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NICTや産総研ら、世界初の「窒化物超伝導量子ビット」開発

aはマイクロ波共振器と量子ビットの概念図。bは窒化物超伝導量子ビット回路の光学顕微鏡写真。cは窒化物超伝導量子ビット(一部)の電子顕微鏡写真と素子の断面図。dはエピタキシャル成長させた窒化物ジョセフソン接合の透過型電子顕微鏡写真

 情報通信研究機構(NICT)は20日、産業技術総合研究所(産総研)、東海国立大学機構 名古屋大学と共同で、シリコン基板上のエピタキシャル成長を用いた窒化物超伝導量子ビットの開発に世界で初めて成功したと発表した。

 この量子ビットは、超伝導体として超伝導転移温度が16ケルビン(-257℃)の窒化ニオブ(NbN)を電極材料とし、ジョセフソン接合の絶縁層に窒化アルミニウム(AIN)を使用してエピタキシャル成長させた全窒化物となる。ノイズ源である非晶質の酸化物を一切含まないのが特徴で、新しい超伝導材料からなる新型の量子ビットとなっている。

 今回、この新型量子ビットをシリコン基板上に実現したことで、エネルギー緩和時間が16μs、位相緩和時間が22μsというコヒーレンス時間が得られた。従来の酸化マグネシウム基板上の窒化物超伝導量子ビットと比較すると、前者は約32倍、後者は約44倍だという。

 窒化ニオブを使うことで、より安定に動作する超伝導量子回路の構築が可能となり、量子演算の基本素子として、量子コンピューターや量子ノード開発への貢献が期待される。今後は回路構造や製作プロセスの最適化、さらなるコヒーレンス時間の延伸、大規模集積化に向けた研究開発を進める予定。