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量子コンピューティング「Azure Quantum」で車がスムーズに走れる信号の点灯パターンを実現

 日本マイクロソフト株式会社は19日、量子コンピューティング技術に関するプレス向けラウンドテーブルを開催。株式会社Jijとの共同の取り組みについて解説した。

 発表の内容については、5月19日に米国で発表されたもので、株式会社Jijと協業し、「Azure Quantum」上で信号の点灯パターンの最適化を実現したというもの。

 量子コンピュータは複雑な組み合わせ問題を高速に計算できることで注目されており、カナダのD-Waveをはじめ、さまざまな企業が量子コンピュータの商用化に着手している。たとえば量子アニーリングマシンとしてはD-WaveやNECが先行し、既存の半導体を使って量子コンピューティングを実現しようと、富士通、日立、東芝、そしてMicrosoftなどが取り組んでいる。

 もっとも、実際の組み合わせ問題を量子コンピュータで解くさいには、さまざまな課題を特定し、それを定式化してアルゴリズムを実装、それに最適なマシンを選択して実行する必要がある。Jijでは、この定式化とアルゴリズム実装の部分を独自のインターフェイスで統一化し、プログラミングを不要としている。

 今回、顧客の豊田通商とともに取り組んだ組み合わせ問題は、道路の信号機制御問題だ。道路の信号機の点灯パターンを最適化し、車が停まる時間を最小にすれば、スムーズなドライブ体験と交通渋滞の緩和、炭素排出量の削減を実現できるが、これまではコンピュータでシミュレーションを行なうしかなかった。

 今回JijはAzure Quantumのプレビュー版を利用して解決に取り組んだ。一般的な量子コンピューティングでは、組み合わせが多いと量子ビットが増えてしまうという高次の問題があるが、Azureでは量子着想最適化(QIO)を活用することで解決できた。従来のシミュレーション手法と比較し、車両の待ち時間を20%削減できたとしている。

 Jijでは今後、材料の組み合わせといった課題に向け量子コンピュータを活用していきたいとした。

量子コンピューティングが役に立つ組み合わせ問題
Jijでは量子アニーリングを自動化するプラットフォームを提供
シミュレーションなしで結果を出す量子コンピューティング
従来の最適化と比較して車両の待ち時間を20%削減できたという(シミュレーションによる)