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データ急増のAI時代に超大容量HDD技術で応えるSeagate
2024年1月25日 18:17
Seagate Technologyは17日(米国時間)、容量30TB超のHDDを実現する新プラットフォームとして「Mozaic 3+」を発表した。これを受け、本プラットフォームに関する国内向け説明会が25日に開催された。本稿ではその模様をお届けする。
AI時代に欠かせないHDDの容量拡張
まず、日本シーゲイト株式会社 代表取締役社長の新妻太氏が登壇し、Mozaic 3+プラットフォームの開発に至った経緯などについて説明を行なった。
約50年の歴史を持つHDD業界だが、データ生成と保存するデータの増加によって技術革新を繰り返してきた。IDCの調査によれば、2022年から2026年にかけて、データの生成量は2倍になるとされており、年間平均でみると30ZB(ゼタバイト)にもなる。一方で、ストレージインフラは毎年2ZBしか作られていないのが現状で、データの多くが利用されずそのまま削除されているという。
そのような状況の中、AIの時代が到来しており、企業にとってデータの多さは優位性となり、よりよいサービスの提供につながると説明。企業にとってデータセンターの整備は、AI製品の加速化や新たな収益機会をもたらすといった点でチャンスとなる一方、スペースやコストといった点で課題にもなるとした。
その上で競争優位性を保つために、ストレージインフラの効率的な拡張やデータセンターにおける物理的スペースの有効活用、総所有コスト(TCO)や持続可能性の最適化が求められるとし、Mozaic 3+プラットフォームはこれらを顧客に対して提供できるとアピールした。
HDDの容量増加には、プラッタ自体を増やす方法と、プラッタへの記録密度を高める方法の2つが主に挙げられるが、Mozaic 3+は後者を大幅に改善。同社製の従来の16TB HDDと比べた場合、1プラッタあたりの容量を1.78TBから3TBへと引き上げており、データセンターの専有面積はそのままに約2倍の容量を実現できるとする。
また、1TBあたりの消費電力についても、0.59W/TBから0.35W/TBへと開く40%削減。記録密度を高めると、容量の増加に対し、プラッタの枚数はリニアに増えないため、部品点数の増加を抑えられる。従って、エンボディドカーボン(内包二酸化炭素排出量)も1TBあたり55%削減できるとしている。
Mozaic 3+を採用したハイパースケールデータセンター向け製品は、すでに出荷を開始。3月までには認定が完了する見込みで、量産体制に移行する予定だという。
長年開発のHAMRを統合したMozaic 3+。今後数年で1プラッタ5TB超も
また説明会では、Seagate Research 副社長のEd Gage氏から、Mozaic 3+プラットフォームに関する解説も行なわれた。
Mozaic 3+は、同社が長年開発を進めてきたHAMR(Heat Assisted Magnetic Recording、熱アシスト磁気記録)と呼ばれる技術など、記録密度を向上するための技術を統合したプラットフォーム。プラッタあたり3TB超の記録容量を実現できるとする。従来のPMR(Perpendicular Magnetic Recording、垂直記録方式)で記録密度を高める上で課題となってきた記録メディア、記録ヘッドの両面から改善を図ったものになる。
記録メディアについては、新たに超格子プラチナ合金メディアを開発。鉄とプラチナの層を使って原子を適切に配置することで、磁性微粒子内のエネルギー密度を劇的に向上しており、PMRで用いられるコバルト-プラチナ合金と比べて、保磁力を10倍以上に高めた。これにより、微細化してもデータを極めて安定した状態で維持できるという。
記録ヘッドについては、レーザーで記録メディアを熱し、磁性を弱めてデータを書き込むHAMRの技術を導入。10~20nm単位の小さな領域に対し、加熱と冷却を2ns以内で行なうという。Mozaic 3+においては、ナノフォトニックレーザーなどの加熱部分と磁化を行なうマグネティックコアからなる書き込み部分のプラズモニックライター、読み出し部分の第7世代スピントロニックリーダー、これらを制御する統合コントローラで構成される。
今後数年間のロードマップとしては、Mozaic 3+に続くものとして、プラッタあたり4TB超のMozaic 4+、5TB超のMozaic 5+をすでに実証済みと説明。Mozaicプラットフォームはさらなる拡張が可能で、研究グループでは現在、8~10TBを実現するプラットフォームの開発に注力しているという。
そのほか説明会会場では、Mozaic 3+プラットフォームを採用したHDDの展示も行なわれた。