ニュース

わずか1.8nmの強誘電体原子膜。名古屋大

 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学未来材料・システム研究所の長田実教授らの研究グループは20日、厚さわずか1.8nmという“究極な薄さ”を実現した強誘電体原子膜の合成に成功したことを発表した。

 原子レベルの厚さの2次元物質や新しい電子機能の開発が盛んに行なわれているのだが、重要なターゲットの1つにメモリ、センサー、アクチュエータ、振動発電などに利用される強誘電体がある。しかし、数nm程度への薄型化で強誘電特性が消失する「サイズ効果」が問題となっていた。

 数nmの“ナノシート”の合成が実現すれば、単位格子数個という臨界サイズでの新規物性の開拓や応用が期待できるが、強誘電体の代表例であるチタン酸バリウム(BaTiO3)などでは、従来の合成手法である層状化合物の剥離によるナノシートの合成が困難で、新しい合成方法の開発が待ち望まれていた。

 そこで本研究では、厚さ1nmの酸化チタンナノシートを利用し、それ自体が持つ高い反応性に着目。水・エタノール混合溶液中で水酸化バリウムと反応させることで、60℃の低音でBaTiO3ナノシートの合成を実現した。この手法では膜厚の制御も可能だといい、5/10/25時間と反応時間を変化させることで、2格子から6格子のナノシートの合成も実現したという。

 また、合成したBaTiO3ナノシートに対し、圧電応答力顕微鏡で強誘電特性を評価したところ、厚さ1.8nm(単位格子3個に相当)までは強誘電特性が維持されたが、厚さ1.4nm(同2個相当)では消失したことが確認できた。このため、単位格子3個の強誘電体が、自立膜としては最も薄い膜圧であることが確認でき、超薄膜における特異機能の解明やデバイスの小型化に重要な指針を与えるものとして期待している。