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横浜国大、量子光源とメモリ間の長距離伝送に成功。量子インターネットの実現へ

長距離量子通信用の量子中継の概念図

 横浜国立大学の堀切智之准教授および洪鋒雷教授らの研究グループは28日、量子インターネット構築に向けた、長距離光ファイバー伝送による通信波長光源と量子メモリの接続に成功したことを発表した。高い量子通信速度を実現しうる多重化システムでの量子光源-量子メモリ間の長距離伝送はこれまで実現しておらず、本研究はそれを可能とする成果となるという。

 量子インターネットは、分散量子計算やクラウド量子計算、そして完全なセキュリティ(量子暗号)などを提供する次世代通信基盤として期待されている通信方式。この通信方式で必要な光は微弱であるため、量子インターネットで長距離通信を実現するには中継技術(量子中継)が必要となる。

 量子中継器は、量子もつれ光源と量子メモリ、そして光源とメモリをつなぐインターフェイス(波長変換、周波数安定化)を主な構成要素とするが、これまでは量子光源や量子メモリなどの要素技術の制約により統合が困難だった。

 本研究では、光共振器を用いた通信波長量子光源、周波数多重を可能にする量子メモリ、通信波長-量子メモリ波長間の波長変換と遷移周波数(波長)を安定化するシステムの3つを開発。周波数基準となる光コムを開発し、その基準を用いてすべての光を安定化することで、長期安定動作する長距離量子光源/量子メモリ接続システムを周波数多重可能な量子システムとして実現。量子光源からの2光子を10kmの光ファイバーで伝送し、波長変換した後、量子メモリへ保存/再生することに成功した。

 研究グループは今後、本研究で開発した量子中継器を複数つなげた量子中継技術の実証を通じて、量子インターネットの実装を目指すとしている。