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東芝、超伝導量子コンピュータ用素子「ダブルトランズモンカプラ」の高性能を実証
2024年11月22日 12:26
東芝と理化学研究所(理研)の共同研究チームは22日、東芝が量子コンピュータ向けに提案した素子「ダブルトランズモンカプラ」において、2量子ビットゲートの忠実度で世界トップクラスの99.9%を達成したと発表した。
超伝導方式の量子コンピュータは、固体素子であるために、安定性/集積性に優れ、量子ゲートの忠実度が高いことから、有望な実現方式として期待されている。その実装方式もさまざまで、東芝が2022年9月の論文で提案した素子ダブルトランズモンカプラもその1つ。
これは超伝導量子コンピュータの性能向上のための可変結合器で、従来の可変結合器に比べて不要な残留結合を小さく抑えられ、高速かつ高精度な2量子ビットゲートを実現できることを理論上で確認していた。
しかしその実現は、ゲート操作時間に比べて十分長いコヒーレンス時間が必要で、実際の形状や用いる超伝導材料、周辺回路設計、作製プロセスなどを十分考慮する必要がある。また、ゲート操作を高速に実行するには、量子ビット間の結合強度が十分に大きいことが重要だった。
今回共同研究グループは、2つの量子ビットの形状/材料/プロセスを工夫し、トランズモン量子ビットとして世界トップクラスのコヒーレンス時間の長さを実現。外部磁束を調整することで、結合強度の大きさを最大で約80MHzまで大きくし、48nsという短いゲート時間を実現した。
さらに、量子ビット間の離調を大きくし、クロストークエラーを抑制しつつ、従来の可変結合器では残留結合を数十kHzまでしか抑えられなかったのに対し、外部磁束を適切に設定することで約6kHzまで抑えることができ、ダブルトランズモンカプラの特徴の1つである小さな残留結合を初めて実験的に実証できたという。
今後は2量子ビットゲートの忠実度99.99%を目指し、ダブルトランズモンカプラのさらなる性能向上に取り組むとともに、大規模化する技術を開発するとしている。