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攻勢をかけるGIGABYTEのノート戦略を本社責任者に聞く

Division Director, Laptop Product DivisionのKen Chen氏

 マザーボードやビデオカードなどで定評あるGIGABYTEだが、数年前からノートPC分野でも知名度を高めている。マニアな方はかなり以前から同社がノートの製造を行なっていたことはご存知かもしれない。しかし、多くの方がGIGABYTEのノートを耳にするようになったのは近年、それこそゲーミングのAORUS、クリエイター向けのAEROといったシリーズを展開するようになってからのことだろう。

 今回、台湾新北市新店區にあるGIGABYTEのサービスセンターを訪れ、ノート部門最高責任者のKen Chen氏に、同社のノートの特徴やこだわり、日本での展開などについて話をうかがった。インタビューには、Senior Deputy Manager, Laptop Product DivisionのCharles Chen氏、Sales Manager, Laptop Product DivisionのMarvin Huang氏(以下、敬称略)も参加している。

GIGABYTEノートの3本柱となるAORUS、AERO、GIGABYTE Gaming

Q:まず、GIGABYTEのノートビジネスについて、ご紹介いただけますか。

Ken Chen:GIGABYTEは、マザーボードやビデオカードで長年培った技術力をもとにノートに参入しました。最も重視しているのは性能と品質です。ご存知の通り、GIGABYTEのノートはハイエンドモデル中心のラインナップで、特にゲーマーに向けたモデル、コンテンツクリエイターに向けたモデルに注力しています。

AORUS 17X(2023)とAERO 14 OLED(2023)

Q:直近の2023年モデルの特徴について教えてください。

Ken Chen:すでに2023年の新製品をリリースしていますが、まず設計部分をアップグレードしました。たとえば前世代比でバッテリ容量(Wh)を増やしつつも、より薄く、より軽くといった方向で進化しました。もちろん性能も上げており、ゲーミングモデルならより高いGPU TGP(Total Graphics Power)を実現しました。

 現在の主な3つのシリーズを説明しますと、まずゲーミングハイエンドの「AORUS」。次にクリエイター向けの「AERO」。そしてミドルレンジユーザー向けに「GIGABYTE Gaming」シリーズがあります。

 2023年モデルでは、AORUSは性能向上を一番に重視、AEROはよりクリエイター好みのスタイリッシュなデザインへ、GIGABYTE Gamingは性能、スペックを犠牲にせず価格を抑えることができました。

Marvin Huang:ベゼルにもご注目ください。狭額縁ベゼルでも他社製品はまだ5~6mmほどあると思いますが、GIGABYTEのノートでは3~4mmほど。これはとても美しいです。

AORUS 17X

GIGABYTEノートはクリエイター向けハイエンドに強み

Q:GIGABYTEノートの3つのシリーズで、販売比率などはどのようになっているのでしょうか。

Ken Chen:我々はAORUSとAEROをハイエンド、GIGABYTE Gamingをミドルレンジといったように2つに分けて見ています。ハイエンドとミドルレンジの割合は半分半分です。GIGABYTEのノートの強みはやはり高性能です。まず市場の背景から説明しましょう。

 ゲーミングノートの需要は2010年頃から爆発的に成長し始めました。ゲーミングノート市場には、すでに多くのブランドが進出しており、今後も成長していくにせよ競争は激しくなっています。しかし、GIGABYTEにはこれまで培ってきた開発力があり、製品も性能が高い。この点はほかのブランドにも負けてないと思っています。

 クリエイター向けノートの需要は5年前くらいから徐々に拡大してきたものの、まだカテゴリ的には大きくありません。この分野にはまだライバルブランドが多くなく、今後もまだまだ成長の余地があります。GIGABYTEとしても、もっと頑張れる分野だと思いっています。

 AEROシリーズは5年前にリリースしましたが、その頃すでにクリエイター向けノートというニーズがあると認識していました。ゲーミングとクリエイターは性能に対するニーズなど似ているところは多いと思います。しかし同じデザイン、同じスペックのものをクリエイター向けPCとして販売しても、おそらくプロのクリエイターにとっては物足りないものと思えるのではないでしょうか。やはりクリエイターにはクリエイター向けのPCを、ゲーマーにはゲーミング向けのPCをと分けた方がよいと考えています。

Q:AORUSとAEROはここが違うというところを教えてください。

Ken Chen:分かりやすいのは外観デザインです。ご覧の通りAORUS 17Xはブラックで角ばって、RGB LEDが散りばめられて、いわゆるゲーミングデザインです。一方、AEROはマット塗装で明るいカラーリングを採用しつつ、シャープでスタイリッシュに仕上げています。その方がクリエイターの好みにマッチしているからです。

AORUS 17H

 次にモニターのスペックです。AEROは業界に先んじて、デュアルキャリブレーションを導入しました。ここは誇れるところだと思います。デュアルが意味するのはカラーマネジメント大手2社のPantoneとX-Riteです。

 AEROでは出荷前に1台1台すべて、これら2社の手法によるカラーキャリブレーション作業を行なっています。お手元に届いた時から正しい色なのでキャリブレーション不要で、すぐにお使いいただけます。

南平工場の一室で「デュアルキャリブレーション」のデモを行なってもらった。専用治具に固定されたカラーセンサーをノートのディスプレイにかぶせ、一連のカラーキャリブレーションを行なう

 また、AEROでは数年前から一部モデルでOLEDパネルを採用していますが、2023年モデルのAERO 16、AERO 14シリーズはともに全てOLEDパネル搭載モデルのみとしました。コントラスト比が高いOLEDパネルは、クリエイターのニーズにマッチしています。

 一方、AORUSではパネルに求められるスペックも異なります。色再現性も確かに重要なスペックですが、ゲーマーは優位性を発揮できる高リフレッシュレートや速い応答速度を求めます。

 そして性能に関する部分も異なります。AORUSではパフォーマンスを引き出せるようGPU TGPを高く設定していますが、AEROでは性能も重要ですが静音性とのバランスがより求められます。高性能でありつつ冷却機構は静か、そして長持ち、信頼性も必要です。

Q:冷却機構について、AORUSとAEROではどのような違いがありますか

Charles Chen:AORUSはGPU TGPを高く設定するため、クーラーにはベイパーチャンバーを採用しました。ベイパーチャンバーは一般的に用いられるヒートパイプと比べ、冷却性能が20%以上向上します。

 一方、AEROはバランスを追求するためヒートパイプを用いたクーラーですが、スリムボディを実現するためにクーラー自体もより薄く設計しています。

Ken Chen:ソフトウェア側の調整も大事です。CPUとGPUのパフォーマンス調整は難かしいですが、製品ごとにファン回転数のチューニングをしています。AEROとAUROSでユーティリティは統一されていますが、製品ごとにパラメータは分けて調整しています。

Q:GIGABYTEノートでは背面にもインターフェイスを置いていますね。

Ken Chen:(使い勝手の点で)インターフェイスは多ければ多いほどよいです。できるだけ豊富なインターフェイスを搭載したいと思っています。

 ただし、右側面はできるだけ少なめにしています。これは、マウス操作で手を動かす際にできるだけ広いスペースを確保するといった意味合いです。そのほかほとんどのポートは左側面と背面に。現行モデルでは背面に電源とHDMIのような映像出力を置いています。

AERO 14 OLEDの右側面インターフェイス
AERO 14 OLEDの背面インターフェイス
AORUS 17Xと背面インターフェイス

日本市場はAERO推し。Core i7信奉や大容量メモリ好きといった特殊性も

Q:日本市場についてどう感じていますか。

Marvin Huang:日本市場での競争は激しいと思います。ゲーミングだけをとっても、グローバルメーカーだけでなく日本ローカルのメーカーもたくさんひしめき合っています。日本市場に本格参入(再参入)したのは4年ほど前で、ほかのメーカーと比べるとまだ歴史が浅いと思っています。

 GIGIABYTEノートが強いのはハイエンド製品です。特にAEROは、プロクリエイターが求めるさまざまなスペックを満たしています。今年発売したAERO 16、AERO 14はこれまで以上に機能豊富で、前世代よりも軽くなりながら性能を向上させていますのでクリエイティブユーザーも満足できるのではないでしょうか。

 今後も日本のハイエンドユーザー向けに、さらにハイエンドのモデルを展開していきたいと考えています。

Q:日本市場のノートニーズに特徴はありますか。

Marvin Huang:まず日本市場ではCore i7需要がほかの国よりも高いです。たとえば新旧モデルの切り換わり時、最新のCore i5モデルと旧世代Core i7があるような状況で、日本人はCore i7を選びがちな傾向にあると感じています。最新のCore i5は旧世代のCore i7よりもコア数が多いことがありますが、消費者はそうしたスペックまでは知らない。こうした点は我々も正しい情報を伝えていく必要があると思っています。

 ゲーミングモデルについてはその点は問題ないと思います。ゲーマーが重視するのはGPUですから。GPUが最新世代であることが最も重要でしょう。

 また、大容量メモリのニーズも高いです。日本では16GB、32GBを求める声が大きいですね。こうした需要にはできるだけ応えていきたいと思っています。現在、GIGABYTE認定店ではメモリやストレージのカスタマイズ購入ができます。大容量メモリをお求めの方はGIGABYTE認定店をご利用ください。

Q:日本市場ではどのシリーズが推しでしょうか。

Marvin Huang:日本はクリエイター大国です。大手3社のカメラメーカーや、世界的ゲームメーカーもあり、ほかの国と比べてもクリエイター需要が高いと思います。だからAEROがイチオシですね。

 日本ではクリエイター業界の中でも法人、特に研究/専門機関での採用が多いとも感じています。先のGIGABYTE認定店はそうしたニーズにも対応できます。こうしたGIGABYTEノートが強い分野には今後も力を入れていきたいです。

Q:コロナ後の日本市場戦略について、これをしたい、やってみたいというのはありますか。

Marvin Huang:日本市場に本格参入してからまだ4年ということもあり、これまで店舗店頭における大型展示はしてこなかったのですが、昨年2022年はツクモパソコン本店で、2023年に入ってからはソフマップなんば店などでもGIGABYTEノートの大型展示を行なっています。日本市場のユーザーに向け、GIGABYTEのノートをアピールしていきたいと思っています。

 過去3年はコロナの影響などでイベントの開催も少なく、参加することも難しかったですが、今後は積極的に参加したいと思っています。日本はほかの国と比べても一般のコンシューマー市場だけでなく、法人、クリエイター業界での採用が多いと感じていますので、イベントに参加することで認知度を高めていきたいです。

Q:今後のGIGABYTEノートで注目してほしい点があれば教えてください。

Ken Chen:今後もGIGABYTEが得意とするところ、たとえば性能を向上させつつ、より薄型/軽量に改善できることを目指します。まだ詳細は公表できませんが、クリエイター向けのAEROではこれまでとはまったく形が異なる製品も開発中です。形、つまり見た目です。そしてもっとAI技術を使えるような製品になる予定です。

Q:ユーザーに向けて最後に一言いただけますか。

Ken Chen:私も日本市場の特殊性については理解しています。性能を重視しつつもデザインにも厳しい。GIGABYTEのノートが重視しているのもまさにここです。性能とデザイン両面で、これからももっと日本のユーザーに認められたいと思っています。

GIGABYTE本社地下にある実験室に潜入!電波暗室に無響室、各種試験がここで行なわれている

 GIGABYTE本社地下にある実験室も見学させていただいた。見学したのはGIGABYTEが行なっている製品試験のごく一部で、本社だけでなくそのほかの施設にもあるとのこと。今回は電波暗室による電磁波計測、無響室での動作音計測、そして耐静電気試験の様子を見学したのでその様子を紹介しよう。

電波暗室はノートなどの機器が動作中に発する電磁波を計測する。壁面には電波の反射を抑える(減衰させる)スポンジなどが張り巡らされ、アンテナによって計測を行なう。電波暗室での計測結果は解析用のPCに送られ、周波数ごとの電波レベルがグラフ化される
無響室は動作音を計測する施設。反響を抑える素材で壁面が覆われている。動作音計測は国際基準に則った機材、手法で行なわれる。CPU、GPUそれぞれの負荷を少しずつ変えて何度も計測し、そうした測定データをもとにファンの回転数などのチューニングを行なっている
耐静電気試験。PC操作時に静電気が生じた際、問題なくPCが稼働し続けられるかどうかを試験する。筐体部分やインターフェイス部分などさまざまな箇所で放電を行ない検証していく