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東芝ら、100億分の1秒でHDDヘッドの動作を解析

今回開発した解析技術の概要

 株式会社東芝高輝度光科学研究センター(JASRI)および東北大学は、100億分の1秒の精度でHDD用書き込みヘッドの磁化の挙動を画像化することに成功した。世界初の成功例だとしている。

 HDDは主要なストレージデバイスとして用いられているが、2020年の年間総出荷容量が1ZB(ゼタバイト)を超えるなど、世界中のデータ量が爆発的に増大している。これにともない、HDDのさらなる容量増加とデータ転送速度の向上が求められているが、その実現には書き込みヘッドの動作を正確に把握した上で設計する必要がある。一方で、書き込みヘッドは100nm以下の微細な構造、かつ1ns(ナノ秒)以内で高速に磁化反転を行なうパーツであるため、動作を観察するのが困難で、正確に把握する新たな手法の開発が求められていた。

 研究グループでは、大型放射光施設SPring-8に設置された走査型X線磁気円二色性顕微鏡装置を用いた、書き込みヘッドの新たな解析技術を開発した。SPring-8の蓄積リングから周期的に生成されるX線パルスにあわせて、その10分の1の周期で磁化を反転されるよう書き込みヘッドを制御。時間分解測定を行ない、集光したX線を利用して磁化の時間変化を画像化する。

書き込みヘッドの磁化変化の様子

 この手法を用いて、書き込みヘッドの反転時の磁気変化を解析したところ、主磁極部分の磁化反転が1ns以内に完了する様子が捉えられ、さらに磁気反転にともなってシールド部分に生じる磁化の空間的パターンの観察にも成功した。

 今回開発した技術では、50ps(ピコ秒)の時間分解能、100nmの空間分解能を発揮できており、集光素子の改良などによりさらなる高精度化も可能だという。同グループでは、高精度な書き込みヘッドの動作解析により、次世代ヘッドの開発によるHDDの高性能化が期待できるとしている。また、東芝の開発しているエネルギーアシスト磁気記録向けのヘッド開発の応用も見込んでいる。