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Microsoft、Core Ultra搭載AI PC「Surface Pro 10」と「Surface Laptop 6」
2024年3月22日 01:00
Microsoftは3月21日(米国時間)に「Advancing the new era of work with Copilot」というイベントを開催し、この中でMicrosoftは「Surface Pro 10 for Business」、「Surface Laptop 6 for Business」という法人向けSurfaceブランドPCの新製品を発表した。
Intel CPUを搭載したSurface Pro/LaptopもNPUとCopilotキーを搭載してAI PCへと進化
Windows 11のCopilot in Windowsをよりよく使えるAI PCとして、MicrosoftはSurface Pro 10 for Business、Surface Laptop 6 for Business(13.5型と15型)の3製品を発表した。
モデル | Surface Pro 10 for Business |
---|---|
SoC | Core Ultra 7 165U/5 135U |
メモリ | 64GB/32GB/16GB/8GB |
ストレージ | 1TB/512GB/256GB |
GPU | Intel Arc(SoC統合型) |
ディスプレイ | 13型 PixelSense Flow display(2,880×1,920、1,300:1、600cd/平方m、120Hz)/タッチ/MPPペン対応 |
オーディオ | デュアルマイク/2Wステレオスピーカー(Dolby Atoms)/BT LE対応 |
カメラ | 前面:QHD(1440p)、背面:1,050万画素(UHD) |
バッテリ | 47Wh、19時間バッテリ駆動(公称値) |
セキュリティ機能 | dTPM 2.0/NFC(オプション)/Windows 11 Secured-core PC対応 |
生体認証 | 顔認証 |
ポート | Thunderbolt 4×2(USB PD/DP2.1対応)、Surface Connect、Surface Pro Keyboardポート |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | 5.3 |
セルラー | 5G(eSIM対応)*今後別途発表予定 |
サイズ | 287×208.6×9.3mm |
重量 | 879g |
カラバリ | プラチナム/ブラック |
OS | Windows 11 Pro/Windows 10 Pro(プリインストール提供なし、ダウングレード時サポートのみ) |
モデル | Surface Laptop 6 13.5" for Business |
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SoC | Core Ultra 7 165H/5 135H |
メモリ | 64GB/32GB/16GB/8GB |
ストレージ | 1TB/512GB/256GB |
GPU | Intel Arc(SoC統合型、8GBモデルのみIntel HD) |
ディスプレイ | 13.5型 PixelSense Flow display(2,256×1,504ドット、1,300:1、400cd/平方m)/タッチ/MPPペン対応 |
オーディオ | デュアルマイク/Omnisonicスピーカー(Dolby Atoms)/BT LE対応 |
カメラ | 前面:FHD |
バッテリ | 46Wh、18.5時間バッテリ駆動(公称値) |
セキュリティ機能 | dTPM 2.0/Windows 11 Secured-core PC対応 |
生体認証 | 顔認証 |
ポート | Thunderbolt 4×2(USB PD/DP2.1対応)、USB 3.1、3.5mmヘッドフォン、Surface Connect |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | 5.3 |
サイズ | 308×223×16.7mm |
重量 | 1.38kg |
カラバリ | プラチナム/ブラック |
OS | Windows 11 Pro/Windows 10 Pro(プリインストール提供なし、ダウングレード時サポートのみ) |
モデル | Surface Laptop 6 15" for Business |
---|---|
SoC | Core Ultra 7 165H/5 135H |
メモリ | 64GB/32GB/16GB/8GB |
ストレージ | 1TB/512GB/256GB |
GPU | Intel Arc(SoC統合型、8GBモデルのみIntel HD) |
ディスプレイ | 15型 PixelSense Flow display(2,496×1,664ドット、1,300:1、400cd/平方m)/タッチ/MPPペン対応 |
オーディオ | デュアルマイク/Omnisonicスピーカー(Dolby Atoms)/BT LE対応 |
カメラ | 前面:FHD |
バッテリ | 46Wh、18.5時間バッテリ駆動(公称値) |
セキュリティ機能 | dTPM 2.0/スマートカード(オプション)/Windows 11 Secured-core PC対応 |
生体認証 | 顔認証 |
ポート | Thunderbolt 4×2(USB PD/DP2.1対応)、USB 3.1、3.5mmヘッドフォン、Surface Connect |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | 5.3 |
サイズ | 340×244×16.9mm |
重量 | 1.68kg |
カラバリ | プラチナム/ブラック |
OS | Windows 11 Pro/Windows 10 Pro(プリインストール提供なし、ダウングレード時サポートのみ) |
これまで、MicrosoftはSurfaceデバイスをいくつかの例外を除いて、一般消費者向けと一般法人向けを同時に発表してきた(発売時期に関しては違っていたことはある)。
直近での例外は、2022年1月に発表された「Surface Pro 7+」というSurface Pro 7の改良版で、このSurface Pro 7+は、最終的には一般消費者向け版は発売されず、一般法人向け専用製品となったので、その意味ではここ数年のSurface製品に関しては同時に発表されている。
Microsoft Surface担当 ゼネラルマネージャー ナンシー・ガスキル氏は「今回に関してはビジネスフォーカスの発表になっているということと、ビジネス顧客からのニーズが強いということがある」と述べ、Surface製品の中でもSurface Pro 10とSurface Laptop 6は特に法人需要が強いためだと、一般法人向けを先行して発表するのだと説明した。
現時点でMicrosoftはSurface Pro 10とSurface Laptop 6の一般消費者向け版があるかどうかは明確に明らかにしていないが、仮に一般消費者版がないのなら「for Business」という名称をつけるとは思えないので、かなり高い確率でどこかのタイミングで発表されると考えるのが自然だろう。
こうした新しいSurface Pro 10 for Business、Surface Laptop 6 for Businessの特徴に関してガスキル氏は「今回は両製品でIntelのCore Ultraを採用している。Core UltraはNPUを内蔵しており、Windows Studio Effectsなどを利用できる。
また、Surface Laptop 6に関してはHシリーズのCore Ultraを搭載しており、より高い性能を実現している」とNPUに対応して電力処理が高くなったことが特徴だと説明している。Surface Pro 10 for Businessに関しては従来版のSurface Pro 9(Intel版)に比較して53%の性能向上、そしてSurface Laptop 6 for Businessに関してはSurface Laptop 5に比べて性能が2倍(スコアは3DMarkのTimeSpyのスコアベース)になっていると説明した。
従来のSurface Pro 9、Surface Laptop 5に関しては第12世代インテルCoreプロセッサー(以下第12世代Core)のうちUシリーズというTDPが15WのSKUが採用されていた。Surface Pro 10 for BusinessはUからUと同じTDP 15Wでの更新になっているが、Surface Laptop 6 for Businessに関してはUからHへと、TDPが28Wへと引き上げられている。
今回Surface Laptop 6 for Businessの熱設計を大きく見直して、TDP 28WのCPUもきちんと放熱できるように設計した。その結果は大きな効果が見込め、Microsoftの自社評価によれば、性能が2倍になったという。
なお、Surface Proシリーズでは、Surface Pro 9 with 5GというMicrosoft SQ3を搭載したArm版のみが5G対応となっていたが、今回のSurface Pro 10 for Businessでは5G版は今年中に追加発表される予定とされている。
カメラはNPU搭載でWindows Studio Effectsに対応しただけでなく、解像度もQHDに強化
SoCがNPUを内蔵した分かりやすいメリットは、前述の通りWindows Studio Effectsに対応したこと。従来Surfaceシリーズで、Windows Studio Effectsに対応していたのは、「Surface Pro 9 with 5G」(Qualcomm設計のMicrosoft SQ3搭載)ないしは「Surface Laptop Studio 2」(IntelのKeem Bay NPUを搭載)という2つの製品だけだった。
しかし、今回のCore Ultraでは全てのSKUがNPUを内蔵しておりWindows Studio Effects対応になった。なお、Windows Studio Effectsの詳細に関しては、Surface Pro 9 with 5Gのレビュー記事が詳しいのでそちらをご参照いただきたい。
特にSurface Pro 10 for Businessに関してはWindows Studio Effectsに対応しただけでなく、そもそもカメラモジュールがアップデートされている。実はもともとSurfaceシリーズのカメラは、業界で一,二を争うような高画質として高い評価を受けてきた。その最大の要因は、いち早くIntelのSoCに内蔵されているISP(Image Signal Processor)をMIPI CSI-2経由で利用する設計にすることで、USB接続の画像処理エンジンを使わないで済むからだ。
コロナ禍になるまで、Webカメラの画質は多くの人が気にしていなかったのだが、リモートワークやハイブリッドワークが当たり前になるとそこに注目が集まるようになり、比較するとSurfaceのカメラが高画質だという評価が定まっていった。
今回のSurface Pro 10 for BusinessがMIPI CSI-2接続であるかは実機に触ってみるまで分からないのだが(ダウングレードする理由もあまりないので、基本的に同じだと思う)、今回カメラモジュールを1440pのカメラにアップグレードしている。
もちろんTeamsやZoomなどは1,280×720ドットのような解像度に引き下げて相手に送るのでそう考えるとメリットがないと思えるかもしれないが、低い解像度を低い解像度で使うより、高い解像度を低い解像度にして使う方がきれいなのは静止画でも動画でも多くの読者が経験したことがあるだろう。QHDの前面カメラのメリットはまさにその点にあると言える。なお、背面カメラに関してはSurface Pro 9と同じ1,050万画素の4Kカメラになる。
なお、Surface Laptop 5のカメラは720pのカメラだったのに対して、Surface Laptop 6 for Businessでは1080pのカメラにアップグレードされている。つまり、カメラが従来のSurface Pro 9並みになったということだ。Surface Laptopシリーズのユーザーにはこれはうれしい強化点と言える。
Surface Pro 10 for BusinessはHDR 600cd/平方mのディスプレイを採用、適応型色調と反射抑制コーティングも採用
ディスプレイとセキュリティ周りの強化も新しいSurface Pro 10 for Business、Surface Laptop 6 for Businessの特徴となっている。
Microsoftのガスキル氏は「ディスプレイに関しては従来と同じ液晶ベースだが、Surface Pro 10 for Businessは従来製品に比べて33%明るくなっている。そして適応型色調と反射を抑えるコーティングを採用しており、環境に合わせて動的に色調を変えていくことで、どの環境でも同じような明るさを実現しながら消費電力を抑えられる」と述べ、ディスプレイの輝度が従来製品に比べて明るくなり、かつ適応型色調(Adaptive color)および反射抑制(anti-reflective)と呼ぶ技術に対応したディスプレイを搭載している。
このSurface Pro 10 for Businessの新しいパネルは解像度こそ従来と同じ2,880×1,920ドット/120Hzと同じだが、輝度は600cd/平方mに達しており、HDRにも対応している。従来製品では400cd/平方mだったので、33%明るくなっているというのはその通りだ。
さらに、環境光センサーなどを活用することで、色調と輝度のバランスを調整することで、明るい場所でも暗い場所でも人間の目には同じような明るさに見えるように調整する。なお、Surface Laptop 6 for Businessのディスプレイは400cd/平方mだが、この適応型色調と反射を抑えるコーティングには同じように対応している。
そしてセキュリティ機能だが、一般法人向けという扱いになるため、Microsoftが提唱するSecured-Core PCには標準に対応している。
Secured-Core PCでは、Windows 11において標準で有効になっている仮想化ベースのセキュリティ技術となるVBS(Virtualization-Based Security)などに加えて、OSがブートする前のUEFI BIOSのPOST(Pre OS Test)の段階から、安全性を実現するDRTM(Dynamic Root of Trust for Measurements)などが標準状態で有効になっている。
それにより、Microsoft 365 EnterpriseやMicrosoft 365 Businessなどの有効なMicrosoft 365の契約を持っている企業がWindows OSをアクティベーションすると、そうしたWindows OSが用意しているすべてのセキュリティ機能が利用できるようになる。
それに加えて、Surface Pro 10 for BusinessではNFC、Surface Laptop 6 for Businessではスマートカードを利用したセキュリティ機能がオプションとして選択できる。たとえば、NFCのYubiKeyを利用すると、Surface Pro 10 for Businessに搭載されたNFCリーダーにかざすだけで、パスワードレスでOSへのログインが可能になるなど、より安全なOSの利用ができる。
また、従来はIntuneなどMicrosoft 365の機能としてバラバラに提供されてきたデバイスの管理機能は「Surface Management Portal」としてまとめられ、同時に「Surface IT Toolkit」と呼ばれるツール群も用意され、IT管理者がSurfaceデバイスの管理をより簡単にできるようにする。
Surface ProシリーズのキーボードにもCopilotキー搭載版やボールド体のキートップを採用したバージョンも登場
そして、今回発表されたSurface Pro 10 for Business、Surface Laptop 6 for BusinessはいずれもキーボードにCopilotキーが採用されている。といってもクラムシェル型デバイスであるSurface Laptop 6にはキーボードが標準装備なのはいいとして、Surface Proシリーズはキーボード別売なので、今回から新しいCopilotキー付きのSurface Proキーボードが販売される形になる。
Microsoftのガスキル氏によれば「今後一般法人向けのSurfaceにはCopilotキーがつくようになる計画だ」と述べ、Microsoft自身は法人向けのPCに積極的にCopilotキーを導入していくという方針を明らかにした。
かつ障碍者向けの新しいバージョンとしてキートップの文字をボールド体にして、かつバックライトの明るさを増したバージョンを投入する。それにより、より多くのユーザーの生産性を上げられるとMicrosoftでは説明している(ボールド体のキーボードは米国英語配列のみ提供予定)。
また、従来「Microsoft Adaptive Accessories」として一般消費者向けに販売されてきたマウスやポインティングデバイスなども、法人向けとしてカラーをブラックにして販売開始される。
Surface Pro 10 for Business、Surface Laptop 6 for Businessのいずれの製品も本日より予約が開始され、米国での価格は1,199ドルから。
顧客への出荷は4月9日が予定されており、現在はWindows 11 Proのダウングレード権を利用したWindows 10 Proをプリインストールの出荷期限である3月31日を越えてからの出荷となるため、Windows 10 Proをプリインストールした製品は用意されない。
ただし、OSとしてWindows 10 Proの動作検証は行ばわれており、2025年10月のWindows 10のEoSまでは、ユーザーが自分でWindows 10へのダウングレード権を行使してWindows 10 Proをインストールして利用することは可能だ。
Copilotは今後のWindowsの中核的な存在に
このほかイベントではCopilotの動向について解説がなされた。
Microsoftは昨年(2023年)の11月に開催したイベント「Ignite 23」において、同社 CEO サティヤ・ナデラ氏が「MicrosoftはCopilot」の会社になると宣言し、同社の生成AI由来の各種サービスとなる「Microsoft Copilot」(以下Copilot)を軸にした企業戦略を打ち出している。
もともとCopilotは、Bing Chatの名称で呼ばれていたことからも分かるように、LLM(大規模言語モデル)を活用した対話型AIサービスとしてスタートしたが、その後Microsoftの生成AIを活用したサービスはCopilotにIginite 23のタイミングで統一されて、今に至っている。
そのCopilotのWindows版が「Copilot in Windows」になる。Microsoft Windows Enterprise担当 シニアディレクター メリッサ・グラント氏は「Copilot in Windowsは、Windowsのオーケストレーターになっていく」と述べ、Copilot in Windowsが、ユーザーが仕事を始めるにあたって最初のタッチポイントになり、ビジネスパーソンがCopilotと対話型でさまざまなやりとりを行なうことで生産性を向上させることが可能だと説明した。
既にCopilotのアイコンで呼び出せるCopilot in Windowsには2つのモードが用意されている。1つは従来Bing Chatと呼んでいた「Copilot in Bing」の機能で、WebブラウザでCopilot in Bingを利用したときと同じ対話型AIの機能を利用できる。
それに対して、Copilot for Microsoft 365を契約している企業の従業員や個人事業主は、右上に「職場/Web」と表示されており、「Web」にした場合にはCopilot in Bingの機能を利用でき、「職場」にするとCopilot for Microsoftの機能を利用して、職場のデータ(Entra IDでアクセス可能なOneDrive for BusinessやExchange電子メールなど)を参照しながら対話型AIの機能を活用できる。
また「/」を利用してローカルのファイルを指定して、Copilotに処理をお願いすることなども既に可能になっている(ただし、現状ではクラウドにそのファイルはアップロードされるので、企業によってはそうした使い方を許可していない場合もあるので注意)。
従来であれば、Outlookを開いてスケジュールを確認したり、電子メールを読んだりしていたと思うが、今後はCopilot in WindowsでOutlookに入力しておいたスケジュールを確認したり、関連する電子メールが探して内容を要約してくれるなどが可能になる。
また、今回MicrosoftはクラウドPCのサービスであるWindows 365でもCopilot in Windowsが利用になったことを紹介したほか、「Windows 365でより高いセキュリティを実現するために、デスクトップにウオーターマークをいれる機能、そしてそもそも画面キャプチャを禁止する機能を追加する」(グラント氏)と述べ、エンタープライズがクラウドPCを活用する上での懸念に対応することを明らかにした。
これらの機能は既に実装されているシングルサインオン(ローカルのPCにログインするのと同時に、Windows 365にログインできる機能)やNFCのセキュリティキーを利用してログインする機能などを合わせて利用することでより高いセキュリティを実現できると説明した。
このほか、そうしたWindows 365の管理をAIの助けを借りて行なえる「Windows 365 AI Recommender」を導入し、Windows 365を利用しているエンタープライズの管理者が、オーバースペックになっていて無駄なコストがかかっているWindows 365の仮想マシンを見つけて適正なスペックに変更する機能などを紹介した。
グランド氏は「このようにWindows 11にはさまざまな新しい機能を実装している。来年10月に予定されているWindows 10のEoS(サポート終了)に向けて移行するベストタイミングを迎えていると思う」と述べ、エンタープライズの早期のWindows 11への移行を促した。