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史上初、レノボなど外資系パソコンブランドが上位3位までを独占

~第2四半期は在宅勤務とGIGAスクール需要が追い風に

2020第2四半期国内トラディショナルパソコンの出荷台数のトップ5カンパニーシェア

 IT専門調査会社であるIDC Japanが発表した2020年第2四半期(2020年4月~6月)の国内トラディショナルパソコンの出荷台数は、前年同期比0.7%減の396万台となった。

 2019年10月の消費増税、2020年1月のWindows 7のサポート終了などにより、活況だった前年同期の反動で、2020年第2四半期は、かなりの落ち込みが予想されていたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐための対応策として、法人市場および家庭市場においてパソコンの購買が急増。昨年(2019年)同期とほぼ同レベルの出荷数を維持する結果となった。

 IDC Japan PC, 携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏は、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大、そしてGIGAスクール構想が、働き方や学習法に根本的な変革をもたらそうとしている。パソコンはこの変革の核となるツールであり、これらに起因するパソコン需要は中期的に期待できる可能性がある」とコメントした。

 第2四半期実績の内訳は、法人市場が前年同期比17.0%減の237万台、家庭市場は40.7%増の159万台となつた。

 法人市場については、「在宅勤務があまり進んでいなかった中小企業を中心にノートパソコンの購入が進み、国や地方自治体が提供する感染症対策補助金や在宅勤務推進のための助成金も、中小企業によるパソコンの購入を後押しした。さらに、文部科学省が推進するGIGAスクール構想向けのノートパソコンの出荷が第2四半期から開始され、法人市場を大きく底上げした」と分析。

 法人市場は17.0%減と2桁減となったものの、「昨年同期に前年同期比64.0%と大きく伸長した市場に対して、2桁減とは言うものの、17.0%減に留る結果になっている」と表現した。

 家庭市場では、「感染症のために学校や塾が閉鎖となり、オンラインで提供されるさまざまな教育コンテンツに対する需要が高まり、子供向けにパソコンを購入する動きが活発になった。

 また、中小企業を中心に、在宅勤務で使用するパソコンを、家庭で購入するために補助金を出す企業が出現するなど、家庭で仕事をするためのパソコン需要が急拡大した。家庭市場では、学習や仕事関連の需要で、ノートパソコンのみならずデスクトップパソコンの購買も急拡大した」としている。

レノボ、NEC、富士通で40%を占める

 2020年第2四半期のカンパニー別の出荷数についても発表した。

 1位は、レノボ・ジャパン/NECパーソナルコンピュータ/富士通クライアントコンピューティンググループで40.9%。前年同期比3.3%増となった。新型コロナウイルス感染症対策と、GIGAスクール構想の特需を捉え、法人市場と家庭市場で好調だったという。

 レノボ・ジャパンでは、「レノボ・ジャバンは、GIGAスクール構想の案件を除いても、前年同期比6.5%増という伸びを見せた。テレワークガイドの公開など、テレワークに関する各種の情報発信を通じて、テレワークに強いブランドイメージが確立し、中小企業を中心に企業案件が堅調に推移。家庭向けパソコンも、テレワークや在宅学習向けのニーズを刈り取った」という。

 これに、GIGAスクール構想の特需案件を含めると、さらに大きな成長を遂げ、Lenovo/NEC/富士通グループの高いシェアの維持に貢献した模様だ。ちなみに、GIGAスクール構想向けの案件では、Chrome OS搭載モデルの出荷比率が高いという。

 2位は、日本HPで17.1%。前年同期比9.4%減となり、市場全体の0.7%減を下回る結果となり、第1四半期の18.8%という、四半期としては過去最高のシェアから1.7ポイント落とした。法人市場でGIGAスクール構想向けの出荷が少なかったため、競合と比較して不調となったが、家庭市場においては大きく伸ばしたという。

 日本HPでは、「全世界でChromebookの需要が急増し、4~6月期は国内への供給が遅れた。だが、民需市場にフォーカスしたオペレーションを展開し、ブランド別では、パソコン市場全体でも法人向けパソコンでも、首位を継続している。ビジネス全体としての勢いは維持している。今後、GIGAスクール向けのパソコンについても供給確保を進めて、積極的に取り組んでいく」としている。

 デル・テクノロジーズは、16.2%のシェアで3位となった。前年同期比10.2%増と好調を維持。日本HPのシェアに約1ポイントに迫った。新型コロナウイルス感染症対策とGIGAスクール構想の恩恵を受け、法人市場および家庭市場のいずれも大きく伸長した。

 4位は、シャープ(Dynabook)で、6.4%のシェアを獲得した。出荷台数では4位を維持したが、前年同期比17.2%減と低調だった。法人および家庭の両市場における予想以上の需要の急拡大に、部材の調達が追いつかなかったと推測している。

 5位はAppleで、6.0%のシェア。前年同期比15.2%増となり、上位5カンパニーのなかでは、もっとも高い成長率となった。

ブランド別シェアでは富士通、NECが順位を下げる

 今回の調査結果について、主要パソコンメーカー各社に取材をすると、ブランド別シェアでは、上位3位までを外資系パソコンメーカーが占めたことがわかった。これは、パソコン業界の長い歴史のなかでもはじめてのことだ。

 ブランド別では、1位が日本HP、2位がレノボ・ジャパン、3位がデル・テクノロジーズとなっており、第1四半期には3位だった富士通クライアントコンピューティングは4位に、4位だったNECパーソナルコンピュータが5位となった。

 なお、富士通クライアントコンピューティングおよびNECパーソナルコンピュータは、Lenovo傘下ではあるが、現在でも、国内で開発、生産する体制を主軸としており、国産メーカーとしての位置づけにある。

 パソコンメーカー各社のシェアは拮抗しており、第3四半期以降、この勢力図がどう変化するのかが注目される。

Chromebookの品薄が懸念材料に

 また、今後の国内パソコン市場全体の需要動向も気になるところだ。

 第2四半期は、業界の想定を上回るかたちで需要が推移したものの、今後は、テレワーク需要の一巡などに加え、比較対象となる前年同期の分母が大きくなることから、前年実績を上回るかたちで推移するのは難しいとの見方が支配的だ。

 さらに、2020年において、需要拡大の原動力となっているGIGAスクール構想に関する導入案件も、Chromebookの世界的な品薄状況が影響し、供給が追いつかないという事態が発生しており、これも今後の懸念材料の1つになっている。

 Intelは、9月3日に、新たな「第11世代Coreプロセッサ」ファミリを発表するとともに、ノートパソコン向けの「Intel Evoプラットフォーム」を発表。グローバルでは、Evoプラットフォーム認定モデルが20機種発売されることを含め、新CPUを搭載したパソコンが、150機種以上登場するという。市場喚起の起爆剤の1つとして期待されており、日本でも多くの製品が発売されることなりそうだ。

 インテル 執行役員 パートナー事業本部長兼クライアントコンピューティング事業統括 の井田晶也氏は、「Evoプラットフォームによって、場所に捉われないパソコンの利用提案を行なったり、AIによる安定接続や快適なビデオ会議環境によるコラボレーションの促進など、ニューノーマル時代の働き方を牽引する環境を実現することができる。新型コロナウイルスの影響は当面続くと考えており、リモートワークや巣ごもりの広がりにおいて、Evoプラットフォームが貢献できると考えている」などと述べている。

 さらにインテルでは、下期に向けて、「インテルPCフェス2020」を展開し、パソコンゲーミングやクリエイティブ、音楽などの観点から、パソコンの新たな使い方を提案。日本マイクロソフトのモダンPCキャンペーンなどと連携しながら、家庭向けパソコン需要の拡大にも取り組む考えだ。こうしたパソコン業界全体をあげた需要促進策の効果にも注目したい。