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Microsoft、ChatGPTとプラグインを共通化。生成AI製品で広範囲にサポート、コンテンツ認証にも対応

Microsoft 365 Copilotに組み込まれたJiraのプラグイン

 Microsoftは5月23日(現地時間、日本時間5月24日)から同社の開発者向けイベント「Microsoft Build」を開催している。

 Buildに先立って、Microsoftは報道発表を行ない、Microsoft Buildで発表される新製品やサービスなどに関する発表を行なった。その中でもっとも注目されているのは、MicrosoftがChatGPTと共通のプラグインを、同社の生成AI製品(Copilot)に導入することだ。これにより、サードパーティがChatGPT向けに作成したプラグインを、Microsoft 365 Copilot、Dynamics 365 Copilot、Windows CopilotなどのCopilotブランドで展開されている生成AI製品やBingチャットなどで利用できるようになる。

 また、Microsoftは生成AIが作成したコンテンツの安全性やコンテンツ生成の履歴などを残す事で、生成AIが作成したコンテンツの透明性確保を実現していく。AdobeやMicrosoftなどが中心になって規格策定を進めているC2PAのコンテンツ認証機能を、Microsoft Designer、Bing Image Creatorなどの同社生成AIサービスに実装する。

OpenAIのChatGPTとの提携をさらに拡大し、ChatGPTプラグインをMicrosoft Copilotシリーズで利用可能に

Microsoft 365 Copilotに組み込まれたプラグインが動作する様子、Teams上のCopilotがアトラシアンのJiraプラグインを利用している様子

 Microsoftは今年(2023年)に入ってから、大規模言語モデル(LLM)を利用した生成AIへの対応を急速に進めている。OpenAIとの提携により実現したGPT(Generative Pre-trained Transformer)を活用したBingチャットのサービスを提供開始したことはその代表例と言える。

 そして、3月には「Microsoft 365 Copilot」の構想を明らかにし、その後も「Dynamics 365 Copilot」、「GitHub Copilot X」、「Copilot in Microsoft Viva」、「Microsoft Security Copilot」などの「Copilot」ブランドの生成AIを利用した新機能を、既存のサービスやアプリケーションなどに実装していく計画を矢継ぎ早に明らかにしてきた。

 そうしたMicrosoftの大規模言語モデルを利用した生成AIサービスの特徴は、大規模言語モデルを自社で開発するのではなく、Microsoftにとっては競合になる可能性を秘めているOpenAIの大規模言語モデルとなるGPT(GPT-3/4)を活用していることで、従来のようにまずは自社で開発するというMicrosoftのやり方とは180度戦略を転換したようなやり方にある。自社開発にこだわったGoogleなどが出遅れているという印象を持たれている中で、Microsoftとしては自社で開発するという名を捨てても実を取るという現実的な戦略に徹していると言えるだろう。

 今回発表した自社の生成AI系サービスにOpenAIが規定しているChatGPTのプラグイン(OpenAI側の名称はChat Plugins)を組み込めるようにするという発表は、そうした戦略をさらに加速するものとなる。発表によれば、OpenAIが規定しているプラグインの標準をそのままMicrosoftが受け入れ、自社の製品に実装していく。これにより、サードパーティがChatGPT向けに用意するプラグインは、そのままMicrosoftのCopilotシリーズでも動作することになる。

 こうしたプラグインはChatGPTやBingチャットなどのLLMを利用したチャットボットなどの機能を拡張することに利用できる。たとえば、レストラン予約サービスのプラグインをChatGPTやBingチャットに組み込むと、レストランを検索するのと同時にレストランの予約までをチャットボットから行なえるようになる。

 そうしたChatGPTのプラグインがMicrosoft 365 Copilotでも利用できれば、たとえばOutlookで会食予定を入れる時にCopilotに日時や希望の食事などを指示することで、自動でレストランの予約が行なわれる、将来的にはそういうことができることになると考えられる。

 Microsoftによれば、こうしたChatGPT互換のプラグインのサポートは、Bing、Dynamics 365 Copilot、Microsoft 365 Copilot、Windows Copilotなど複数の製品でサポートされる計画だ。

AIが生成したコンテンツの安全性を実現するサービスや生成AI機能がコンテンツ認証(C2PA)に対応

 Microsoftはそうした生成AIの安全性を実現する、新しいサービスのプレビュー提供を開始する。「Azure AI Content Safety」がそれで、同社のクラウドベースのAIサービスとなる「Azure AIサービス」の1つとして提供される。

 具体的には常時コンテンツ(写真やテキスト)などを開始して不適切なコンテンツがあった場合にフラグを立て、フラグが立ったコンテンツに関しては人間のモデレーターがチェックしてさらなるアクションが必要かどうかを判断する。

 こうした機能は、GitHub Copilotや新しいBingなどで利用されているサービスとなるが、それをサードパーティの開発者も利用できるようにするものがAzure AI Content Safetyとなる。

 また、Microsoft自身が提供している生成AIとなる「Microsoft Designer」、「Bing Image Creator」に関しても、コンテンツ認証機能の提供を開始。ユーザーが生成するコンテンツが適切に生成されているかを監視。暗号理論方式の履歴および署名を活用してメタデータを付加することで、それがどのようなデータから生成されているかなどを追いかけることを可能にする。それにより、生成AIが生成したコンテンツに対して著作権侵害などの疑念を持たれないようにする取り組みを進めていく。

 このコンテンツ認証の取り組みには、Adobe、Microsoftなどの業界各社が参加している業界標準化団体C2PA(Content Provenance and Authenticity)の仕組みが採用されている。C2PAではAdobeなどが中心になって策定されたCAI(Content Authenticity Initiative)が策定した規格がベースになっており、コンテンツにローカル、Web上の両方にメタデータを残す事が可能になり、そのコンテンツが不正に生成されたりしたものではないことを、利用者が追いかけることが可能になる。

 既にAdobeはPhotoshopおよびLightroom CC(Classicではないクラウド版Lightroom)にC2PAの規格に基づくコンテンツ認証の機能を実装しており、今回MicrosoftがMicrosoft Designer、Bing Image Creatorに関してもC2PAのコンテンツ認証情報機能に対応することを明らかにしたことで、コンテンツ認証の仕組みの普及に向けて弾みがつきそうだ。