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京大ら、スマートメーター/シティ向けWi-SUN FAN無線機の大規模実証に成功

 京都大学(京大)は3月30日、同大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループと株式会社日新システムズが、国際無線通信規格「Wi-SUN FAN」(Field Area Network)を用いた無線機の大規模高密度環境における通信試験において、全無線機の自律的なマルチホップネットワーク構築の確認および通信試験に成功したと発表した。

 同実証は、Wi-SUN FANがスマートシティでのセンサーネットワークとして利用されるケースを想定し、対応無線機400台を大学構内の6万8,000平方mの範囲に高密度に設置。結果、自律的にマルチホップネットワークが構築され、2日間を超える実証試験期間中、各無線機からの情報がデータ収集用基幹無線機(ボーダールーター)に対し、通信成功率97.1%以上で伝送できたという。

 無線機は複数の建物の影や奥側になる場所にも配置していたというが、Wi-SUN FANの自律的マルチホップネットワーク構築機能により、障害となる建物を迂回するようなネットワークが自動的に構築され、範囲内に設置された全ての無線機がネットワークに収容されたことを確認したという。

 また、この構築されるネットワークは設置環境に合わせ、通信成功率を向上させるように各無線機が考え、ネットワーク構成を変化させていることも確認できたとしている。

 京大と日新システムズは、2019年から大規模高密度ネットワーク構築の研究を開始。2021年には、マルチホップ接続を駆使し多数の無線機からの情報を1つの基幹無線機に集約し収集する試験機を用いて500台の機器接続に成功、2023年2月には1,000台の機器接続に成功していたが、いずれも無線機を全て研究室内に設置した状態で試験していた。実際に利用されるケースを想定し、実証を実施したのは今回が初という。

 研究グループは今回の成果に関して、市街地や住宅地、集合住宅などでも数百台のWi-SUN FANの自律的マルチホップネットワーク構築機能が有効に働くことが実証でき、今後実用化が進む次世代スマートメーターやスマートシティで利用されるIoT無線ネットワークの実用化に目途が立ったとコメント。今後の展開として、今回のフィールド実証で得たWi-SUN FANの有用性の周知、普及活動を行ない、防災や高齢者の見守り、地域インフラネットワーク構築などのさまざまな分野への導入、商用化を進めたいとしている。