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インテル、増加し続けるデータを“民主化”する取り組み

鈴木国正氏

 インテル株式会社は10日、2020年第4四半期や通年の同社の取り組みなどを紹介するプレスセミナーを開催。このなかで同社 代表取締役社長の鈴木国正氏が、2020年を振り返った。

 同社の全体的な動きとしては、世界的に爆発的に増加しているデジタルデータに対処するため、「データセントリック」の戦略を掲げる。つまり、これまでのコンピューティングの需要に応えるのみならず、ストレージやネットワークを含めた市場も応えていくということだ。

 そのために注目しているキーワードが「AI」、「5G/ネットワーク変革」、「インテリジェント・エッジ」であり、つまるところ、膨大なデータを適切なところ(エッジ)で処理し、ネットワーク転送技術(5G)を支えつつ、AIでそのデータを意義あるものにするというわけだ。同社の2020年の製品ポートフォリオ全体を改めて俯瞰してみると、それに対応できているとする。

 また、そのために単に半導体を提供するだけでなく、エコシステムパートナーとしての役目を果たし、組織や業界を超えた連携によるデータの活用や、さまざまなシステムの構築支援を行なっているとした。

増加し続けるデータに対処
同社の2020年のポートフォリオ
業界を超えた取り組み

 その一方で、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響により、「パソコンというデバイスが改めて評価されている」ともする。リモートワークが当たり前になりつつあるなか、もはやパソコンそのものが職場であり、より高い生産性を実現するためには、高い性能のパソコンが欠かせないという認識が広がった。加えて、GIGAスクールやゲーミング分野においても、需要が高まっている。

 そのために同社は第11世代Coreを第4四半期に本格展開。イベント「インテルPC FES 2020」を通して、さまざまなカテゴリにおいて、パソコンによって生まれる新しい未来を消費者に伝えていったとする。また、第11世代Coreの投入とともにコーポレートロゴも刷新、やや明るいブルーをロゴに取り入れ、「明るい未来の創造に期待したい」とした。

第11世代Coreの投入
パソコンの価値の新しい評価軸
インテル PC FES 2020の開催
ブランドロゴの刷新

 2021年以降の取り組みとしては、先述のデータセントリック戦略をより一歩推し進め、「データの民主化」を目指すとする。Intelは創業以来、コンピュータの民主化を実現してきたが、今度は爆発的に増加しているデータを、誰もが有意義なものとして手軽に扱えるようにするのが目標である。

 そのためには、現在展開しているXPU戦略(つまりCPUやGPU、FPGA、AIアクセラレータといったプロセッサを、データ処理に応じて適材適所に取り入れること)をさらに推進するとともに、ソリューション別プラットフォームの強化や製造技術の強化を行なう。

 また、2021年はeスポーツやゲーミング、自動運転、スマートシティ、oneAPIといった取り組みに加え、(開催されることが前提で)オリンピックに向けた支援も積極的に行なっていくとした。

データの民主化の実現
XPU戦略の推進など
2021年の取り組み

より効率的なデータ処理を実現するさまざまなコンピューティング技術

土岐英秋氏

 続けて、同社執行取締役常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏は、12月はじめに開かれた「Intel Labs Day 2020」について、そのなかで紹介された統合フォトニクス技術、ニューロモーフィックコンピューティング技術、量子コンピューティング技術について簡単に振り返った。

Intel Labs Day 2020の内容

 先述のとおり、世界的にデータ量が爆発的に増加するなか、これまでの電気信号にとって代わるデータの転送手段が求められている。というのも、電気信号は、高速化すればするほど、そして長距離になればなるほど、その転送にかかるエネルギー効率が悪くなる問題があると言い、その解決手段の1つとして有望視されているのが、光によるデータ転送であるからだ。

 Intelが今回開発したプロトタイプは、半導体のなかにレーザー出力回路、変調器、検出回路、そしてアンプ回路といったすべてを集積するもので、これにより先述の問題を解消する。

統合フォトニクス

 一方ニューロモーフィックコンピューティングとは、動物の脳神経をシミュレーションすることで、特定分野においてより効率的なデータ処理を目指すもの。たとえばオウムやインコなどの動物の脳はわずか2gしかないが、障害物を避けて飛ぶことはできる。それでいてなおかつ一般的なプロセッサと比較して数百分の1のエネルギーで処理が行なえる。

 つまり、この技術をドローンなどに応用すれば、障害物を避けて飛ぶ自立飛行のドローンなどが実現できるといい、Intelそれに向けた研究を発表した。

ニューロモーフィックコンピューティング

 最後は量子コンピューティングについて。ご存知のとおり実際の量子ビットは、絶対零度に近い極低音環境で操作が行なわれるのだが、操作を行なう制御部については高温環境にあり、そこから低温環境へつなぐ配線の多さが課題となっている。量子コンピューティングの実用化には、量子ビットを増やすのが最重要課題だが、配線が多いとその増加の足かせとなるからだ。

 今回Intelの研究では、その操作を行なう制御部をまるごと低温環境に移行するというもので、これにより先述の課題を解決するとしている。

量子コンピューティングでの取り組み