富士通フォーラム2009が14~15日に開催
~暗号化された印刷物を携帯電話で復号化する技術など

携帯電話で暗号化された印刷物を復号化しているところ

5月14日~15日 開催
入場無料



 富士通グループの技術関連プライベートショー「富士通フォーラム 2009」が、14日~15日の間、東京国際フォーラムで開催される。開催時間は10時~18時、入場は無料となっている。

 展示会場はプレス向けに12日に事前公開された。今回は週末土日の開催がないため、主な内容はBtoBのサービスやソリューションなどがメインとなっているが、PC Watchではその中でもいくつか特徴的なものを紹介しよう。

●携帯電話で暗号化された印刷物を復号化する技術

 プレス向け内覧の開催とともに発表会を開き、公開されたのが、富士通研究所による携帯電話で暗号化された印刷物を復号化する技術。富士通研究所は2008年6月に、印刷物を暗号化して読めなくし、スキャナで読み込んで復号化を行なう技術を開発したが、今回はその延長線にある技術で、携帯電話のカメラで取り込んで復号化できるようになった。

 スキャナによるドキュメントのスキャンは、平面で歪みがなく、画像のブレなどが生じないため復号化処理を行なうのは簡単であったが、携帯電話などのカメラで撮影した画像の場合は、レンズの歪みや遠近による歪み、手ぶれなどがあるため、復号に成功するまで、ユーザーが何度も写真を撮り直しをしなければならないという課題があった。

 しかし、手ぶれや歪みの検知は比較的処理時間が短く済み、一方で領域検出処理や復号処理などのほうが時間が長い。そこで今回、写真ではなく動画を取り込み、フレームをリアルタイムに抽出して手ぶれや歪みを検知し、失敗がない成功したフレームだけを領域検出と復号処理にかける仕組みを採用。これによりユーザーの手間を大幅に削減した。

 動画から有効なフレームだけを選択する技術自体は、携帯電話に採用されているQRコード読み取りに採用されている技術とほぼ同様だが、同社の暗号化アルゴリズムの特徴を活かした画像処理フィルタを採用しているという。カメラの解像度に関しては、「200~300dpi前後のカメラがあれば利用できる」としている。

 なお現時点では試作段階のため、画面中央付近にある1つの暗号化項目しか解読できないが、技術的には紙1面に印刷された暗号データを復号化可能という。ただしその場合は携帯電話にある程度のCPUパワーが必要とされる上、より高解像度のカメラが必要になる。

デモ機の利用イメージ従来の検出方法では、失敗写真を撮り直す必要がある検出を動画とすることでユーザーの手間を大幅に軽減する
発表会で展示された試作機画面の赤い枠内の内容が認識される実際に解読した状態。ルーペを使っている感覚に近い

 富士通研究所 画像・バイオメトリクス研究センター 主席研究員の伊藤隆氏は、「個人情報保護法の施策以来、PCなどを利用したデジタルデータの情報漏洩は減っており、相対的に紙による情報漏洩の比率が増えている。その改善策として、今回のソリューションを提案していきたい」と話した。

 想定される利用シーンとしては、外出先での機密書類の閲覧や、PCなしで復号化したいFAX文書の閲覧、印鑑証明や戸籍謄本などの改ざんチェック、個人の手帳などに記録したパスワードの参照、QRコードにかわるクーポンや割引サービスなどとしている。

 現時点で開発されたソフトはWindows CEベースだが、Symbian OSなどにも移植していくという。今後はさらなる高速化と画質改善を行ない、2009年度内での実用化と2010年度内の製品化を目指す。

富士通研究所 画像・バイオメトリクス研究センター 主席研究員の伊藤隆氏紙による情報漏洩の増加

●ローカルでワンセグを配信するソリューション

 展示会場のITゾーンでは、ワンセグ動画を配信するシステム「SpotCast」を展示。これはごく狭い範囲(2m前後)で、ワンセグの空きチャンネルを利用して番組を配信するもの。配信された動画はワンセグ対応端末で視聴可能なだけでなく、録画も可能になっている。

 利用シーンとしては広告の配信や、地下や店舗内におけるワンセグの再配信などを想定している。価格は送信機が312,900円(アンテナ1本込み、オプションで最大4本まで接続可能)、オプションアンテナが26,250円。会場では実際にビデオカメラで取りこんだ映像を配信していた。

ローカルエリアでワンセグを配信するソリューション「SpotCast」ワンセグの空きチャンネルを利用するため、手動でスキャンする必要はあるが、ドコモ携帯の場合はFeliCaで情報を読み取れる

 環境ゾーンでは、AMDプラットフォーム採用のビジネス向けPC「ESPRIMO D5180」や、赤外線センサー内蔵で、有人/無人を判別し自動的ディスプレイの電源をON/OFFする液晶ディスプレイ「VL-176SR」、バックライトを削減することで消費電力を10Wに抑えた液晶ディスプレイ「VL-177SEL」、水冷採用で騒音を抑えたノートPC「FMV-BIBLO NW」、グリーン電力証書システム対応のUMPC「LOOX U ECOモデル」などを展示している。

「ESPRIMO D5180」と赤外線センサー付き液晶ディスプレイ「VL-176SR」人が正面に立つと自動的に電源がONになる消費電力が10Wの液晶ディスプレイ「VL-177SEL」
FMV-BIBLO NW水冷システムのスケルトンモデルも展示され、水の流れを目で確かめられるグリーン電力証書システム対応のUMPC「LOOX U ECOモデル」

 このほか、リスクマネジメントゾーンでは静脈認証機能内蔵のマウスなどを展示。また、12日に発表されたXeon 5500番台搭載ブレードサーバー「PRIMERGY BX900」シリーズも展示している。

静脈認証搭載のマウス。小売りの予定はないというXeon 5500番台搭載のブレードサーバー「PRIMERGY BX900」ブレードの内部。ハニカム構造の通風口や材質の違うヒートシンクの採用により放熱性を高めている

(2009年 5月 12日)

[Reported by 劉 尭]