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セブン&アイ、たこ焼きとソフトクリームのロボットをフードコートで活用開始
2019年10月16日 12:22
株式会社セブン&アイ・フードシステムズが、おもにイトーヨーカドーのフードコートで出店しているファストフード店「ポッポ」に、ロボットベンチャーのコネクテッドロボティクス株式会社が開発しているたこ焼き調理ロボットとソフトクリームロボットを常設で展開する。
ロボットの導入によって商品品質の安定と食材ロスの削減、教育時間の短縮化など効率化を図り、熱い鉄板前での調理時間を削減して労働環境を削減する。同時に人とは異なるライブ感などエンターテイメント性を取り入れて、楽しさを演出する。導入第1号店は「イトーヨーカドー幕張店」フードコート。2019年10月17日9時にオープン予定だ。オープン前日の16日には、記者会見とロボットの実演、試食会が行なわれた。
たこ焼き調理ロボット「ハッピー」とソフトクリームロボット「ワンダー」
たこ焼き調理ロボットの愛称は「ハッピー」、ソフトクリームロボットの愛称は「ワンダー」。たこ焼きロボット本体は台湾テックマンロボット製「TMS-900」で、生地流し込みから焼き上げまでを自動で行なう。食材の仕込みとトッピングは人手。1回(約20分)あたりの生産量は96個(12人分)。画像認識で焼きムラがないかを確認し、タブレットを使って何個たこ焼きを焼くかを指定できる。盛り付けは人が行なう。
ソフトクリームロボット本体はDobotの「Dobot Magician」。店員がロボットにコーンを載せると、サーバーから出てくるソフトクリームの重さをセンサーで検知しながら巻くことができ、受注から商品提供までを約45秒でこなす。提供するソフトクリームはバニラ、ミックス、チョコレート。エンターテイメント性を持たせることで売り上げアップを目指す。
習熟に時間がかかるたこ焼きをロボットで
ファストフード事業ブランド「ポッポ」は、おもにイトーヨーカドー店内で営業しており、ラーメン、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、フライドポテト、ソフトクリームなど多くの品揃えを持つ。子供からシニアまで広い層から支持されているという。現在、55店舗を展開しており、うち、直営が51店舗、フランチャイズが4店。
株式会社セブン&アイ・フードシステムズ代表取締役社長の小松雅美氏は、「少子高齢化や人手不足など環境変化が起きている。業界の垣根を超えた戦いも加速している。今までのやり方に固執していては多様化する顧客ニーズに対応できない。一方、社会環境の変化はあるが食のレジャー化が加速するなどチャンスもある。大型商業施設がオープンすると飲食関連のお店が多くの顧客を集める。ここにファストフード事業として積極的に打って出たい」と述べた。
そのためには美味しい商品の提供が必要だが、たこ焼きやお好み焼きは熟練した技が必要で、習熟までにも時間がかかる。実際にたこ焼きをはじめて焼いて、ひととおりできるようになる、提供品質かどうかを見きわめられるようになるには20時間程度かかるという。個人のばらつきも少なくない。そのため、安定しておいしい商品をいかに提供できるかがこれまでにも大きな命題だったという。また味の追求と合わせて、より顧客が見て楽しい、驚きがある、なんらかのエンタメ性が必要だと考えており、それをいかに展開するかが「ポッポ」の命運を担っていると述べた。
そこで着目したのがロボットだという。たこ焼きを焼くのはつねに鉄板に付きっきりで、細かい作業を繰り返していく必要がある。焼き場の前にはつねに人を配置せざるを得ないので、利益面から見ても問題があった。そのような作業をロボットが担う。ロボット導入により、今回のケースで1日あたり7時間分の労働時間を削減でき、これは全体の労働量の約12%に相当するという。
今後は、第2ステップとして、たこ焼き以上に調理が難しく、個人ごとのばらつきが多い「黄金焼き(今川焼き)」のロボット化なども検討する。さらにそのほかの調理にも応用がきくと考えており、検証を重ねる。また、食器洗浄などのロボット化も並行して進めて、人件費改善を目指す。
サービスとしてのロボット提供で
コネクテッドロボティクスは2014年2月に設立されたスタートアップ。もともとは産業用ロボットアームの制御を手がけていた。創業者である沢登氏は飲食業の経験を持っており、その経験を踏まえて今は飲食業+ロボット事業を手がけている。同社が掲げるミッションは3つ。重労働からの解放、日本食を世界へ、作りたてのおいしさの提供だ。そのため飲食店の厨房での展開を進めている。
飲食業は人手不足で人件費は上昇している。いっぽう、産業用ロボットアームのコストはいま下落している。そこで飲食業に必要なスキルをソフトウェア化することで、調理現場の革新を目指している。たこ焼きやソフトクリームのほか、揚げ物を行なうロボットや、洗浄を助けるロボットなども開発している。
たこ焼きロボットオクトシェフは長崎ハウステンボスに2018年に導入されている。今回導入したモデルは、精度や安定性・信頼性が向上しており、システム全体としてパッケージすることで、より壊れにくく、設置もしやすく、メンテナンスしやすくなってるという。
同社ではロボットのハードウェア自体は作っておらず、制御ソフトウェアを開発して、インテグレーションして提供している。飲食業は個人のスキル差や環境・食材などの条件差が大きく、もともとバラつきが大きい。それらをロボットで認識・吸収して提供する。ロボットを動かす技術、調理スキルを提供するプラットフォーマーを目指している。ビジネスモデルはRaaS(Robotics as a Service)。売り切りではなく、月額費用をとり、サービスを提供する。販売目標は2021年までの2年間で100台、2024年末までには 1,000台。
沢登氏は無人レストランは目指していないという。食器洗浄などの非生産的な作業や、「ロジック」に関する部分はロボットが担うが、盛り付けや提供など「アート」に属する部分は人間が担わなければ、ぬくもりやくつろぎが失われる、そこは譲ってはいけない部分だと考えていると述べた。そして顧客と新たなオペレーションを考えていきたいと語った。