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ASIMOが卒業。90種類のロボが展示される「きみとロボット」展などが未来館で開催
2022年3月18日 06:28
東京・お台場にある日本科学未来館は、2022年3月18日から8月31日まで特別展「きみとロボット」、3月31日まで「THANK YOU ASIMO! 〜未来館卒業おめでとう」を開催する。
会期前日の17日には、イベント内覧会と「ASIMO未来館卒業セレモニー」が行なわれた。
「THANK YOU ASIMO! 〜未来館卒業おめでとう」(会期:3月18日〜3月31日)
イベント「THANK YOU ASIMO! 〜未来館卒業おめでとう」の会期は、3月18日〜31日。ホンダが開発していたヒューマノイドロボットの「ASIMO(アシモ)」が3月末に未来館を卒業するのを記念して、ASIMO自らが未来館での20年間の活動を紹介。走る動作や片足ジャンプ、手話など各種動作を組み合わせた特別実演を行なう。ASIMO特別実演のスケジュールは、11時30分/12時30分/13時30分/14時30分/15時30分(各回約10分)。
イベントではASIMOへの感謝のメッセージ、年表などから構成された特設ブース、ASIMOとの思い出を投稿するSNS企画、来館者がASIMOと記念撮影を行なえる機会(事前予約制で各回5組、先着順)が設けられる。
特別実演ではASIMOが走って登場。これまでの活躍を振り返り、身体性能を紹介したりしたあと、最後に「私は未来館を卒業しますが、ロボットの研究はこれからも続いていきます。ロボットと人間が仲良く暮らせる日が早く来ることを楽しみにしています」と挨拶し、「それではバイバイ。またお会いしましょう」とバックヤードへ帰っていった。
ホンダ「ASIMO」は、2000年に発表されたヒューマノイドロボット。2002年1月に未来館のインタープリター(展示解説員、現在は科学コミュニケーター)として採用され、1月13日には「入社式」が行なわれて、日本科学未来館の初代館長 毛利衛氏からは辞令が手渡された。
2005年、2011年と新型のASIMOが発表された後は未来館のASIMOもリプレースされている。未来館では20年間で累計1万5,571回(2022年1月末時点)の実演を行ない、推計200万人以上に親しまれてきたという。
3月17日に行なわれた未来館卒業セレモニーでは、翌3月18日から始まる特別実演のほか、20年間の未来館での活躍に感謝を込めて、館長の浅川智恵子氏から感謝状、ASIMOの後輩の科学コミュニケーターから花束が贈呈された。
セレモニーでASIMOは「この3月で私は科学コミュニケーターのお仕事を卒業します。未来館で働いてから、たくさんの人に出会い、色々なことを経験しました。赤ちゃんからお年寄りまで多くの方と触れ合えたのはいい思い出です。未来館の皆さん、そして私の科学コミュニケーション活動に関わってくれた、すべての皆さん。20年間、ありがとうございました。」と語った。
ASIMOのデモが見られる最後のチャンス
特別展「きみとロボット」は約半年の長期イベントだ。一方で「ASIMO」のイベントの会期は3月末までなので、注意してほしい。
なお、「ASIMO」の一般公開デモンストレーションは、日本科学未来館のほか、青山のホンダ本社1階にある「Hondaウエルカムプラザ青山」でも行なわれているが、こちらの「ASIMOステージショー」も3月末で終了することがアナウンスされている。
3月4日からはホンダが開発してきたロボットのプロトタイプ展示を含む、特別版ステージショーが実施されている(未来館のデモと内容は異なる)。ASIMO自ら、二足歩行にともなう重心移動や衝撃吸収などの諸課題の克服や、手先の器用さなどの開発過程を紹介し、ホンダの理念を紹介する最後のプレゼンテーションを行なっている。
特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」(会期:3月18日〜8月31日)
特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」は日本科学未来館、朝日新聞社、テレビ朝日が主催。会期は2022年3月18日〜8月31日まで。
国内展覧会史上最大規模となる約90種、130点の多彩なロボットが集結する。ロボットとの関係性を通して、変わりゆく人間の「からだ」「こころ」「いのち」に目を向け、「人間とはなにか?」を問いかけながら、人間とロボットの未来像を思い描くイベント。
料金は、大人(19歳以上)2,100円、中人(小学生〜18歳)1,400円、小人(3歳〜小学生未満)900円。団体料金(8名以上)は順に、1,900円、1,200円、700円となる。休館日は火曜日(ただし、3月22日〜4月5日、5月3日、7月26日〜8月30日は開館)。
内覧会ではまず、日本科学未来館 副館長 高木啓伸氏が「たくさんの貴重なロボットをお貸し頂いた。日本科学未来館は昨年(2021年)20周年を迎えた。身体拡張、コミュニケーション、アンドロイド、様々なロボットとインタラクティブな体験が可能。もう一度人間にとって『からだ』や『こころ』がどういう意味を持つのか、人間とはなにか、思いをはせる機会を提供できればうれしく思う。科学技術と向き合うきっかけとなればと願っている」と主催者挨拶を述べた。
総合監修者である浅田稔氏(大阪国際工科専門職大学 副学長/大阪大学特任教授・同名誉教授)は、次のように語った。
「人間にはいろんなミステリーがある。そのミステリーにアプローチする方法の代表がロボット。日本人の場合、特に欧米よりもロボットには親和性が高い。ロボットを通じて人間とは何か知る手がかりを拾ってもらいたい。
また、人間自身がロボットとの付き合いで行動や考え方が変わる。それは未来社会をどう作るかにつながる。人間とロボットはどのように共生していくか。ロボットが身体の一部になったとき思い通りに動くのか、そうではないのか。いろんな動きが出てくる可能性がある。
ロボットとの共生は非常に極端な共生関係になる可能性がある。人間がロボットを操作できれば、ロボット自体が人間の能力を持っていく。人間がロボットとの共生を上手くつなげられれば人間同士の共生にもつながる。いま世界では人間同士の共生について色んな問題が起きているが、ロボットを通じて人間同士がつながれる可能性を探る展示会にしたい」。
そして「子供たちに夢を持ってもらうことで社会がどう変わっていくか問題意識を持ってもらいたいと考えて企画した。今回、ロボットとはあらゆる人工物を指すものだと考えて展示を組んだ。次の未来社会をどう築いていくか展示を通して考えてもらいたい」と述べた。
企画展示の説明は日本科学未来館 特別展 展示ディレクターの三池望氏が行なった。「約2年半かけて企画してきた」という。
三池望氏によれば、この展示会はロボットを中心とした様々な科学技術を通して人間とは何かと考える展示会で、「ロボット技術は発展を続けており、社会での役割や人間との関係性も変化している。ロボットと人間はどんな未来を作っていけるのか、来場者一人一人に考えてもらいたい。未来の選択肢を広げるような科学技術を紹介している。ロボットらしいロボットだけではなく、サイボーグ技術、人工知能、デジタルクローンまで、ロボットを広く捉えて紹介している」と述べた。
展示は3つのゾーンで構成されており、それぞれ過去、現在、未来となっている。第1ゾーンではロボットという言葉が生まれる前まで遡り、開発の歩みを年表スタイルで紹介。SF作品も交えつつ、かつてエポックメイキングだったロボットも静展示で紹介される。
第2ゾーンでは揺らいでくる人間との関係などを扱う。まず最初の「からだ」エリアでは、身体機能の拡張、装着型ロボット、遠隔操作型ロボットなど多様な人間のありようを探る。そもそも人間のからだとは何か、という問いが会場には散りばめられているという。初公開となるソニー・インタラクティブエンタテインメントの二足歩行ロボットや、人機一体の大型人型重機も展示されている。
2つ目のエリアのテーマは「こころ」。様々なロボットとのインタラクションを通じて、自分自身のこころの変化を感じて、人間のこころとは何かと考えるエリア。豊橋科学技術大学の岡田教授による「弱いロボット」などが出展されている。
3つ目のエリアは「いのち」がテーマ。人工臓器や医療関係のロボットが出展。オルツのデジタルクローンの展示では、デジタルクローン化された茂木健一郎氏とニーチェが対話する。
最後の第3ゾーンは未来。様々な研究者たちへのインタビューがパネルで紹介され、ロボットと人間の未来を考える。また、最後には体験者ごとに異なる物語を体験でき、ロボットとの未来を語り合えるという。
三池氏は「ロボットと人間の境界が曖昧になっていること、多様な選択肢が未来にはあること、未来を考えるきっかけになってほしい」と述べた。
公式アンバサダーは「QuizKnock」、村山輝星さんもゲストとして登場
続けて、クイズ王の伊沢拓司氏が率いる東大発知識集団「QuizKnock(クイズノック)」が公式アンバサダーとなることが発表され、ふくらP氏、河村拓哉氏、須貝駿貴氏の3人が登場し、就任式が行なわれた。みな最先端のものが好きで、展示を楽しんだという。今後、ロボット愛と知識でイベントの広報を行なっていく。
就任式には、aibo(アイボ)本体のいちごミルクの色と、1539年(いちごみるくの語呂合わせ)生まれの長曾我部元親にちなんで「モトチカ」と名付けられたaiboも登場し、任命証を届けた。
また、スペシャルゲストとして携帯電話のCMなどに出演している小学5年生の村山輝星(きらり)さんが登壇した。ロボットが好きで「QuizKnock」と一緒に回ったという。一押しは人機一体の「零式人機(れいしきじんき)」とのこと。村山輝星さんは「大きいのに動きが繊細でびっくりした」と語った。須貝駿貴さんは実際に操作したそうで、すぐに動かせたという。
また、村山輝星さんはLOVOT(らぼっと)の1台に「みらいちゃん」と名前を付けたという。夢がある名前であることと、「きらり」と同じく3文字であることから「みらい」と名付けたとのことだった。
「QuizKnock」の3人は本展示会にあわせたクイズとして、AIが人間を超越すると考えられているシンギュラリティに関するクイズを出した。会期中にも公式ホームページでクイズが出されるとのこと。
約90種、130点の多彩なロボットが展示
展示されているロボット各種は基本的には静展示だが、アイザック・アシモフの小説『われはロボット』、トヨタ自動車の最新ヒューマノイド「T-HR3(ティー-エイチアールスリー)」、体高4メートルを超える汎用人型重機「零式人機 ver.1.2」、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」、豊橋技術科学大学岡田美智男研究室の「弱いロボット」、大阪大学石黒教授の「ジェミノイド」、ソニー「aibo」、「AI美空ひばり」など多彩。以下、写真でご紹介する。なお、すべての展示ではない。
展示物のうち一般向けに初公開となったのは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが研究開発した最新の二足歩行ロボット「EVAL-03(イーブイエーエル-ゼロスリー)」。「ビデオゲームというバーチャルな世界でのエンタテインメントをリアルな世界で展開したら、どのような楽しさや、人との新しいインタラクションが生まれるのか……を探るべく、パートナーとしての存在感を持つ『EVAL-03』が誕生」したという。展示会では、目の前の人と同じ動きをするミラーリング機能が紹介された。
Zone 1 ロボットって、なんだ?
会場は大きく3つのゾーンに分かれている。まず「Zone 1 ロボットって、なんだ?」はロボットの過去から現在、歴史を紹介する。またインスピレーションの源となったり研究/開発を後押しした小説やアニメ、ゲームなどのSF作品もされている。
このほか、4月1日からは、世界初の人型知能ロボットで1973年に完成した、早稲田大学 加藤一郎研究室、大照完研究室、白井克彦研究室、内山明彦研究室「WABOT-1(ワボット-ワン)」が展示される。
Zone 2 きみって、なんだ? にんげんって、なんだ?
「Zone 2 きみって、なんだ? にんげんって、なんだ?」は、さらに「からだ」「こころ」「いのち」の3つのサブエリアに別れている。順番にご紹介する。
Zone 2-1 からだって、なんだ?
このほか、メルティンMMI「MELTANT-α(メルタント・アルファ)」が4月28日〜5月8日、川崎重工業「Kaleido(カレイド)」が4月29日から展示される予定。
Zone 2-2 こころって、なんだ?
「Zone 2-2 こころって、なんだ?」では、ペットロボットやコミュニケーションロボットなどが並べられている。体験したり、実際に触れることができるロボットも多い。