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第13世代Coreはシングルスレッドで15%、マルチスレッドで41%性能向上を実現

第13世代となるRaptor Lake、まもなく発表の予定、Intelは今月中と表現した。DDR5-5600に対応し、オーバークロックで6GHz/8GHzを実現

 Intelは、9月12日(現地時間)からイスラエル テルアビブ市内の会場で「Intel TECH Tour.il」を開催し、同社がまもなく発表を計画しているとアナウンスした第13世代Coreとなる「Raptor Lake」(開発コードネーム)の開発過程などに関しての説明を行なった。

 同社は月内にRaptor Lakeを正式発表する予定で、前世代となる第12世代Core(Alder Lake)と比較してシングルスレッドで約15%、マルチスレッドで約41%の性能向上を実現。また、通常こうしたCPUの開発には約30カ月の開発期間が必要となるが、Raptor Lakeでは前世代と設計を共有しているため、開発期間を6カ月短縮できたと説明した。

IntelのCPU開発を支えているIsrael Design Centerがあるイスラエルでイベントを開催

Intel 執行役員 兼 Intel バリデーションエンジニアリング事業部 事業部長 兼 IDC 事業部長 カリン・アジッツ-シーゲル氏

 今回Intelは、イスラエルの主要都市であるテルアビブ市で、Intel TECH Tour.il(Intel Technology Tour)というイベントを開催している。このイベントはIntelの技術を報道関係者などに説明する目的で行なわれているが、Intelにあまり詳しくない読者にとっては「なんでイスラエル?」という疑問がわいてくるかもしれない。

 その質問に答えると、イスラエルの第2の都市であるハイファにはIntelがIDC(Israel Design Center)と呼んでいる開発拠点があり、まもなくIntelが発表するとこのイベントでアナウンスしているRaptor LakeもこのIDCで設計、開発されているからだ。

 Intel 執行役員 兼 Intel バリデーションエンジニアリング事業部 事業部長 兼 IDC 事業部長 カリン・アジッツ-シーゲル氏は「イスラエルでIntelはハイファ、キリヤガット、エルサレムなどにオフィスを設けている。14,000名の従業員を抱えており、そのうち7,000人はIDCで研究開発に従事している」と述べ、Intelがイスラエルに長期間にわたり投資を続けており、特にIDCはIntelのビジネスにとって非常に重要な研究開発センターであると説明した。

古くは8088やMMX Pentium、現在のIntel CPUの直接の先祖となるBaniasを開発したIDC

Intel 執行役員 兼 クライアントコンピューティング事業本部 クライアントプラットフォームプログラム事業部 事業部長 アイザック・シラス氏

 Intel 執行役員 兼 クライアントコンピューティング事業本部 クライアントプラットフォームプログラム事業部 事業部長 アイザック・シラス氏はRaptor Lakeの開発の開発にかかった期間や、IntelがIDCでどのように製品の開発を行なっているかを説明した。

 シラス氏は過去にIDCが開発したCPUの歴史について説明。シラス氏によれば、IDCが一番最初に開発した製品は1979年に提供開始した「8088」(8086の外部バスを8bitに制限したバージョン)で、それが初代IBM PCに採用されて、後のIBM PC互換機、そして今のWindows PCに続く歴史を作り出したところはよく知られている。

IDCが開発してきたCPUの歴史

 その後のPC向けの製品としては1993年に登場したMMX Pentium(Intel的な正式名称はPentium Processor with MMX Technology)。オリジナルのPentiumは米国で開発されたが、MMX PentiumはIDCで設計された。そして、TimnaというGPU/メモリコントローラ統合型CPUの開発を行なった(今回の説明では省略されていたが)。TimnaはGPUとメモリコントローラをCPUに統合した最初のIntel製品だったが、統合されたメモリコントローラがRDRAMだったことがたたってしまい、結局リリースされることなくお蔵入りになってしまったことも歴史的な事実として知られている。

 そうしたIDCが最も注目を集めたのは、なんといっても2003年のBaniasの開発コードネームで知られる省電力x86プロセッサだろう。後に「Centrino Mobile Technology」のブランド名で無線LANモジュールとともにプラットフォームとして提供されたこの製品は、ノートPCの薄型化、Wi-Fiの実装などを実現した製品となった。

 そして、そのモバイル向け専用だったIDC開発のコアがデスクトップPC向けになったのがMerom(デスクトップ向けのコードネームはConroe)で、「その後IDC開発のCPUが、サーバーからモバイルまですべての市場をカバーするようになった」(シラス氏)となり、その後はIntelにとって最初のGPUをダイに統合したCPUとなったSandy Bridge(第2世代Core)、2015年のSkylake(第6世代Core)などの、大きなアーキテクチャの変更を実現するCPUを送り出した。

 その最新のCPUが、現在第12世代Coreとして発売されているハイブリッド・アーキテクチャを採用したAlder Lakeで、Raptor Lakeはその改良版になるとシラス氏は説明した。

Raptor LakeはAlder Lakeの改良版

 シラス氏は「通常CPUの開発は30カ月以上をかけて開発が行なわれる。アーキテクチャの定義などのデザインに6カ月、A0シリコンに電源が入るまでに15カ月、そして最後の12カ月で検証などが行なわれる。Raptor LakeはAlder Lakeとのアーキテクチャとプラットフォームレベルでの互換性があるため、6カ月開発期間を削減できた」と述べ、Raptor Lakeが短いサイクルで開発することができて、迅速に製品を投入することが可能になったと説明した。

 また、デスクトップPC版、ノートPC版のいずれもターゲットとなるスケジュール通りに出荷できるようになっているとし、どちらも2022年中に出荷することができると説明した。

Raptor Lakeの開発は通常よりも6カ月短かった

 また、シラス氏は「Raptor Lakeはシングルスレッドの性能は15%向上しており、マルチスレッドは41%向上している。この数カ月でチューニングしていくことで徐々に上げてきた」と述べ、Raptor Lakeは前世代(第12世代Core)と比較しての性能向上がシングルスレッドでは15%、マルチスレッドでは41%も向上していることを明らかにした。

 なお、今回IntelはRaptor Lakeの発表を今月中と表現しており、まもなく正式に発表されることになりそうだ。

Alder Lake設計時のデザイン概要の手書きメモ
過去のIntel製品がどの程度の遅れで製品の出荷ができたかを示す図