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東工大、香りの印象をデータ化する技術。好みの香りを作り出しやすく

匂い印象からマススペクトルを予測する仕組み

 東京工業大学(東工大)は5日、同大科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の中本高道教授らの研究チームが、好みの香りイメージに対応するセンシングデータを探索する方法を世界で初めて提案したと発表した。

 従来、嗅覚はIT技術との接点が少なく、デジタル嗅覚技術は十分に確立されているとはいえない状況という。分子構造パラメータを入力して深層学習を使用することで香りの「印象」を予測する方法がいくつか提案されているが、単一の香気分子にのみ適用できる技法で、複数の香気分子の混合臭には適用できないという課題があった。

 そこで、中本教授らのチームは、線形重ね合わせが成り立つマススペクトルから匂い印象を求めるモデルを利用し、複数の香りを予測できるモデルを生み出し、今回発表の技術のベースとした。

マススペクトルから匂い印象を予測する仕組み

 具体的な手法としては、マススペクトルから匂い印象を直接予測する写像関数を求める従来手法をさらに改良。マススペクトルから匂い印象を求めるモデルをベースとし、逆問題を解くアプローチを用いた。

 現時点では、同手法は数値計算による研究に留まっており、実際の香りを作成する段階には至っていないという。将来的な展開展望として、AIを利用した「嗅覚ディスプレイ」の実現や、調香師などの専門家の手を経ずに好みの香りを作る技術などに応用したいという。