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風雨で倒れてもすぐ立ち直る農作物の作成につながる研究結果。金沢工大が公開

国際宇宙ステーションの無重力で発芽生育したシロイヌナズナ

 金沢工業大学応用バイオ学科 辰巳仁史教授らによる研究グループは、MCA1と呼ばれるイオンチャネルが植物の根の絡みつき方に影響を与えていると明らかにした。

 重力は植物の成長と発育を決める重要な環境刺激とされ、植物への重力の作用の仕方を変えると、速やかに反応することが知られている。細胞膜にあるミクロの穴(イオンチャネル)で倒されたことを感知しており、中でもMCA1と呼ばれるイオンチャネルは、重力の影響を受けて開くとカルシウムイオンを細胞内に移動するほか、根っこの先端が硬いものにぶつかった際にも役立っていることが分かっている。

 研究グループでは、野生株、MCA1が機能しないもの、MCA1自体を光るようにしたもの、細胞内カルシウムイオンを検出できるエクオリン導入株の4種類の遺伝子が異なるシロイヌナズナの種子を用意。生育培地とともに国際宇宙ステーションへ運び、細胞培養装置内で、地球と同じ1Gと、ほぼ無重力のμGの2種類の生育環境で発芽育成し、地球に戻して様子を分析した。

 その結果、宇宙の無重力環境では、植物を支えるために近くに用意したメッシュに植物の根が絡みつくようになった。重力環境ではこういった様子は見られず、変異体の分析などとあわせて、根の絡みつきがMCA1によって制御されているらしいことが分かったという。

 今回の結果は、根の伸長におけるMCA1の機能的な役割の解明に役立つとしており、風雨で倒れてもすぐに立ち直ったり、地球より重力が小さい環境でも育ったりといった植物の作成につながるとしている。