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TSMC、5nmプロセス「N5」を2020年上半期に立ち上げ
~6nmは予定通り年内量産開始の見込み
2020年1月23日 18:11
Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)は16日(台湾時間)、2019年第4四半期決算を報告した。
第4四半期の売上高は前年同期比9.5%増の3,172億3,700万台湾ドル(103億9,400万米ドル)、営業利益は同15.2%増の1,242億4,400万台湾ドル、純利益は同14.8%増の1,160億3,500万台湾ドル、希薄化後の1株あたりの利益は同14.8%増の4.47台湾ドルとなった。
通年では、売上高が前年比3.7%増の1兆699億8,500万台湾ドル(346億3,200万米ドル)、営業利益が同2.8%減の3,727億100万台湾ドル、純利益が同1.7%減の3,453億4,400万台湾ドル、希薄化後の1株あたりの利益は同1.7%減の13.32台湾ドルとなった。
収支報告において、TSMC CEO兼チェアマンのC.C. Wei氏は、同社の長期成長を牽引する市場として5GとHPCについて説明。
5Gネットワークの大幅な性能と帯域幅、遅延の改善により、AIアプリケーションが普及し、さまざまな種類のエンドデバイスでリアルタイムな応答や制御など新しい利用事例が生まれるとして、5Gではデジタルコンピューティングがますますユビキタスになり、今後数年で4つの成長プラットフォームすべてのコースを活性化する5年間に渡るメガトレンドであるとの考えを示し、2020年のスマートフォン市場全体に対する5Gスマートフォン普及率は10%半ばとなる見込みで、今後数年間で5Gスマートフォンの普及が加速するとの予測を語った。
また5Gでは生成されるビッグデータの量の指数関数的な成長が、アルゴリズムによる継続的な改善を促進し、よりスマートでインテリジェントな世界のために計算能力の大幅な増加が必要とされるため、HPCが分野が成長すると説明。CPUやネットワーク、AIアクセラレータがおもな成長分野となり、TSMCではファウンドリとして米ドルベースで5~10%の長期の成長を見込むとした。
さらにWei氏は、同社の7nmプロセス「N7」および「N7+」の立ち上げ、6nmプロセス「N6」の開発状況について説明。
N7はすでに立ち上げから3年目を迎え、モバイルとHPC、IoT、自動車アプリケーション向けの幅広い製品で非常に高い需要を得ているとし、2020年にはウェハ収益の30%以上を占めるとの見込み示し、2年目を迎えたN7+については極紫外線露光(EUVフォトリソグラフィ)技術を使用した業界初の量産プロセスであるとアピールした。
次世代プロセスとなるN6については、設計ルールがN7と完全な互換性を持ち、N7+よりもEUVを用いるレイヤーが1層増える見込みで、N7と比較して15~20%高密度化が可能であることから、N7製品の移行先として最適であると説明。N6は2020年第1四半期にリスク生産、年内に量産開始を予定しているとした。
なお現在、AMDのZen2アーキテクチャ採用CPU(Ryzen/Ryzen Threadripper 3000シリーズなど)や、スマートフォン向けSoC(Qualcomm Snapdragon 855/Apple A12/Huawei Kirin 990など)などがN7プロセスで生産されている。
次々世代の5nmプロセスである「N5」については、EUVを積極的に用いており、7nmと比較してロジック密度が80%、速度が20%向上していると述べ、2020年上半期の立ち上げに向けて、歩留まりも良好であると説明。2020年下半期には、モバイルとHPCの両方分野によって非常に高速かつスムーズに採用製品が増えることを期待しているとした。
具体的には、5nmは7nmの立ち上げ時と同様に2020年ウェハ収益の約10%を占めると予想しており、最高のPPAを備えたファウンドリ業界でもっとも先進的なソリューションになるとアピールし、継続的な機能強化を提供していくことで、TSMCにとって5nmは大規模で長期にわたり提供されるノードになるとしている。
さらにその次の世代である3nmの「N3」については、顧客と設計に関して協力しており、技術開発の進捗は順調であると報告している。N3はN5と比較して性能、消費電力、密度の点で完全なノードのスケーリングメリットを提供する見込みで、導入時点でPPAとトランジスタ技術の両方でもっとも先進的な技術になると説明した。
なおN3の詳細については4月29日開催の「TSMC NorthAmerica Technology Symposium」で発表される見込み。