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Armとの協業など進展するインテルのファウンドリ事業。次世代プロセスも順調
2023年6月15日 06:46
インテル株式会社は14日、プレスセミナーを開催した。同社代表取締役社長の鈴木国正氏、同社執行役員 経営戦略室長の大野誠氏が登壇した。
冒頭で鈴木氏は、Intelの共同創業者の1人で、「ムーアの法則」の提唱者としても知られるゴードン・ムーア氏が3月に逝去したことについて触れ、業界にとっても大きな星を失ったことになり、特にIntelにとっては大きなニュースだったと述べた。
加えて、Intel CEOパット・ゲルシンガー氏がムーア氏の訃報に寄せたコメントについて、「ノーススター(道標)」という言葉がパットの気持ちを表わしていて、これからのIntelの姿を見せていると強く感じたと話した。
進展するファウンドリ事業。次世代プロセスも順調
続けて、同社が2022年12月のIEDM(IEEE International Electron Devices Meeting)にあわせ、2030年までに単一パッケージ上に1兆個のトランジスタの搭載を目指すと発表したことについて説明。従来比10倍の実装密度を実現する次世代3Dパッケージング技術や、原子3個分ほどの超薄素材の開発など、目標の実現に向けて確実に進展していることを示せたという。
IDM 2.0戦略のファウンドリ事業となるIFS(Intel Foundry Service)においては、Armとの間で4月、Intel 18Aプロセス技術で低消費電力SoCの開発を可能にする複数世代契約を締結。さらに、Amazon、Cisco、米国国防省による先進パッケージングの採用も発表した。
ファウンドリ顧客にとっての選択肢が広がることで、サプライチェーンの安定化に貢献できるとしたほか、チップレットのオープン規格であるUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)のコンソーシアムにおいても中心的な役割でサポートしていることも、非常に重要であるとした。
プロセス技術については、裏面電源供給技術の「PowerVia」、全周ゲート型(GAA、Gate All Around)トランジスタを実現する「RibbonFET」といった技術などとともに、「4年間で5世代のプロセスノードを投入する」という宣言通り、順調に開発が進行中。2024年投入予定のIntel 18Aおよび20Aについてもすでにテープアウトしており、社内のテスト機器で動作していると説明した。
ネットゼロに向けた取り組みでは、製造オペレーションやオフィスビルなど包括的なCO2排出量削減や、代替技術の開発による電量効率の向上、製品およびプラットフォームの電力効率向上による顧客のサステナビリティ目標達成の支援などを進める。
また、Intelと日本との協力分野についても紹介。日本政府とグローバル半導体企業とのラウンドテーブルにてゲルシンガー氏が、サステナビリティや次世代コンピューティング、国内企業との連携強化について言及したほか、理化学研究所と次世代コンピューティング分野における共同研究に関する覚書を締結するなど、Intelの日本への注力が高まってきていると説明した。
すべての人がAI技術を使える「AIの民主化」
続いて大野氏より、同社のAIに関する取り組みについて説明が行なわれた。
AI技術はすでにさまざまな産業で利用され、人々の生活にも多大な影響を与えている。昨今ではChatGPTやStable Diffusionといった生成AIモデルが登場し、より身近なものにもなっており、一種の社会現象とも言えると述べた。
Intelでは、こういったAI技術に対し、データのセキュリティ、プライバシー、信憑性といった点で課題や問題点がある状況であり、また、膨大な学習量にともなう消費電力やCO2排出量の増加も深刻になるとみている。
こういった状況に対し、Intelはすべての人類が広くアクセスできるAI技術を提供する「AIの民主化」の実現を目指す。
「責任あるAI」では、AI技術の開発や運用に関する社内外のガバナンス強化、ディープフェイクを検出するFakeCatcherなどの製品やソリューションの提供などを図る。一方「広範なAIプラットフォームとソリューション」では、幅広いポートフォリオやエッジ/クライアントでのAI処理を高速化するVPUの搭載といった取り組みを進めている。
デジタル人材育成はこれまでの「点」を「線」「面」へ
最後に鈴木氏から、デジタル人材育成に向けた取り組みである「インテル デジタルラボ」の展開についても説明が行なわれた。
同社ではパートナー企業とともに、STEAM教育を支援する取り組みとしてSTEAM Labを構築し、実証実験を継続中。CADや3Dプリンタを活用したものづくりや、Premiere Proを使った動画制作など、幅広く活用されているという。
より包括的な活動としては、STEAM Labに加え、コンテンツ制作のCreative Lab、AI教育のAI Lab、DX/DcX研修のDX/DcX Labを展開。それぞれに対して、同社が持つアセットを提供し、幅広いデジタル人材育成と地域へのデジタル実装、課題解決を目指す。
鈴木氏は、日本におけるデジタル人材育成に強く危機意識を感じていると述べ、先行事例を通じてできた「点」をパートナーや政府/自治体と連携して「線」「面」へと展開していく必要があり、ニーズと教育プログラムをマッチメイキングしていくプラットフォームを作っていきたいとした。