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省電力化と性能向上の両立を図ったRyzen 5000シリーズ

 AMDは、モバイル向けのRyzen 5000シリーズに関する詳細情報を公開した。

 モバイル向けのRyzen 5000シリーズは、ゲームやクリエイティブ用途を想定したHシリーズ、薄型ノートパソコン向けのUシリーズ、セキュリティや管理機能を強化したビジネス向けのPROシリーズを展開する。ここではおもにHおよびUシリーズに関して取り上げる。

迅速なモバイル製品投入を可能にしたモバイル向けRyzen 5000シリーズ

モバイル向けRyzen 5000シリーズ

 モバイル向けRyzen 5000シリーズでは、多くの製品においてZen 3アーキテクチャを採用。モバイル向け製品についても、デスクトップ向け製品と同様にCPUコアとL3キャッシュの構成が変更され、4つのコアとL3キャッシュのブロックを2基内蔵する設計から8つのコアで1つのL3キャッシュを共有する設計となった。加えてモバイル向け製品では、L3キャッシュの容量が8MB(4MB+4MB)から16MBへと倍増されている(Ryzen 3 5400Uのみ8MBとなる)。

 Ryzen 4000シリーズと5000シリーズでは、SoCアーキテクチャがほぼ同様のものとなっている。これは、Ryzen 4000シリーズの段階から意図的に行なわれたもので、Zen 2およびZen 3コアのどちらもサポートできるような設計を採用することで、Zen 3搭載製品の市場投入を早める狙いがあったという。結果的に、これまではデスクトップ向け製品の投入からモバイル向け製品の投入までに約1年ほどかかっていたものが、今回は3カ月以内で実現できたとする。

 これに付随して、Ryzen 5000シリーズと4000シリーズはピンの互換性を持つため、OEMメーカーは既存のマザーボードなどに大きく手を加えることなく、新たなCPUを組み込むことが可能になることから、搭載製品の投入もすばやく行なえるとしている。

Zen 2からZen 3への変更点
Ryzen 5000シリーズのSoCアーキテクチャ

Zen 3採用で性能向上。省電力化でバッテリ駆動時間も改善

性能向上とバッテリ駆動時間延長を実現

 従来のRyzen 4000シリーズから、性能向上だけでなく省電力化を実施。両世代の最上位モデルに相当するRyzen 9 4900HとRyzen 9 5980HXの比較では、シングルスレッド性能が最大23%向上したほか、モバイル向けのRyzen 7 4800UとRyzen 7 5800Uの比較では、バッテリ駆動時間が最大約2時間延長されたとする。

 また、Ryzen 5000シリーズではメモリコントローラ周りの改善を実施。メモリPHYにDeep Power Stateとよばれる省電力モードを追加した。メモリアクティビティが少なくなると、PHYをバイパスして代替の低電圧電源に移行することで、消費電力を抑える。加えて、電力制御の面では、各CPUコアおよびGPUの電圧を個別に制御可能となり、高い性能を効率的に引き出せるようになった。

 グラフィックスも強化され、クロックが最大で350MHz向上し、最大2.1GHzでの駆動が可能となった。電力効率の改善も実施し、CPU側の省電力化によりGPUが使える電力が増加。性能は15%ほど向上したとする。なお、GPUアーキテクチャは引き続きVegaを採用する。

 そのほか、デュアルディスプレイ接続時の電源管理やバックライト制御の改善、BIOSレベルでのCPU電源管理コントローラの改善などを実施。Ryzen 7 5800U搭載製品では、通常使用で約18時間、映画の再生では約21時間のバッテリ駆動を実現。CPUを4000シリーズから5000シリーズに変更するだけで、ほかのパーツを変更せずとも約2時間のバッテリ駆動時間延長が可能だとする。

 同社によれば、150機種ものRyzen 5000シリーズ搭載製品が投入される見込みで、4000シリーズと比べて約1.5倍の製品ラインナップになるという。

メモリコントローラの強化
GPUは動作クロックが最大2.1GHzに
コアごとに電力制御が可能に
システム全体を通じて省電力化を図る
Ryzen 5000シリーズの製品ラインナップ
Ryzen 5000シリーズ搭載製品は150機種にのぼる

Hシリーズ

Ryzen 5000 Hシリーズの製品一覧
製品名コア/スレッド数ブースト/ベースクロックキャッシュ容量GPUコア数(ブーストクロック)TDP
Ryzen 9 5980HX8/164.8GHz/3.3GHz20MB8(2.1GHz)45W+
Ryzen 9 5980HS4.8GHz/3GHz35W
Ryzen 9 5900HX4.6GHz/3.3GHz45W+
Ryzen 9 5900HS4.6GHz/3GHz35W
Ryzen 7 5800H4.4GHz/3.2GHz8(2GHz)45W
Ryzen 7 5800HS4.4GHz/2.8GHz35W
Ryzen 5 5600H6/124.2GHz/3.3GHz19MB7(1.8GHz)45W
Ryzen 5 5600HS4.2GHz/3GHz35W

 Hシリーズでは、Ryzen 5からRyzen 9まで計8製品を投入。すべてZen 3アーキテクチャを採用する。TDP 35WのHS系、45WのH系、および45W+のHX系を用意する。

 今回新たに加わったHX系プロセッサは、オーバークロックが可能な点が特徴の製品。上位のRyzen 9にのみ用意され、ハイエンドゲーミングノートなどを想定している。Ryzen 5/7では、HX系ではなくH系プロセッサを用意する。

 HS系プロセッサは、TDPを35Wに抑えることでモバイル性と処理性能のバランスをとった製品。ベースクロックはHX/H系プロセッサより低く設定されているものの、ブーストクロックは同等となっており、最上位のRyzen 9 5980HSでは最大4.8GHzでの動作を実現する。

 Ryzen 9 5900HXでは、競合のCore i9-10980HKに対してCinebench R20のシングルスレッドで14%、PassmarkのOverallテストで37%、3DMark Fire StrikeのPhysicsテストで21%の高い性能を発揮できるとする。また、GeForce RTX 3080と組みあわせたシステムでのテストでは、多くのAAAゲームタイトルにおいて、フルHD/高画質設定時でおおむね最大100fps以上が発揮できたとしている。

Ryzen 9 5980HS
競合より最大37%高い性能が発揮できるという
Ryzen 9 5900HXとGeForce RTX 3080を搭載したシステムでのゲームプレイ時の結果
エンスージアスト向けとして投入された初代のRyzen Threadripper 1900Xよりも高速に

Uシリーズ

Ryzen 5000 Uシリーズの製品一覧
製品名コア/スレッド数CPUアーキテクチャブースト/ベースクロックキャッシュ容量GPUコア数(ブーストクロック)TDP
Ryzen 7 5800U8/16Zen 34.4GHz/1.9GHz20MB8(2GHz)15W
Ryzen 7 5700UZen 24.3GHz/1.8GHz12MB8(1.9GHz)
Ryzen 5 5600U6/12Zen 34.2GHz/2.3GHz19MB7(1.8GHz)
Ryzen 5 5500UZen 24GHz/2.1GHz11MB
Ryzen 3 5400U4/8Zen 34GHz/2.6GHz10MB6(1.6GHz)
Ryzen 3 5300UZen 23.8GHz/2.6GHz6MB6(1.5GHz)

 Uシリーズでは、Ryzen 3からRyzen 7まで計6製品を投入。今回は全製品でSMTが有効となる。

 発表されたラインナップのなかでは、型番の百の位が偶数のものがZen 3、奇数のものがZen 2を採用する。後者についてCPUのアーキテクチャは旧世代となるものの、Ryzen 5000シリーズで改良された省電力機能は備えており、クロックアップやSMTの有効化などにより性能が高められている。

 薄型軽量ノート製品において8コアが提供できる唯一のCPUシリーズだとアピールしており、Ryzen 7 5800Uでは、PCMarkのProductivity Performanceテストにおいて、対Core i7-1165G7比でほぼ同等から約1.2倍の性能実現。Ryzen 5 5600Uでは、フルHD/低画質設定時のゲームプレイにおいて、対Core i5-1135G7比で最大1.4倍のグラフィックス性能が発揮できるとした。

Ryzen 7 5800U
PCMark Productivity Performanceでの比較
ゲームプレイ時のグラフィックス性能比較
前世代との比較(シングルスレッド)
前世代との比較(マルチスレッド)