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安価に作れる「ナトリウムイオンバッテリ」実用化に一歩前進

 東京理科大学の研究グループは、現在主流のリチウムイオン電池より安価に製造できる「ナトリウムイオン電池」用の新たな負極材料「ZnO鋳型ハードカーボン(HC-Zn)」の合成に成功したと発表した。現行の商用リチウムイオン電池に匹敵する高いエネルギー密度を実現できる一方で、リチウムやコバルトといった高価な元素を使用しないため、リチウムイオンの代替として期待される。

 ナトリウムイオン電池において、ナトリウム-グラファイト層間化合物は熱力学的に不安定であるため、グラファイトを負極として使用できず、代わりにハードカーボンが使用される。その中で容量を向上させるためには、イオンの貯蔵に関わるハードカーボンの細孔構造を最適化する必要があった。

 そこで研究グループは、マグネシウム(Mg)、Zn(亜鉛)、Ca(カルシウム)のグルコン塩酸を出発原料とし、従来と同様の鋳型法で各ハードカーボンを合成。さまざまな評価を行なった結果、HC-Znがもっとも優れた電極性能示したという。

 また、グルコン酸亜鉛と酢酸亜鉛の比率が75:25のものを負極材料としたナトリウムイオン電池を制作し、電池の性能の評価を行なったところ、エネルギー密度は312Wh/kgに達した。これは現在広く使用されているリチウムイオン電池と比較して同等であり、その有用性が実証されたという。

放電容量の比較

 今回の研究は、希少元素を使わないナトリウムイオン電池やカリウムイオン電池の大容量化/好エネルギー密度化に寄与し、蓄電池を利用したエネルギー変換の低環境負荷化、低コスト化に貢献できるとしている。