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世界最薄/最小の折りたたみPCと、世界初の家中持ち歩きAI PCはどうやって生まれたのか？
2023年10月16日 06:05
HPは、先日(2023年10月5日)のイベントImagine 2023で、2つのPCの新たなフォームファクタ、そしてその利用スタイルを紹介した。
1つは、既発表のSpectre Foldable PC。世界最薄かつ最小の17型折りたたみPCで、ハイブリッドライフスタイルを想定して設計された3-in-1デバイスだ。当初、米国と英国市場向けに9月に発表され、今回は、さらに11か国(オーストラリア、フランス、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が追加展開されて発売の予定だという。
もう1つはEnvy Move 23.8 inch All-in-One PCで、こちらは、部屋から部屋へと移動させて使うことを想定した23.8型のオールインワンPC。あらゆる部屋を多機能ワークスペース、エンターテイメントハブ、フィットネス エリアに変える仕事と遊びでの相互利用を提案する。
基調講演に続くステージには、Personal Systemsグループのデザイン部門グローバル責任者Stacy Wolff氏が登壇、これらの新しいフォームファクタについて詳細を説明した。
Spectre Foldable PCは、17型のOLEDディスプレイを装備した折りたたみ型PCだ。HPではこのデバイスを、クラムシェルノート、タブレット、デスクトップという3つの形態に変化させることができるとし、デバイスの持つフレキシビリティを再定義、究極のハイブリッド体験を提供するという。
「キーボードがマグネットで画面に吸着し、その吸着位置に応じてフォームファクタが変わります。折りたたんだ半開きの状態で画面半分をキーボードで覆った状態では12.3型のクラムシェルノートPC、そのキーボードを半分ずらすと、スライドパッド部分が画面外に飛び出し、手前画面半分が顔を出します。これで表示領域が14型の画面に拡張されます。持ち運び時は折りたたんでコンパクトな12.3型サイズです。
私たちは、ケーブルがたくさんあり、デバイスに接続する方法についての動きが妨げられてはいけないと考えました。つまり、その接続をワイヤレスにしたいということです。キーボードとペンの両方です。そのためには、キーボード自体に誘導コアを取り付ける必要があります。そこで、キーボードにはバッテリと誘導コイルを内蔵しました。
スタンドも背中部に装備し、開いた状態で120度の角度をキープして自立するようになっています。装着時に充電が行なわれたキーボードは画面から取り外して使ってもワイヤレスで機能します。このときは、17型の画面とワイヤレスキーボードを使ったデスクトップPCですね。そして、タッチやペンで操作するタブレット。まさに、3通りのフォームファクタに変幻自在のモバイルオールインワンになっています」(Wolff氏)。
Wolff氏は、この製品がハイブリッドライフを中心に設計された商品であるという。同氏は、ハイブリッドライフについて考えるとき、それはモビリティに関するものであり、柔軟性の問題であるともいう。そして、その柔軟性はテクノロジ企業として彼らが適切に対処しなければならない最大の事柄の1つだとも。
この製品で達成している重量は、17型のタブレットで約1.35 kgグラムだ。12型のタブレットを2つ並べるとこの重さになるが、この折りたたみフォームファクタなら1つの連続した大画面が得られる。そして、意外にも17型の大画面タブレットとして手で支えるときに、重量バランスの偏りを感じない。
2.5Kの解像度を持つディスプレイは大きな電力を消費する。そんなデバイスで適切なバッテリ寿命を実現するには、大きなバッテリパックが必要になるのは明らかだ。
巨大なバッテリパックをシステムに組み込むだけでは、デバイスの厚みがさらに増加してしまう。だからといって、デバイスの片側に大きなバッテリ パックを置くと重量のバランスが取れなくなってしまうと彼らは考えた。タブレットとして扱う場合に、これは大きな問題となる。そこで、彼らはバッテリを分割して配置することにしたのだ。
Spectre Foldable PCは、こうした細部にわたる検討が繰り返し行なわれて生まれたデバイスだ。ハイブリッドでフレキシブルな新たな時代を想定するデバイスとしてHPは提案する。
一方、Envy Move 23.8 inch All-in-One PCは、家の中の好きな場所でコンテンツを体験できる新しい方法を提供するユニークなフォームファクタだ。ゲーム、勉強、仕事、視聴など、その瞬間に最適なスペースに持ち上げて持ち運ぶことができる。
「家の中の好きな場所でコンテンツを体験できる新しい方法を提供するユニークなフォームファクタです。このデバイスは世界で唯一の移動可能なオールインワンPCであり、家のどこにでも設置できるように設計されています。
その多用途性により、仕事用デバイスとしても、エンターテイメント用デバイスとしても、さらにはオンデマンドのワークアウトのエクササイズコンパニオンとしても機能します。また、複数の家族がいる家庭の場合、このフォームファクタは、誰でも家のどの場所でも使用できる共有可能なハブとして役立ちます」(Stacy氏)。
このデバイスの前提として、人間は、家の中を歩き回ることができるモビリティを備えているとStacy氏はいう。臨場感あふれる大型スクリーンも備えていて、キッチンやキッチンのテーブルに持って行きたいなどと心から思うようなオールインワンになっていることを強調する。
本体はバッテリも内蔵し、実際に稼働させたまま持ち歩くことができる。彼らが数年前にこの製品を開始したときは、コロナ禍の真最中だった。それでも彼らはいくつかの家庭に行き、実際に世界の人々と一緒に過ごしたという。
彼らが地球を一周し、人々の家を見ながら、実際に機能するプロトタイプを作り、彼らがそれを持ち上げたり、家の中を移動したりできるようにしながら完成にこぎつけた。テーブルの上でも、カーペット敷きの床でも、ツリーハウスでも、パティオでも、さらには風呂やトイレでも。あちこちに持ち運べるPCだ。
ディスプレイ裏背面部にはシンプルなハンドルを折りたたんで収納できるようにした。実際にはマグネットで所定の位置にカチッとはまり、それを掴んで持ち運べる。角度調節機能も必要だから、前後に傾けることができる機構も備えた。
ポーチについても同様だ。キーボードを収納できる場所が必要だからだ。彼らはデザインをあれこれ考えながら、最終的に非常にシンプルな方法を考えた。後ろにある小さなポケットで、移動中にキーボードを隠しておけるようにしたのだ。
製品を完成させる過程で、彼らは人間の仕事経験が2フィート(1フィートあたり30cm換算で約60cm)で変化することに気がついた。2フィートを超えて6フィート(180cm)離れると、同じデバイスがストリーミングデバイスに変わる。
つまり、6フィートの位置に座ると、もう仕事をしない。Netflixを操作している。ついさっきまで、Excel ドキュメント内を移動するためのタッチ パッドであったものが、ムービーを移動および閲覧するためのタッチパッドになっている。
「リモコンを使って映画を検索したことがありますか? ものすごく難しいですよね。キーボードを少し打つだけで、本当に苦痛がなくなりました。繰り返しになりますが、問題を徹底的に考えることが私たちの目標でした。アダプティブサラウンドサウンドを備えた世界初のオールインワンですから、どこにいるか、誰と一緒にいるかを感知して、どの部屋でも臨場感あふれるオーディオ体験を実現します。
ほとんどの人はリビングルームで使用しますが、トイレやお風呂で使用する人もいます。リビングルームでの利用バリエーションは多岐にわたります。おそらく全員のためのTVとして、家族全員がお気に入りのTV番組を視聴したり、テーブルの上において生産的なビデオ作業や会議を行なったり、ソファに座って1人でゲームを楽しんだりするために使用します。
仕掛けたトリックは、あなたとデバイスの間の距離を監視することです。デバイスの近くに人がいる場合、実際にはステレオオーディオが再生されます。でも、デバイスから離れると、それは特別なサウンドになり、他の人もサウンドを楽しめるようになります。システムが動くように設計しているだけでなく、楽しめるように設計しているのです。これは私たちがシステムに組み込んだ小さな喜びです。きっと気に入ってもらえるでしょう。
実は、この中には小さなAIが入っています。先ほど話したように、AIは未来です。オールインワンの世界で最もインテリジェントなカメラであるHP Wide Vision 5MPカメラを使って、家族全員とビデオチャットできます。内蔵シャッターを使用してプライバシーを確保するためにカメラのスイッチを手動でオフにしてのぞき見を防げます。AIベースの画像信号プロセッサにより、デバイスは外出時に自動的に画面をオフにし、戻ってくるとすぐに起動します。
しかも、幸福度を向上させるために、スクリーンタイムと距離を示すAIベースのウェルネスリマインダーも備えています。オフィスとパティオの間を移動するときにも最適です。周囲光センサーが環境と時刻に基づいて明るさを自動的に調整してくれるからです」(Stacy氏)。
ステージ上でのセッションが終わったあと、Wolff氏に声をかけられた。同氏とは面識がある。2007年に初めて会ってインタビューし、その後も数年に一度は来日ごとに記者会見等で挨拶をしてきたが、ちゃんと覚えてくれているようでうれしかった。当時のインタビューの内容を読み返すと、当時の同氏の洞察力がいかに正しかったかを実感できる。足繁く来日する同氏の行動力にも感心する。
セッション後でもあり、今回の新しい2つのデバイスの感想を求められたわけだが、すでに23.8型のモニターをスーツケースに入れて持ち運んでいるような立場として、PC、モニター、バッテリという3つの要素の中で、もっともサステナブルなデバイスとしてのモニターのみで構成することはできなかったのかと聞いてみた。フォルダブルモニター、大型ポータブルモニターという発想だ。PCはNUC的なサイズのものをアタッチするようなイメージでもよさそうだ。
Wolff氏は、もちろんそれらの方向性も検討したが、今回はPCとしてのフォームファクタでいくことにしたと即座に答えた。いわゆるAI PCのコンセプトの中では、これらのデバイスも単体で稼働するPCでなければならなかったということのようだ。最初のAI PCではあるが、本番はこれから。HPとWolff氏が描く未来が楽しみだ。