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第13世代Core正式発表。キャッシュ/Eコアを増量し性能が最大41%アップ。10月20日販売開始
2022年9月28日 01:20
Intelが、「第13世代Intel Core デスクトップ・プロセッサー」(以下第13世代Core)を発表した。開発コードネーム「Raptor Lake-S」で知られてきた第13世代Coreは、パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャを採用することで高い評価を得た「Alder Lake」こと第12世代Coreの成功を継承し、いくつかの改良を加えることで、シングルスレッドで15%、マルチスレッドで41%の性能を向上させている。
Intelはそうした性能を引き上げられた要因として、より進化したIntel 7のプロセスノードを採用したことなどによるクロック周波数の向上、キャッシュメモリ(L2とL3)の増大、そしてEコアが8コア(4コアクラスタ×2)増えていることが影響していると説明している。
第12世代Coreの成功を下敷きにして、高クロック化、キャッシュ増、Eコア増の改良を施した第13世代Core
第13世代Coreは、開発コードネーム「Raptor Lake」で呼ばれてきた製品で、第12世代Core(Alder Lake)の改良版となる製品だ。改良版ではあるが、Intelではシングルスレッドで15%、マルチスレッドで41%の性能向上があると説明しており、アーキテクチャが変わった時のような大きな性能向上が実現されているように見える。
性能が大きく向上している理由についてIntelは3つの改良を説明している。1つ目は、プロセスノードが進化したことなどによるターボモード時クロック周波数の向上、2つ目はPコアが「Raptor Cove」と呼ばれるGolden Coveの改良版になったことにより、L2キャッシュサイズが増加するなどして性能が向上していること、3つ目にEコアが従来製品では最大8コア(4コアクラスタ×2)だったのが、最大16コア(4コアクラスタ×4)となり、それに合わせてL3キャッシュの容量が増えていることを挙げた。
Alader Lake | Raptor Lake | |
---|---|---|
プロセスノード | Intel 7 | Intel 7(改良版) |
CPUコア(Pコア) | Golden Cove | Raptor Cove |
CPUコア(Eコア) | Gracemont | Gracemont |
Pコア数最大 | 8 | 8 |
Pコア周波数最大 | 5.2GHz | 5.8GHz |
Eコア数最大(クラスタ) | 8(2) | 16(4) |
Eコア周波数最大 | 3.9GHz | 4.3GHz |
L2キャッシュ(Pコアあたり) | 1.25MB | 2MB |
L2キャッシュ(Pコア-SoC全体) | 9.25MB | 16MB |
L2キャッシュ(Eコアクラスタあたり) | 4MB | 4MB |
L2キャッシュ(Eコア-SoC全体) | 8MB | 16MB |
L2キャッシュ(SoC全体) | 17.25MB | 32MB |
L3キャッシュ(Pコア1つあたり) | 3MB(x8) | 3MB(x8) |
L3キャッシュ(Eコアクラスタ1つあたり) | 3MB(x2) | 3MB(x4) |
L3キャッシュ(SoC全体) | 30MB | 36MB |
メモリ(最大構成) | LPDDR5-4800/LPDDR4-3200 | LPDDR5-5600/LPDDR4-3200 |
第13世代Coreは、従来10nm Enhanced SuperFinと呼んでいたIntel 7のプロセスノードを利用して製造している。Intel 7は第12世代Coreの製造にも利用されていたプロセスノードで、現在のIntelの主力プロセスノードにあたる。
Raptor Lakeに製造に利用されているのはIntel 7の改良版のプロセスノードで「社内的にはIntel 7 UltraやIntel 6などと呼んでいる」(Intel モバイル製品マーケティング 上席部長 ダン・ロジャース氏)とし、大きな改良が果たされたIntel 7となる。TSMCなどファウンダリも、そうしたプロセスノードの改良版を-1して呼ぶことが多く、例えばTSMCの7nmの改良版は6nmという名前が与えられている。今回Intelが改良版のIntel 7にそうした名前は与えられていないが、位置づけはほぼ同じものだと考えてよい。
改良版Intel 7を採用しているメリットはクロック周波数を引き上げられたこと。具体的には、ターボモード時にトップSKUとなる(Core i9-13900K)において5.8GHzというクロック周波数を実現している。これは、AMDが発売したばかりのZen 4アーキテクチャのトップSKUとなるRyzen 9 7950Xの5.7GHzをも上回っている。
PコアはL2 2MB版のRapid Coveに進化、EコアGracemontは4クラスタ/16コアに強化
そうした高クロックを実現できたのは、改良版Intel 7を採用しただけでなく、CPUの配線などを見直して、より高クロックが達成できるような設計を行なったことも理由だとIntelは説明している。
第13世代CoreのCPUは、パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャに基づいて2種類あるコアのうちPコアがRaptor Cove、EコアがGracemontとなっている。
Raptor Coveは第12世代CoreのPコアとして採用されていたGolden Coveの改良版と位置づけられるCPUコアデザインだ。Raptor CoveのマイクロアーキテクチャはGolden Coveのそれを引き継いでいるが、L2キャッシュが増量されている。具体的にはGolden CoveではCPUコア1つあたり1.25MBだったのが、第13世代Coreではそれが2MBに増やされているのだ。
ただ、実のところGolden Coveにもデザインとしては、2MB版が存在していた。Sapphire Rapidsに採用されているとみられるバージョンがそれで、CPUコア1つあたりL2キャッシュが2MB版のGolden Coveの存在は2021年に行なわれた「Intel Architecture Day」で存在が明らかにされていた。その意味では、2MB版のGolden Cove=Raptor Coveだとある程度は言えると思う。
しかしそれでも完全に同一ではなく、よりアップデートされたリビジョンになっているのがRaptor Coveだ。内部の配線デザインやスピードバスの見直しが行なわれており、それがターボ時最大で600MHz分の向上につながり、ターボ時最大5.8GHzという高クロックが実現されている。
EコアとなるGracemontは基本的に第12世代CoreのEコアに採用されているのと同じものだが、第12世代CoreではGracemontのクラスタ(CPUコア4つ+L3キャッシュ3MB)が最大2つ搭載されており、2つのクラスタで最大8コア+6MBのL3キャッシュという構成になっていた。しかし、今回の第13世代Coreではそのクラスタが2つ増やされて、最大4つのクラスタに増加されている。これにより第13世代CoreのEコアは最大16コア+12MBのL3キャッシュとなっている。このため、第13世代CoreではL3キャッシュが6MB分増えており、合計で36MBのL3キャッシュが搭載されていることになる。
また、Gracemontも内部の配線やスピードパスを見直すことでクロック周波数も引き上げられており、ターボ時最大には4.3GHzに達している。これはAlder LakeのEコア(同じGracemont)に比べて600MHz分も増えていることを意味する。
メモリ周りや内部のインターコネクト(リングバス)も見直され、メモリは第12世代と同じようにDDR5に対応しており、1つのチャンネルに1DIMM時にはDDR5-5600に対応し、2DIMM時はDDR5-4400として動作する。リングバスのクロック周波数も900MHz高速になっており、ターボモード時には最大5GHzで動作する。
前世代と比較してゲームでは最大24%、クリエイターツールで最大34%の性能を実現
第13世代Coreの性能に関して、第12世代Coreと比較してシングルスレッドで15%、マルチスレッドで41%の性能向上が実現されており、実際のアプリケーションでの結果では、ゲームでは最大24%、クリエイターツールでは最大34%の性能向上があると説明している。
競合との比較ではRyzen 9 5950Xとの比較ではゲームタイトルにおいて6~58%、クリエイターツールでの比較では33~69%ほどCore i9-13900Kが上回っていると説明した。
なお、この比較対象がRyzen 7000シリーズではないのは、この比較が行なわれた時点ではRyzen 7000シリーズが販売されていなかったためで、Ryzen 7000シリーズが発売された後、それとの比較データも公開する計画だとIntelは説明した。
この第13世代Core向けに、Intel 700シリーズ・チップセットが導入される。今回の発表時に投入されるのが最上位モデルの「Z790」で、「Z690」と比べてチップセット側のPCI Express Gen 4スロットが12レーンから20レーンに増やされるほか、USB 3.2 Gen 2x2ポートが4ポートから5ポートに増加することが特徴となる。
CPUソケットはLGA1700で、電気的には第12世代Coreとピン互換になっている。このため、現在第12世代Core+Intel 600シリーズ・チップセットの組み合わせで利用している場合には、第13世代のCPUにそのまま置きかえることが可能。ただし、BIOSアップデートなどは必要になるので、対応はマザーボードベンダー次第となる。Z790搭載マザーボードはASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIなどから提供される計画だ。
また、オーバークロック用のツールも機能拡張が行なわれる。高度なオーバークロックができる「Intel Extreme Tuning Utility」と、ビギナーオーバークロッカー向け「Intel Speed Optimizer」という2種類のツールが提供されるのは従前の通りだが、ワンクリックでオーバークロックが可能なIntel Speed Optimizerはコンパクトビューという新しいビューが提供される。
また、前世代と同じようにXMP 3.0に対応したメモリモジュールを利用して動的に自動でメモリの設定をOCプロファイルに切り替える機能も引き続き提供される。
デスクトップ版第13世代Coreは10月20日から販売開始、ノートPC向けは今後発表予定
第13世代CoreのSKU構成は以下のようになっている。
総コア数 | Pコア | Eコア | L3キャッシュ | L2キャッシュ(SoC全体) | Pコアターボ時最大周波数 | Eコアターボ時最大周波数 | Pコアベース周波数 | Eコアベース周波数 | アンロック | 内蔵GPU | PCIレーン(CPU側) | メモリ | 最大容量 | ベース電力 | 最大ターボ電力 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9-13900K | 24 | 8 | 16 | 36MB | 32MB | 5.8GHz | 4.3GHz | 3GHz | 2.2GHz | ○ | Intel UHD Graphics 770 | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 253W |
Core i9-13900KF | 24 | 8 | 16 | 36MB | 32MB | 5.8GHz | 4.3GHz | 3GHz | 2.2GHz | ○ | - | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 253W |
Core i7-13700K | 16 | 8 | 8 | 30MB | 24MB | 5.4GHz | 4.2GHz | 3.4GHz | 2.5GHz | ○ | Intel UHD Graphics 770 | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 253W |
Core i7-13700KF | 16 | 8 | 8 | 30MB | 24MB | 5.4GHz | 4.2GHz | 3.4GHz | 2.5GHz | ○ | - | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 253W |
Core i5-13600K | 14 | 6 | 8 | 24MB | 20MB | 5.1GHz | 3.9GHz | 3.5GHz | 2.6GHz | ○ | Intel UHD Graphics 770 | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 181W |
Core i5-13600KF | 14 | 6 | 8 | 24MB | 20MB | 5.1GHz | 3.9GHz | 3.5GHz | 2.6GHz | ○ | - | 20 | DDR5-5600/DDR4-3200 | 128GB | 125W | 181W |
今回発表されたのは、オーバークロック時のロックが解除されたK SKUのみで、IntelがゲーミングPC向けと位置づけている製品になる。このK SKUの製品とIntel 700シリーズ・チップセットを搭載したマザーボードは10月20日(米国時間)より販売が開始される計画だ。Intelは今後K以外のSKUも追加する計画で、今後どこかのタイミングでアナウンスすると説明した。
また、今回発表はなかったが、ノートPC版の第13世代Coreも、第12世代と同じようにHX、H、P、Uの4つのシリーズが計画されており、こちらもどこかのタイミングで発表される計画だとIntelは説明している。例年であればノートPC向けはCESで発表されることが多いので、1月のCESあたりがそのタイミングになるかもしれない。