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国内パソコン構成比でノート型が初の90%超え。14型以下のモバイルノートに人気集中

2020年度上期 JEITAパソコン出荷統計

 業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表している国内パソコン出荷統計によると、2020年9月のノートパソコンの構成比が、92.1%に達した。

 長い歴史を持つ同統計が開始されてから、はじめてノートパソコンが9割を超える結果になった。ノートパソコンが登場してから、史上もっとも高い構成比になったと言える。

 同調査では、ノートパソコンの構成比は、2019年度(2019年4~2020年3月)実績では72.9%となっていたが、2020年4月には80.2%と単月で8割を突破。5月は82.8%、6月は85.2%、7月は83.7%と、80%台で推移。8月には89.4%と9割に迫っていた。

 最新データとなる9月実績で92.1%とはじめて9割台に突入。2020年度第2四半期(2020年7~9月)実績でも89.6%と、約9割を占めた。

13.3型モバイルノート

 9月の出荷実績をみると、ノートパソコンは、前年同月比61.2%増の133万4,000台と大幅に成長。なかでも、画面サイズが14型以下および重量が1.5kg以下のものと定義しているモバイルノート型は、前年同月比347.1%増の81万6,000台と、4.5倍にも増加した。それに対して、モバイルノート型を除くノート型は19.6%減の51万9,000台と、2割減少した。

 ノートパソコン市場では、15型ディスプレイを搭載したノートパソコンが、個人需要を中心に高い人気を誇っており、これが主力製品となっていた。そのため、7月までは、モバイルノートパソコンの構成比は、3分の1から4分の1程度にとどまるかたちで推移している状況だった。

 だが、8月になって構成比が一気に逆転。8月はモバイルノートパソコンが57%、9月は61%を占めた。

 一方、デスクトップパソコンの9月出荷実績は、前年同月比64.7%減の11万4,000台となった。第2四半期実績でも前年同期比59.3%減と、約6割も減少している。

数字の変化はGIGAスクール構想が大きく影響

 こうした市場変化の背景には、GIGAスクール構想の影響が大きい。

 GIGAスクール構想は、児童生徒に1人1台のパソコンを学校に整備するもので、政府は当初計画を前倒しで進めることを決定。7月以降、導入の動きが本格化してきた。

 GIGAスクール構想では、導入するデバイスの仕様は、ノートパソコンおよびタブレットに決められており、ノートパソコンのディスプレイサイズは、9~14型。可能であれば11~13型が望ましいとしている。JEITAの出荷統計では、モバイルノート型に含まれることになり、それが数字に反映された格好だ。

Chromebook

 また、JEITAでは、9月は、法人向けパソコンが好調に推移し、台数は2020年4月以来、5カ月ぶりに前年同月の実績を上回ったことを明らかにしているが、統計上、GIGAスクール構想によるパソコンの出荷は法人向けパソコンのなかに含まれており、ここにもGIGAスクール構想の効果が見てとれる。

 GIGAスクール構想は、今後、さらに導入が本格化する予定で、JEITAの出荷統計では、下期においても、ノートパソコンの構成比が高止まりすることになりそうだ。

BCNの調査ではデスクトップパソコンの伸長も見られる

 一方で、量販店では、これとは異なる動きが見られている。

 量販店などの販売データを集計しているBCNによると、9月の販売実績では、ノートパソコンが88.2%と高い構成比を維持したままではあるが、4月以降、ノートパソコンの構成比は減少傾向にある。

 BCNの販売データでは、JEITAの出荷統計のように、GIGAスクール構想の数字が盛り込まれていない。だが、ノートパソコンが高い構成比となっている背景には、在宅勤務や在宅学習用にノートパソコンを購入する人が多かった点が見逃せない。

 いまでもノートパソコンの高い構成比であることは間違いないが、4月が93.3%であったことに比べると、ノートパソコンの構成比は少しずつ減少。代わって、デスクトップパソコンの構成比が月を追うごとにじょじょに上昇しており、4月には6.7%だったデスクトップパソコンの構成比は、9月には11.8%にまで上昇している。

 当初は、在宅勤務用にも、家庭内を持ち運べることができるノートパソコンが適していると判断していた人が多かったが、在宅勤務期間の長期化に伴い、ディスプレイ上での作業スペースが大きく確保できるデスクトップパソコンに対するニーズが拡大しはじめたとみることができそうだ。

 なお、JEITAの出荷統計では、パソコン市場全体では、前年同月比25.7%増の144万9,000台と、2020年度に入ってからはじめてプラス成長となったが、出荷金額は前年同月比14.5%減の875億円となった。

 また、第2四半期の出荷台数は、前年同期比2.4%増の294万5,000台、そのうち、デスクトップパソコンは、59.3%減の30万8,000台、ノートパソコンは24.4%増の263万7,000台。出荷金額は17.9%減の2,122億円となった。第2四半期実績としては、現行体系での統計を開始した2007年以降では過去最高の出荷台数になった。

 2020年度上期(4~9月)のパソコン全体の出荷台数は、前年同期比1.8%減の495万2,000台。そのうち、デスクトップパソコンは、50.5%減の65万3,000台、ノートパソコンは15.4%増の429万9,000台。ノートパソコンの構成比は86.8%となった。

 上期の出荷金額は、前年同期比11.4%減の4,134億円。そのうち、デスクトップパソコンは41.9%減の678億円、ノートパソコンは1.2%減の3,456億円となった。

 JEITAでは、「2020年度上期は、店頭系が堅調に推移したものの、法人向けは、Windows 7のサポート終了前の需要による前年度の反動減があり、全体としては、2016年度下期以来、7半期ぶりに台数、金額ともに前年同期を下回った」としている。

 なお、JEITAのパソコン出荷統計は、Apple Japan、NECパーソナルコンピュータ、セイコーエプソン、Dynabook、パナソニック、富士通クライアントコンピューティング、ユニットコム、レノボ・ジャパンの8社が参加している自主統計で、日本HPやデルなどは参加しておらず、市場全体の7割弱をカバーしていると見られる。