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東大、金属並みの熱伝導率を持つゴムシートを開発

今回開発された高い熱伝導率を示すゴムシート

 東京大学の研究チームは、金属のように熱を通す絶縁体のゴムシートを開発したと発表した。

 スマートフォンやウェアラブルデバイスなどでは、高機能化と省スペース化により、電子部品からの発熱密度が拡大し続けており、適度な熱対策を行なうための放熱シートが必要となっている。放熱シートでは高い熱伝導性、電子部品に密着する柔軟性、外部から電気的な保護を行なう絶縁性を併せ持つ必要がある。

 しかし、従来は金属並みの10W/mK以上の熱伝導率と、ゴムのような柔らかさの指標となる100MPa以下のヤング率、電気絶縁性を備える熱層間材(つまり放熱シート)が実現できなかった。

 そこで今回東京大学の研究チームは、産業技術総合研究所と共同で、環動高分子ポリロタキサンを母材として、水中プラズマにより表面改質した高熱伝導性の窒化ホウ素フィラーを加えた、柔軟性を持ちながら放熱性に優れた材料を作成した。この材料は、厚み方向の熱伝導率が金属並みに高い11W/mKの値を示したという。

 技術のキモでもある熱伝導率が高く絶縁性がある窒化ホウ素は、392W/mKという高い熱伝導率を示すが、窒化ホウ素フィラー(プラスチック樹脂、ゴム、塗料などに機械強度や機能性の向上のために添加される物質)は板状の単結晶構造で、板面に沿った方向に高い熱伝導性を持つため、ゴムと複合化する際にフィラー板面が揃うように配向させる必要がある。しかし、これまでは複合に使う電界強度の不足や長時間印加で生じる溶液のゲル化により、十分な配向ができなかった。

 今回、パルス交流電界を採用し、電極配置を改良することで電界強度を従来から50倍に高めた。これにより、短時間の印加でゲル化を抑制しながら、窒化ホウ素フィラーの配向度を高めることを実現。電界印加方向に整列できたことで高い熱伝導率を達成したという。

パルス交流電界によって窒化ホウ素フィラーの整列を実現
熱伝導率の向上
ヤング率と熱伝導率