっているRackspace Hostingが試作したRSAに対応したラックマウントケースを披露した。今回試作されたラックマウントケースでは、ケース側に電源ユニットはなく、従来電源ユニットがあったところに、ストレージやI/Oカードなどが置かれているという。また、サーバーの密度を上げるため、Atom SoCなどの場合にはCPUとメモリが実装された基板をPCI Expressのアドオンカードの形で実装することも可能になっているという。これにより、従来のラックに比較してケーブルの削減が可能になったり、サーバー密度を上げたりすることが可能になると説明した。