ニュース

Qualcomm、Arm版Windows搭載の開発用小型PC。安価なSnapdragon 7c Gen 2も発表

QualcommとMicrosoftが共同で提供する「Snapdragon Developer Kit」(提供:Qualcomm)

 Qualcommは24日(米国時間)、Arm版Windows向けソリューションに関するオンライン会見を開き、Windows向けのエントリーSoCとなる「Snapdragon 7c Gen 2」や小型PCの開発キットなどを発表した。

CPUの動作クロックが引き上げられた「Snapdragon 7c Gen 2」

Snapdragon 7c Gen 2のロゴ(出典:Qualcomm)

 Qualcommは、Snapdragon 8cx Gen 2、8cx、8c、7c、そしてMicrosoftブランドで提供されているSQ2、SQ1というArmアーキテクチャのSoCをメーカーに提供しており、Arm版Windows(WoA、Windows on Arm)がプリインストールされたPCとして市場で販売されている。

 Microsoft自身のブランド製品となるSurface Pro X(SQ2、SQ1搭載)がその代表例で、低消費電力で携帯電話回線モデムが内蔵されているというSnapdragonのバッテリ駆動の長さを活かしたPCとして提供されている。

 Surface Pro XはSurfaceブランドの製品ということもあり、ハイエンドユーザー向けとなっているが、QualcommではSnapdragon 8c、7cという2つの製品を普及価格帯およびエントリー向けとして2019年の末に発表している。

 Snapdragon 8cはTSMCの7nmで製造され、Snapdragon 7cはSamsungの8nmで製造されている。特にSnapdragon 7cに関してはエントリー向けとされており、Kryo 468(8コアCPU)、Adreno 618というGPU、Spectra 225というISP(Image Signal Processor)、さらにはSnapdragon X15 LTE modemというLTE Cat.12に対応したモデムを内蔵している。

 今回Qualcommは、このSnapdragon 7cの性能強化版として「Snapdragon 7c Gen 2」を発表した。基本的にはSnapdragon 7cと同じスペックだが、CPUが強化されており、7cのクロック周波数が最大2.4GHzまでだったのに対して、7c Gen 2では最大2.55GHzに強化されている。

 また、低価格SoCと位置付けられているが、Microsoftの「Secured-Core PC」と呼ばれるセキュリティの強化仕様に対応しており、企業向けグレードのみでSecured-Core PCに対応している競合との差別化も実現されている。

Snapdragon 7c Gen 2を搭載したPCのイメージCG(出典:Qualcomm)

 Qualcommによれば、Snapdragon 7c Gen 2搭載製品は今年(2021年)の夏に発売される予定になっており、最初のOEMメーカーとしてLenovoの名前が挙がっている。

Arm版Windows 10のアプリ開発者にローコストで開発キットを

Snapdragon Developer Kit(出典:Qualcomm)

 こうした新製品の投入と同時に、QualcommはArm版Windows 10のプラットフォームを拡充する取り組みを発表した。その1つはMicrosoftとの協業で、「Snapdragon Developer Kit」という低価格な開発キットの提供だ。

 x86プロセッサを搭載したPCがありふれているのに対して、Armを搭載したPCはまだまだ数が少なく、特にアプリ開発者の手元には十分に行き届いていない。その結果、Arm版のアプリ開発がなかなか進まないといういわゆる「鶏か卵か」という堂々巡りの話になりやすい現状がある。

 このSnapdragon Developer Kitは、SnapdragonのSoCを搭載した小型PCになっており、Arm版Windows 10がプリインストール状態で提供される。ディスプレイやキーボード/マウスなどは開発者の手元にあるものを利用できるので、開発者は低い負担でArm版Windows 10向けのアプリ開発環境を整えられる。

 これまでのArm版WindowsデバイスはノートPCだけだったが、今後はローコストなSnapdragon Developer Kitを導入できるため、Arm版アプリの開発者にとっては朗報と言える。

Snapdragon Developer Kitの右側面、USBポート、microSDカードスロットなどがある。詳細はBuild 2021で明らかにされる予定(出典:Qualcomm)

 Snapdragon Developer Kitは、Microsoft Store経由で今年の夏から販売される計画で、現時点では価格や詳細なスペックは不明。ただ、Microsoftが5月25日(米国時間)より開催する「Build 2021」のセッション「What's new for Windows desktop application developers」の中で明らかにされる予定だ。

 また、在宅勤務(テレワーク)の普及により、PCのキラーアプリの1つになったZoomは、Snapdragonに最適化されたZoomアプリを今夏に提供する計画であることを明らかにした。

 現在のArm版Windows 10(バージョン21H1)では、Zoomクライアントをインストールしようとすると、x86-32bit版がインストールされる。もちろんWindows 10ではx86-32bit版のバイナリ変換機能を備えているため、それで問題なく動作する。

 しかし、Zoomのようにやや重めなアプリではやはりネイティブ版が欲しいところで、Surface Pro XユーザーなどにとってはArmネイティブ版のZoomの登場が待ち望まれていた。こちらも今夏の投入がされており、Arm版のWindows 10ユーザーには朗報と言えるだろう。発表ではChromebookのサポートも言及されており、Chromebook版も投入される可能性がある。