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産総研、繊維状カーボンを組み合わせ金属並の熱伝導性を持つゴム複合材料を開発

CNFを配列させた高熱伝導性ゴム複合材料の模式図

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所は、カーボンナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(CNT)の2種類の繊維状カーボンと、環動高分子のポリロタキサンを複合化させ、ゴムのような柔軟性と金属に匹敵する高い熱伝導性を持つゴム複合材料を開発したと発表した。

 高い熱伝導性に加えて、低ヤング率、高引張強度、高靭性などの機械的特性が求められる次世代の熱伝導性フレキシブル材料として、柔軟なゴム素材と熱伝導性の高いCNFやCNTとの複合材料の研究開発が進んでいるが、CNTの熱伝導率は2,000W/mKを超えるにもかかわらず、複合材料の熱伝導率2W/mKを達成するのに10wt%の添加が必要とされ、多量のCNFを添加すると複合材料の柔軟性が失われて脆くなってしまう問題があった。

 一般に、繊維状カーボンは凝集性が強く複合材料中に分散しにくいため、繊維状カーボン同士が互いに接触してつながった熱伝導のネットワークを、複合材料全体に形成するのは困難であり、さらに大きな繊維状カーボン凝集体とゴム素材との界面が変形時の破壊の起点となって、脆化の要因の1つとなっていた。

 産総研 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ タフコンポジット材料プロセスチームの伯田幸也ラボチーム長、東京大学大学院新領域創成科学研究科大学院生の後藤拓リサーチアシスタントと、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の寺嶋和夫教授(産総研 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ特定フェロー)らは、高分子への分散が困難であった繊維状カーボンを、水中プラズマ技術で表面改質して分散性を高め、高分子と複合化する過程で交流電界をかけてCNFを配列させ、CNFの配列方向で14W/mKという高い熱伝導性と、柔軟性を併せ持つゴム複合材料を実現した。

 開発されたゴム複合材料は、繊維状カーボンを50wt%加えても高い柔軟性を示しており、繰り返し変形しても脆化を起こしていないという。

 産総研では、今後CNFの配向条件や改質条件を最適化して熱伝導性と柔軟性の向上を図ると同時に、フィラーの3次元構造の観察や解析を通じて複合材料の構造と特性との数理的関係の解明を進めるほか、企業との共同研究で部材やデバイスへの展開、実用化を図り、フレキシブル電子デバイスの熱層間材や放熱シート、放熱板などへの応用が期待されるとしている。

 技術の詳細は14日に国際誌「Composites Science and Technology」に掲載されている。

ゴム複合材料のCNFとCNTの配列分散の様子(電子顕微鏡像)
ゴム複合材料の外観
さまざまな材料のヤング率と熱伝導率の関係