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PCIe Gen4でリードするAMD、新ソケットで多コア化を進めるIntel。メニーコア時代のマザーボードはこう選べ

 2020年、第10世代Coreプロセッサが登場したIntelプラットフォームでは、CPUソケットもチップセットも刷新された。新世代マザーボードが多数登場している。AMDプラットフォームでは2020年6月に普及価格帯向けのB550チップセットが追加されただけだが、Ryzen 5000シリーズの登場に合わせて、新世代モデルが登場している。どんなポイントに注意して製品を選ぶべきか、マザーボードの最新事情を整理しておこう。(TEXT:滝 伸次)

自作向けIntel CPUが刷新。CPUソケットもLGA1200に

 ここ1年におけるマザーボード関連の最大のトピックは、Intelの第10世代Coreシリーズの登場に合わせ、新チップセットを搭載したマザーボードが登場したことだ。ここ数年、Intelのメインストリーム向けCPUは「LGA1151」というCPUパッケージでLGA1151ソケットに対応していたが、第10世代Coreは「LGA1200」という新しいパッケージでLGA1200ソケットに対応する。チップセットも「Z490」、「H470」、「B460」といった専用のものが用意されており、従来マザーボードとは互換性がないため注意が必要だ。

 AMDプラットフォームでは、2020年11月にZen 3アーキテクチャを採用した新世代のRyzen 5000シリーズが登場したが、形状は従来と同じで新チップセットも投入されなかったため、マザーボードに大きな動きはなかった。Ryzen 5000シリーズは、UEFIのアップデートは必要だが、X570などの500シリーズチップセットを搭載した従来マザーボードで動作する。ただ、X570マザーボードの登場から1年半が経過していることもあり、Ryzen 5000シリーズの登場に合わせて新モデルもいくつか発売されている。これらの製品は、従来モデルをブラッシュアップしたもので、品質面、機能面ともに注目すべき点が多い。なお、Ryzen 5000シリーズは、メーカーの対応しだいとなるが、X470などの400シリーズチップセットでも動作する。

第10世代Coreは従来と異なる
LGA1200マザーが必要
第6世代から第9世代Coreの対応CPUソケットはLGA1151であったが、第10世代CoreではLGA1200に変更された。そのため第10世代Coreは従来のマザーボードでは使用できない。対応チップセットは上記の4種類で、Z490が、K型番CPUの倍率変更によるOC、CPUのPCI Expressレーンの分割によるマルチGPUに対応する最上位だ
第10世代Core対応チップセット
Z490H470B460H410
倍率変更によるOCにも対応した最上位がZ490
Ryzen 5000シリーズは従来のSocket AM4マザーで動作
Ryzen 5000シリーズ専用のチップセットは発表されておらず、対応チップセットはRyzen 3000シリーズと同じX570、B550、A520だ。そのためUEFIのアップデートは必要だが、従来のSocket AM4マザーボードを使用することができる
Ryzen 5000シリーズ対応チップセット
X570B550A520
400シリーズチップセットマザーで動作するかはメーカーの対応しだい
X470やB450などを搭載したマザーボードもUEFIの対応しだいではRyzen 5000シリーズが動作する。400シリーズチップセットのマザーボードを所有している人はメーカーのWebサイトで確認してみよう。なお、GIGA-BYTEのX470マザーとB450マザーはすべて対応UEFIが配布されている。写真はX470マザー「X470 AORUS GAMING 5 WIFI」

PCI Express 4.0対応の有無も重要な選択肢

 公称リード性能が7,000MB/sを超える性能のPCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDが登場するなど、最近、なにかと話題になるPCI Express 4.0。現状、PCI Express 4.0をサポートしているのはAMDプラットフォームだけだ。ただし、AMDプラットフォームであっても、組み合わせるCPUとチップセットによってはPCI Express 4.0がサポートされないので注意が必要。Socket AM4でPCI Express 4.0が有効となるのは、GPUを内蔵しないRyzen 3000/5000シリーズとX570チップセットまたはB550チップセットを組み合わせた場合のみだ。このことは必ず覚えておきたい。なお、AMDのウルトラハイエンドSocket sTRX4では、CPU、チップセットともにPCI Express 4.0に対応する。サポートするレーン数が多いので、超高速なPCI Express 4.0デバイスを何台も使用したい人に適している。

 Intelプラットフォームでは、Rocket Lakeの開発コード名で知られる次世代CPUでPCI Express 4.0をサポートすることがすでにアナウンスされている。Rocket Lakeは第10世代Coreと同じLGA1200パッケージを採用するため、現行のLGA1200マザーボードの中には、Rocket Lakeを使用した場合にPCI Express 4.0対応となるというM.2スロットを持つものもある。将来性重視の人はそういう製品に注目してみよう。

現状、PCI Express 4.0対応なのはAMDプラットフォームだけ

Socket AM4ではCPUとチップセットの組み合わせがカギ
GPU非搭載のRyzen 3000/5000シリーズはPCI Express 4.0をサポートしている。X570チップセットまたはB550チップセットマザーボードと組み合わせた場合にのみ、PCI Express 4.0が有効となる。なお、X570はチップセット側もPCI Express 4.0をサポートしているが、B550は非対応なので要注意
Socket sTRX4はサポートレーン数が多い
第3世代Ryzen Threadripperとその対応チップセットであるTRX40はともにPCI Express 4.0をサポートしている。CPU側で56レーン、チップセット側で16レーンとサポートするレーン数が多いのが特徴だ

メニーコアCPUを使用するならVRMに注目

 もともと8コア以上のメニーコアCPUは消費電力が大きかったが、第10世代CoreはTurbo Boost時の最大消費電力が格段に増えている。そのため、メニーコアCPUを長期的に安定して動作させるためにはますますVRMの性能が重要となっている。

 VRMではまずフェーズ数が性能の目安となる。フェーズ数が多いほど、回路にかかる負担を分散できるため、安定性、耐久性が高まるからだ。8コア以上のメニーコアCPUを長期的に安定して動作させるには10フェーズ以上が望ましい。また、コンデンサやMOSFETなどの部品の品質もVRMの性能を大きく左右するので要チェックだ。さらに、冷却機構にも注目したい。VRMは負荷がかかると発熱が大きくなる。十分な冷却ができないとCPUへの電力供給が不安定になるからだ。

8コア以上のCPUを使用する場合はVRMが重要

世代CPU名TDPPL1PL2
第10世代 Comet LakeCore i9-10900K125W125W250W
Core i7-10700K125W125W229W
第9世代 Coffee LakeCore i9-9900KS127W127W約159W
Core i9-9900K95W95W約119W
Core i7-9700K95W95W約119W

 IntelのCPUには「PL1」と「PL2」という消費電力枠が設けられている。TDPと同じ数値の消費電力枠がPL1で、通常はこの値を超えないように動作クロックなどが調整される。PL2はTurbo Boost時の最大消費電力枠。注目したいのはこのPL2の値。前世代ではPL2はPL1の1.25倍に設定されていたが、最新の第10世代Coreでは最大2倍にまで拡大されている。そのため、電源部にかかる負担はより大きくなっている。

VRMの注目ポイント

フェーズ数など
フェーズ数が多いと回路にかかる負担を分散でき、安定性、耐久性が高まる。コンデンサやMOSFETなどの部品の性能も重要。なお、OCする場合はEPS12V端子の仕様を要確認。8ピン+8ピンもしくは8ピン+4ピン構成のものを選択したい
冷却機構
VRMへの負荷が増加すると発熱量が多くなる。そのため、高い冷却性能を持つヒートシンクを装備するものほど安定性や耐久性が高くなる。発熱の増加を受け、VRMを冷却するファンを装備する製品も増えている

ネットワーク機能が充実した製品が増加

 最近のマザーボードの特徴としてネットワーク機能の強化が挙げられる。これまで高速LANをサポートするマザーは特別仕様のゲーミングモデルくらいであったが、最近はミドルレンジ以上のモデルでは2.5G LAN対応が標準的となった。無線LANもWi-Fi 6対応が当たり前になっている。

高速ネットワークへの対応にも要注目

ミドルレンジ以上では2.5G LANが標準に
Z490やB550マザーの多くがIntelまたはRealtekのコントローラで2.5G LANをサポートしているなど、最新マザーでは2.5G LANの搭載はめずらしくない
Wi-Fi 6への対応も進んでいる
最大9.6Gbps転送が可能なWi-Fi 6の対応も進んでいる。現行無線LAN対応マザーのほとんどがWi-Fi 6をサポートしている

【投票結果発表】本誌執筆陣が評価した製品はコレだ!!

 今回は、マザーボードを「4万円以上」、「2万円~4万円」、「2万円以下」、「スモールフォームファクター」の四つのカテゴリーに分け、DOS/V POWER REPORT執筆ライターと編集部による投票でオススメ製品を決定した。それぞれの持ち点は各カテゴリーの製品数に応じて、4万円以上は5点、2万円~4万円は8点、2万円以下は4点、スモールフォームファクターは3点とし、1製品につき1点投票できるルールとしている。

4万円以上

メーカー名製品名CPUソケットチップセットフォームファクターTa 152H-1芹澤正芳滝 伸次編集部
ASRockZ490 TaichiLGA1200Intel Z490ATX111
ASUSTeKROG Crosshair VIII Dark HeroSocket AM4AMD X570ATX1111
MSIMEG Z490 ACELGA1200Intel Z490ATX11
GIGA-BYTEX570 AORUS MASTERSocket AM4AMD X570ATX11
ASUSTeKROG MAXIMUS XII FORMULALGA1200Intel Z490ATX1
ASUSTeKROG MAXIMUS XII HERO(WI-FI)LGA1200Intel Z490ATX1
GIGA-BYTEZ490 VISION DLGA1200Intel Z490ATX1
ASRockX570 Taichi Razer EditionSocket AM4AMD X570ATX1
GIGA-BYTEX570 AORUS XTREMESocket AM4AMD X570ExtendedATX1
ASRockB550 Taichi Razer EditionSocket AM4AMD B550ATX1
ASRockTRX40 TaichiSocket sTRX4AMD TRX40ATX1
GIGA-BYTETRX40 DESIGNARESocket sTRX4AMD TRX40XL-ATX1
MSICREATOR TRX40Socket sTRX4AMD TRX40ExtendedATX1

 ASUSTeKのX570マザー「ROG Crosshair VIII Dark Hero」が全員の票を獲得した。Ryzen 5000シリーズを見据えて開発された新製品で、電源部が強化されていたり、チップセットクーラーを排して高性能ヒートシンクを装備したりと、従来モデルに比べ数々の改良がなされている点が評価された。

Ryzen 5000シリーズを見据えて開発されたROG Crosshair VIII Dark Heroが満票を獲得

2万円~4万円

メーカー名製品名CPUソケットチップセットフォームファクターTa 152H-1芹澤正芳滝 伸次編集部
ASUSTeKROG STRIX Z490-F GAMINGLGA1200Intel Z490ATX111
GIGA-BYTEH470 AORUS PRO AXLGA1200Intel H470ATX111
ASRockX570 PG VelocitaSocket AM4AMD X570ATX111
ASUSTeKTUF GAMING X570-PLUSSocket AM4AMD X570ATX111
MSIMEG X570 UNIFYSocket AM4AMD X570ATX111
MSIMAG Z490 TOMAHAWKLGA1200Intel Z490ATX11
ASUSTeKTUF GAMING H470-PRO(WI-FI)LGA1200Intel H470ATX11
ASUSTeKROG STRIX B550-F GAMING(WI-FI)Socket AM4AMD B550ATX11
GIGA-BYTEB550 VISION DSocket AM4AMD B550ATX11
ASRockZ490 Steel LegendLGA1200Intel Z490ATX1
ASUSTeKROG STRIX Z490-E GAMINGLGA1200Intel Z490ATX1
MSIMEG Z490 UNIFYLGA1200Intel Z490ATX1
NZXTN7 Z490LGA1200Intel Z490ATX1
ASRockX570 Extreme4Socket AM4AMD X570ATX1
ASUSTeKROG STRIX X570-F GAMINGSocket AM4AMD X570ATX1
GIGA-BYTEX570 AORUS ELITESocket AM4AMD X570ATX1
MSIMPG X570 GAMING PRO CARBON WIFISocket AM4AMD X570ATX1
ASRockB550 Steel LegendSocket AM4AMD B550ATX1

 このカテゴリーでは価格に対して、品質、機能が充実しているものが票を集めた。Z490になってもASUSTeKのROG STRIXシリーズの「F GAMING」モデルの評価は高い。X570マザーではASRockとMSIの新世代モデルが高く評価された。注目はGIGA-BYTEの「H470 AORUS PRO AX」。ダイレクト制御の11+1フェーズ構成のVRMを搭載するなど高品質仕様の上、USBやM.2などの拡張機能が充実しており、OCに興味がない層へのベストチョイスモデルとして評価された。

MEG X570 UNIFYは上位のMEG X570 ACEと同じ12+2+1フェーズVRMを搭載する

2万円以下

メーカー名製品名CPUソケットチップセットフォームファクターTa 152H-1芹澤正芳滝 伸次編集部
ASRockB550M Steel LegendSocket AM4AMD B550microATX111
ASUSTeKTUF GAMING B550-PLUSSocket AM4AMD B550ATX111
MSIMPG Z490 GAMING PLUSLGA1200Intel Z490ATX11
ASRockB460M Pro4LGA1200Intel B460microATX11
MSIMAG B460M MORTAR WIFILGA1200Intel B460microATX11
MSIMAG B550 TOMAHAWKSocket AM4AMD B550ATX11
GIGA-BYTEB550 AORUS ELITESocket AM4AMD B550ATX1
MSIMPG B550 GAMING PLUSSocket AM4AMD B550ATX1

 2万円以下のマザーでは、高耐久をうたうASRockの「B550M Steel Legend」、ASUSTeKの「TUF GAMING B550-PLUS」が多く票を集めたが、機能が充実しておりコストパフォーマンスが高いMSI製品の評価も高かった。

高耐久をウリとするB550M Steel Legend

スモールフォームファクター

メーカー名製品名CPUソケットチップセットフォームファクターTa 152H-1滝 伸次竹内亮介編集部
GIGA-BYTEB550I AORUS PRO AXSocket AM4AMD B550Mini-ITX1111
ASRockH470M-ITX/acLGA1200Intel H470Mini-ITX111
ASUSTeKROG STRIX B460-I GAMINGLGA1200Intel B460Mini-ITX11
ASUSTeKROG STRIX Z490-I GAMINGLGA1200Intel Z490Mini-ITX1
ASRockB550M-ITX/acSocket AM4AMD B550Mini-ITX1
ASUSTeKROG STRIX B550-I GAMINGSocket AM4AMD B550Mini-ITX1

 スモールフォームファクターでは、内部に熱がこもりがちな小型PCケースで使用されることを想定して、品質が高いことを大前提として、機能が充実した製品が多く票を集めた。

高品質、高機能が魅力と言えるB550I AORUS PRO AX

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