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東北大ら、窒化ガリウム結晶内にある2.2億分の1個以下の炭素不純物を検出する手法

~高精度ながら非破壊かつ非接触

窒化ガリウムにおける炭素不純物とバンド端近傍の発光量子効率の関係

 東北大学 多元物質科学研究所および株式会社サイオクスによる研究グループは12月5日、窒化ガリウム結晶(GaN)に含まれる微量の炭素不純物を高精度で検出する手法を開発した。

 近年、半導体デバイスとして窒化ガリウムが注目を集めているが、窒化ガリウムを利用した高耐圧トランジスタや高出力LEDの性能を左右する大きな要因の1つとして、炭素不純物の存在が挙げられる。結晶内部の炭素不純物は、光デバイスにおける発光効率の低下や、トランジスタがオフのときに電流が流れてしまう「電流リーク」などの原因となる。そのうえ、低濃度でも性能に影響を及ぼすため、感度の高い検出手法が望まれてきた。

 窒化ガリウムは「直接遷移型半導体」と呼ばれるものの1つで、電気や光エネルギーを与えると特有の光を放つ。この光は結晶内部に炭素不純物が少ないほど強くなるため、窒化ガリウムが持つ発光量や効率を指標とした相対的な測定することで炭素不純物の検出が行なわれてきた。しかし、この手法は計測者の技量によって結果が揺らぎやすかった。

 研究グループでは、高精度な発光効率計測法「全方位フォトルミネセンス(ODPL)法」に着目。内壁が拡散反射率の極めて高い材料で覆われた「積分球」のなかで、結晶に光を当てたさいに放出される全方位の光を集めて、絶対的な測定を行なうもので、これを応用し、窒化ガリウム結晶内の炭素不純物を高い精度で検出する手法について研究を行なった。

 実験では、炭素濃度を意図的に変化させた窒化ガリウム結晶を複数用意。それぞれの発光量子効率をODPL法で計測した。その結果、炭素不純物の濃度と発光量子効率がほぼ線形に変化することを発見。加えて、炭素不純物の密度が4.0×10^14立方cmを下回るような低濃度であっても同様に線形性があることもわかった。

 窒化ガリウム結晶の場合、原子密度が約8.8×10^22立方cmであることから、およそ2.2億個に1個の割合で混じった炭素不純物も検出できる計算になる。従来の手法と比べ、非破壊かつ電極形成などの行程が不要なのに加え、光を当てるだけで炭素濃度が簡単に計測可能で、さらに測定時間も大きく短縮できるのが利点となる。

 今回新たに開発された手法は、有機材料だけでなく無機の直接遷移型半導体にもすぐに適用が可能で、研究グループでは、不純物のごとの特有な発色高光を利用し、炭素以外も含めた不純物の同定について研究を進めるとしている。