富士通、減収減益となった2008年度決算を発表

富士通 野副 州旦 代表取締役社長

4月30日 発表



 富士通株式会社は4月30日、2009年3月期の決算を発表した。

 連結決算の売上高は、対前年同期比12.0%減の4兆6,929億9,100万円、営業利益は66.5%減の687億7,200万円、経常利益は90.8%減の150億5,200万円、当期純利益は2002年度以来のマイナスとなる1,123億8,800万円と減収減益となった。

 ただし、2月17日に発表した業績の下方修正に比べ、売上高予測は4兆7,000億円からマイナス70億円となったものの、営業利益はサーバー事業やHDD事業などでの部品のコストダウン効果、費用効率化により従来予想を187億円上回る687億円に、経常利益も150億円上回る150億円となった。

 営業外損益については、為替差損や固定資産廃棄損などが見込みより減少したものの、持分法適用関連会社での構造改革費用の計上により持分法損益が悪化、当期純利益はLSI事業に係る固定資産の減損損失や、HDD事業などの事業構造改善費用、上場株式等に係る評価損などを特別損失に計上したことで従来予想よりも623億円悪化し、1,123億円の損失となった。

 事業セグメント別の損益としては、SI事業やコンサルティング事業などを含んだテクノロジーソリューション事業は売上高が前年比6.0%減の3兆770億円、営業利益は4.7%増の1,887億円、PCや携帯電話を含むユビキタスプロダクトソリューションは売上高が20.2%減の9,491億円、営業利益は98.9%減の5億円、半導体を含むデバイスソリューションは売上高が26.2%減の5,876億円、営業利益がマイナス719億円となった。

富士通 加藤和彦 上席常務CFO

 「この数値の中には、HDD事業譲渡、LSI事業の製造体制再編などの事業構造改善費用と、三重工場の300mmLSI事業の減損損失など特別損失費用が含まれている。各事業の実質増減率は、テクノロジーソリューション事業の実質増減率は対前年同期比1%増、ユビキタスプロダクトソリューションは17%減、デバイスソリューションは23%減となる」(富士通・加藤和彦上席常務CFO)

 PCと携帯電話の売上高は対年々同期比18.4%減の6,833億円で、PCの出荷台数は前年同期比よりも145万台減の736万台、携帯電話の出荷台数は130万台減の460万台となった。

 所在地別では、国内は売上高が前年同期比10.4%減の3兆7,899億円、営業利益は55.8%減の1,064億円であるのに対し、海外売上高は22.0%減の1兆6,341億円、営業利益は30.6%減の172億円となった。海外事業は2009年4月1日付けで富士通シーメンスコンピューターズの全株式を買い取り、富士通テクノロジーソリューションズ(FTS)と社名を改称し、2年後に全世界でIAサーバーを50万台販売するという目標を掲げている。そのため、欧州のPC、サーバー販売に関する構造改革などの影響もあり、海外の営業利益減少につながった。

 2009年度の業績見通しは、中間期売上高は2兆2,000億円、営業利益はマイナス500億円、経常利益はマイナス600億円、当期純利益は650億円。通期見通しとしては、売上高は4兆8,000億円、営業利益は800億円、経常利益は600億円、当期純利益200億円としている。

 この数字には完全子会社化したFTS、連結子会社となったFDKの業績と、7月1日付けで正式に東芝および昭和電工に譲渡することが発表されたHDD事業の第1四半期の業績が含まれている。

 「2009年度通期予想については、FTSを連結子会社化したことによるのれん代の償却費用や、FDKを連結子会社化したことによる売上増、HDD事業譲渡による売上減など事業再編による特殊要因費用、為替の影響など、トータル売上高3,300億円、営業利益マイナス190億円を折りこんだものとなっている」(加藤CFO)。

 各事業の売上予想としては、テクノロジーソリューション事業は国内のインフラサービス事業は好調と予測されているもののシステムプラットフォーム事業では企業の投資抑制傾向が出ていることから売上高はマイナス500億円、営業利益は100億円。ユビキタスソリューション事業は、売上高はマイナス700億円、営業利益はマイナス150億円、PCの出荷台数は対前年同期比86万台減の650万台、携帯電話の出荷台数は前年並みの460万台、HDD事業は7月1日に譲渡されることから第1四半期の出荷予想台数570万台のみをカウントしている。デバイスソリューションは、売上高はマイナス1,200億円、営業利益は650億円と予測している。

 当初は出席予定ではなかったものの、当日になり会見に出席することが発表された富士通・野副州旦社長は会見の冒頭、「富士通の社長が決算会見に突如出席するのは初めてのことになるらしいが、前社長の黒川が行なった中期経営計画で目標値としていた2009年に連結営業利益率5%を達成し、純利益1,000億円とするという目標が未達となることから、私自身がきちんと説明するべきだと考えた。特別なサプライズ(発表)があるわけではない」と説明。

 続けて、「2008年度は100年に一度と言われる厳しい経済環境となるなど外部要因に影響された年ではあったが、目標値未達は許されるべきではない。厳しい経済環境は2009年度も続くだろう。今年度一杯は、きわめて厳しいビジネスを強いられると認識している。ただし、2010年度に入り経済環境が改善した時には、一気に攻めに転じるよう準備を行なうのが2009年度となる。新しい中期経営計画については、できるだけ早く発表する予定で、実現できる新しい目標値を発表したい」と新たな利益目標値を設定する予定であると強調した。

●HDD事業は東芝にドライブ、メディアを昭和電工に売却へ

 2月17日時点で売却予定であることを発表していたHDD事業については、7月1日付けでドライブ事業は総額300億円で東芝へ、メディア事業は昭和電工に譲渡されることが正式に発表された。

 東芝への事業譲渡については、新設される「東芝ストレージデバイス株式会社(以下、TSDC)」に承継される。富士通のHDD製造拠点だった富士通コンピューター・プロダクツ・コーポレーション・オブ・ザ・フィリピンと富士通タイランドは、それぞれ社名を「東芝ストレージデバイス・フィリピン」と「東芝ストレージデバイス・タイ」に変更。株式会社山形富士通のHDD事業部門を承継した「東芝ストレージデバイス山形株式会社」とともに、TSDCの 100%子会社となる。

 7月1日以降は、旧富士通製品を含め、HDD製品の販売は全て東芝が担当し、TSDCはHDD製品の設計、開発、品質保証、製造技術、技術支援などの業務を担当する。富士通の海外におけるHDD販売拠点は、一部地域を除き、東芝の海外販売拠点に承継される予定だ。

 新会社の持ち株比率は、東芝が2009年7月1日を目標に新会社株式のうち80.1%を富士通から取得し、富士通は2010年12月末までに保有する19.9%のTSDC株式を東芝に売却し、TSDCは東芝の100%子会社になる予定。

 昭和電工への事業譲渡については、富士通の子会社・株式会社山形富士通の全株式を昭和電工に7月1日までに譲渡。山形富士通が生産してきたサーバー用HDD向けアルミメディア、モバイルPCや車載用HDD向けのガラスメディアの生産を引き継ぐ計画だ。

 これにより昭和電工は世界最大のメディア外販メーカーとなる見込み。

(2009年 4月 30日)

[Reported by 三浦 優子]