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教育向けOS「Windows 11 SE」搭載、2万7,800円の「Surface Laptop SE」

Windows 11 SEとそれを搭載したSurface Laptop SEを利用する生徒と教師(写真提供:Microsoft)

 米Microsoftは、11月9日午前9時(米国時間、日本時間11月10日午前2時)から、同社の教育事業向けイベント「Microsoft Reimagine」をオンラインで開催している。Microsoftはその開催に先立って報道発表を行ない、Windows 11の教育向けとなる「Windows 11 SE」を発表した。

 Windows 11 SEは米国ではK-8スクール(幼稚園の年長~中学校)を対象にした教育専用のエディションで、日本では幼稚園から中学までを主なターゲットとして、高校も利用可能になっている。

 また、そのWindows 11 SEを搭載した教育向けのデバイスとして、2万7,800円(税別)という低価格設定がされているデバイス「Surface Laptop SE」を発表した。

Microsoft 365と組み合わせオフラインでも作業できるWindows 11 SE、低価格に提供

Windows 11 SEのデスクトップ(写真提供:Microsoft)

 Microsoftは新しい低価格な教育向け製品を2つ発表する。1つ目がWindows 11 SEで、教育向けにライセンス料を抑えたWindows 11の新しいSKUだ。Microsoftから正式な発表はないが、SEはStudent Editionの略だと考えられ、従来のWindows 98 SEなどで使われていたSecond Editionではない。

 Microsoftによれば、Windows 11はパンデミック終了を見据えてハイブリッド型の授業(対面授業とオンライン授業の混合)で教師や生徒が直面する課題を解決するために開発されたもので、リソース利用を最適化することで低コストのデバイスでも性能を向上させ、導入や管理を容易にする。

 Windows 11 SEをMicrosoft 365 Education(Web版は無償、デスクトップアプリを利用可能なプランは月額税別270円から)と組み合わせることで、デバイスがネットワークに接続されている場合でも、ネットワークから切断されている場合のどちらでも生徒が課題を解決することができるようになる。

 ほかのプラットホーム、例えばAppleのiOSやGoogleのChrome OSなどは、ローカルアプリケーションも含めてクラウドが前提の設計になっており、オフラインだとほとんど作業ができない課題がある。米国のような先進国であってもインターネット回線が用意されていない家庭も多いという現状があり、そうした環境では課題になっていた、とMicrosoftは説明する。

Microsoft 365 for Educationと組み合わせることでOfficeアプリケーションを利用しての作業も可能(写真提供:Microsoft)

 それに対して、Windowsでは、OneDriveに保存されているデータを一部キャッシュとして内蔵ストレージに保存しておくことで、ネットに接続されていない環境でも、Word、Excel、PowerPoint、OutlookなどのOfficeデスクトップアプリを利用して作業でき、生徒が学校に来てネットに接続できるようになると、クラウドのOneDriveと同期され、家での作業を継続できる。

Windows 11のスナップウインドウ機能を利用してウインドウを並べ、作業性を向上させることができる(写真提供:Microsoft)

 また、学校のIT管理者の作業負荷を軽減させるためのソリューションとして、MDMのIntune for Educationを利用できる。Windows 11の自動構成機能である「Windows Autopilot」を利用すると、構成設定をすべて全自動で行なうことが可能になるなどしており、1台ずつ設定する手間などを省ける。

 Microsoftによれば、Windows 11 SEは米国のK-8スクール(幼稚園の年長~中学校)をターゲットにしており、日本でも幼稚園~中学校を主なターゲットにするが、学校側が望めば高校でも選択することが可能だ。単品販売がないためライセンス価格などは非公表だが、後述するSurface Laptop SEが2万7,800円という低価格に設定されていることを考えると、かなり安価なライセンス価格であることが想定される。

 MicrosoftのSurface Laptop SEだけでなく、Acer、ASUS、Dell、Dynabook、富士通、HP、LenovoなどのグローバルなPCメーカーなどからもAMD/Intelのプロセッサを搭載した製品が提供される見通し。

 Surface Laptop SEを除き、現時点では日本でそれらのPCメーカーから提供されるかは明らかではないが、年度末などの教育機関での新規や買い換え導入時期などに、OEMメーカーの製品が登場する計画だとMicrosoftでは説明している。

破格で提供されるSurface Laptop SE

Surface Laptop SE(写真提供:Microsoft)

 Microsoft Reimagineでのもう1つの大きな発表は、そうしたWindows 11 SEを搭載した教育向けSurfaceだ。最大の特徴はその価格で、最小構成で2万7,800円という、Surface史上最安の価格設定がされていることだ。

【表1】Surface Laptop SEのスペック(Microsoftの資料より筆者作成)
製品名Surface Laptop SE
CPUCeleron N4120/4020
GPUIntel UHD 600
メモリ4GB/8GB
ストレージ64GB/128GB(eMMC)
ディスプレイ11.6型TFT(1,366×768ドット)
カメラ(Windows Hello対応有無)100万画素(720p、Hello未対応)
USB-A1
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)1
オーディオ端子1
マイクシングル
そのほか端子DC端子
Wi-FiIEEE 802.11ac
BluetoothBluetooth 5.0 LE
センサーハーフエフェクト×1
TPMfTPM
キーボード搭載
ポインティングデバイス搭載
ACアダプター40W
バッテリ(サイズ/駆動時間)不明/最大16時間
カラーグラシア(白)
サイズ(横x縦x高さ)279.4×193.04×17.78mm
重量1,112.4g
OSWindows 11 SE

 CPUはCeleron N4120/N4020が搭載されている。Celeron N4120/N4020は、開発コードネーム「Gemini Lake Refresh」で知られる14nmで製造される製品で、CPUはGoldmont Plusコアの4コア/4スレッド(4020は2コア/4スレッド)、GPUはIntel UHD Graphics 600という12個のEU(実行エンジン)を搭載したものとなっている。

 メモリは4GBないしは8GB、ストレージはスマートフォンなどでよく採用されているeMMCが採用されており、容量は64GBまたは128GBとなっている。ほかには、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 5.0 LE、USBとUSB Type-C端子を1つずつ、ヘッドフォン端子、DC端子(付属のACアダプタ接続用)が1つとシンプルな構成になっている。

端子類は本体の右側面に集中している(写真提供:Microsoft)

 ディスプレイは11.6型のTFTパネルで、解像度は1,366×768ドットとなっており、Surfaceシリーズの特長となっているタッチやペンには対応していない。そうした部分でコストダウンを図ることで低価格を実現している。

 Microsoftがこれまでで最も安価な学校向けのソリューションは、「Surface Go 3」であり、最小スペック(Pentium Gold/メモリ4GB/ストレージ64GB)の本体だけで4万7,800円、タイプカバーキーボード(1万1,800円)を併せると5万9,600円(税別)という価格だった。

 ペンやタッチなどの要素を省いたとは言え、2万7,800円は破格と言っていい。より低価格なプライスポイントの製品を増やすことで、性能や機能よりもとにかく安いデバイスが欲しいという学校や教育委員会などのニーズを満たすための製品と言えるだろう。

カラーはグラシア(白)一色(写真提供:Microsoft)

 こちらも、米国ではK8スクール(幼稚園の年長~中学校)をターゲットとした製品になるが、日本マイクロソフトによれば日本では幼稚園~高校までとより幅広い学校をターゲットにした製品になるという。日本では高校もターゲットにされているのは、既にGIGAスクール構想で小中学校の配備はほぼ完了しつつあるが、高校に関してはこれからという学校や自治体が多いためで、導入も費用が学校負担、保護者負担、自治体負担とまちまちであり、低価格なデバイスが望まれているからという背景もあるとのことだ。

Surface Laptop SEの利用シーン(写真提供:Microsoft)